2011 Fiscal Year Research-status Report
視覚障害者の生活支援のためのアクセシブルデザイン技術
Project/Area Number |
23500894
|
Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
佐川 賢 日本女子大学, 家政学部, 教授 (00357112)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
芦澤 昌子 日本女子大学, 家政学部, 研究員 (40191853)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | アクセシブルデザイン / 全盲 / ロービジョン / 触覚 / ATM操作性 / タッチデイスプレイ / 文字サイズ / コントラスト |
Research Abstract |
本研究では、全盲やロービジョンなど視覚障害者が生活で必要とする触覚及び視覚情報の表現方法(アクセシブルデザイン)を検討する。そのため平成23年度は(1)人間の触覚情報の基本特性、及び(2)ロービジョン者のATMタッチディスプレイの操作性、の2つの実験的課題を検討した。 触覚に関しては、刺激の断面形状が矩形波とサイン波状に変化する2種類の凹凸縞刺激を、溝の幅(凹凸の溝の幅)及び高さを変えて作成し、その触覚的な縞の識別度を計測した。溝の幅は0.5~3.0mmの間で5段階、溝の高さは0.1~1.0mmの間の5段階の計25種類の縞模様について、全盲の被験者15名で検討した。その結果、視覚障害者では幅が2.0mm以上あれば0.1mmの僅かな高さでも縞が十分識別ができることがわかり、この傾向は同時に行った若年者でも同様であった。ただし、晴眼の高齢者では加齢効果により0.3mm以上の高さが必要であることがわかった。 一方、ロービジョン者のATMタッチディスプレイの操作性に関してはATMを模擬した実験装置を作成し、フォントサイズとコントラストを変え操作性と操作のしやすさ、の2点を実際のロービジョンの観測者12名について実験した。文字サイズは16から80ポイントの間の5段階、コントラストはネガ及びポジの極性について高、中、低の3段階で検討した。その結果ネガの高コントラストでは32~80ポイントの文字サイズであれば、12人中8名が一連の振り込み作業をほぼ3分以内で完了することができた。ただし、使いやすさの評価では文字サイズが大きければ大きいほど操作しやすいという結果も得られた。一般に指摘されているポジとネガの極性の差は顕著ではなかった。これらの結果を踏まえ、具体的な触覚刺激のデザインやATMの画面設計の具体化を次年度以降検討する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(理由)平成23年度に計画していた全盲及びロービジョンの視覚障害者による2つの心理実験は、実験材料の調達及び被験者実験を含め、ほぼ予定通り完了した。結果も概ね順当な結果が得られている。 全盲の触覚特性では、凹凸の溝刺激に対する指先の触覚特性を検討したが、アクティブタッチ(能動的に指を動かす方法)の場合は予想以上に触覚感度が良いことが分かった。このため、実験材料の凹凸の精度や測定範囲(凹凸刺激の間隔0.5~3mm及び高さの範囲0.1~1.0mm)が最適ではなかった。しかし測定範囲のずれは全体の傾向に大きな影響を及ぼすものではなく、触覚の基本的特性を把握することができた。 ロービジョンのATM操作性の実験に関しては、全体で12名の被験者(ロービジョン)のデータを収集することができたが、視覚障害の程度に個人差が多く、データにばらつきがみられた。理想的には今回の倍以上の被験者数が好ましいと思われたが、今回の12名でもATMの操作性のポイントとなる適切な文字サイズに関する指針は得ることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は全盲の視覚障害者に対しては、実際に日常生活で使用されている浮き上がり文字などのサンプルを集め、その可読性データを心理実験によって収集する。このデータをこれまで得られた基礎データと比較することにより適正な触覚刺激のデザインを具体的な形で検討する。 また、ロービジョンに対する視覚情報活用に関しては、これまで未検討であったATM操作性における色彩活用の効果、及び観察条件として最重要と見られる照度の影響を検討する。ATMタッチパネルにおける操作性実験を継続し、そこにおける文字判読やボタン操作に関して様々な色彩を付加させて、色彩活用の効果を検討する。さらに照明可変の佳境にて、種々の照明条件下で色分けされた薬のカプセルや地図などの可読性を検討し、色情報の有効性とデザイン法を考察する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度研究費(130万円)のうち、ロービジョンのATM操作性実験のため、タッチパネル用の色変換ソフト(40万円)を備品として購入する。また、全盲及ロービジョン者による被験者実験のための、被験者及び実験補助者の雇用費として人件費(70万円)を使用する。さらに、学会のための参加旅費(10万円)及び消耗品(10万円)を使用する。し、プログラムされた色変換でタッチパネルの色を変えながら実験を行う。 タッチパネルの色変換は実験に合わせたプログラムによる変化を実現するため特殊な色変換ソフトウエアを必要とする。 また、全盲の視覚障害者を用いた触覚実験に関しては、サンプルとしては包装容器等に用いられている点字や触覚記号を用いるため、特別な備品は発生しない。また、照度の影響に関しては既存の照明可変の実験室を用い、サンプルも薬のカプセルや地図などを用いるので、特別な費用は発生しない。
|
Research Products
(6 results)