2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23500928
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
五島 淑子 山口大学, 教育学部, 教授 (60144903)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 食文化 / 食生活 / GIS / 江戸時代 / 地誌 / 山口県 |
Research Abstract |
本研究は、今日多くの目的で利用されている地理情報システム(GIS)を食文化研究へ活用しようとするものである。資料として、天保期長州地方の地誌である「防長風土注進案」を使用してGISを作成する。それを活用し、江戸時代末から今日にいたる山口県の食生活の変遷とともに、日本における食生活の変遷を考察し、現在の食生活の課題と改善のための提言を行うことを目的としている。 本年度は、「防長風土注進案」GISを作成するための基礎的作業を行った。「防長風土注進案」(21巻別冊1冊)(昭和37年山口県文書館編集、山口県立山口図書館発行、昭和58年にマツノ書店覆刻)のうち、入力の対象とする項目を検討し、<物産之事><産業之事>とした。産物の名称、単位その他の不統一であるが、できるだけ原典に忠実に、エクセル形式で入力することにした。 GISのソフトは、ArcGIS(ESRI社)を使用することにした。「防長風土注進案」に記載された地域は、4支藩領を除く山口県全域の3分の2にあたる。村の記録は、合計すると326村程度である。地誌を利用したGISの前例がある総合地球環境学研究所の研究員らと入力方法等について研究打ち合わせを行った。村の位置データの入力は、以前ArcViewで作成したデータを活用しながら、作業を行っている。 データ入力作業の一方で、「防長風土注進案」に記載された食料、その食品の調理や伝統食について、山口県内外で、資料収集と情報収集を行った。また食文化・食生活に関する文献を収集、図書を購入した。「防長風土注進案」に記載された食料について、食品目録のようなものを作る必要性があることがわかってきたので、食品目録の作成を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度はGISを作成するための基礎的作業の期間とし「防長風土注進案」(全21巻)の中から、膨大な量の物産・産業データについて、エクセル形式で一通りの入力を終えた。また、地図データの入力もほぼ一通りのデータが入っている。資料の取り扱い、GIS化を行うにあたり技術的な問題点、今後の方向性などGIS化するための研究打ち合わせを行い、検討しながら入力を行っている。入力した物産・産業に関して、特に食文化関連について図書を購入するとともに、資料収集、情報収集を行い、食料や食生活に関する資料を収集している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、「注進案GIS」化に向けて、実質的な作業を行う。入力されたエクセル形式の膨大なデータについて、十分な検討が必要であるため、産物、物産の項目、単位等について、内容の検討や整理を行い、注進案GISの第1段階の完成をめざす。そのために「防長風土注進案」の原本にあたり、項目、単位等の検討を行い、利用価値の高い実用的なものをめざす。平成23年度の研究打ち合わせの中で、「防長風土注進案」に記載された食料について、食品目録を作成することが重要であると考えられた。「注進案食品目録」では、「注進案GIS」の食料(食品)、物産等について、その食料(食品)の生産量、生産分布、生産分布の特徴、その食品の利用、他の食品との比較などを行うことによって、その食料(食品)の特徴を明らかにする。「注進案食品目録」を作成するために、食品の調理や伝統食について、山口県内を中心に調査を行うとともに、伝統的な食品について日本国内において情報収集を行う。さらに食文化関連図書の購入、文献資料の収集を行い、文献的な調査を実施する。「防長風土注進案」の食料生産・産物について比較するため、先行研究で行われている明治初期飛騨地方の地誌である「斐太後風土記」で作成されたGISとの比較を行う。「斐太後風土記」と「防長風土注進案」を検討することで、日本における幕末から明治にかけてのいわゆる伝統的な食生活を、食料生産の面から明らかにする。「注進案GIS」を活用し、天保期長州地方の食料生産の地域性、明治初期飛騨地方との比較、山口県における食生活の変遷、日本の食生活の変遷を考察し、現在の食生活の問題点と改善のための提言を行うことをめざす。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額が生じたのは、物品の購入金額を低く抑えることができたこと、予定していた調査を次年度以降にしたためである。 平成24年度は、「注進案GIS」の第1段階の完成をめざすことを大きな目的としている。「防長風土注進案」は江戸時代天保期の記録であり、産物名、単位など記載は統一されていない。データが正しく入力されているか確認するだけでなく、「防長風土注進案」の原本について検討する作業を行う(謝金 研究補助)。「斐太後風土記」によるGIS化の実績のある総合地球環境学研究所の研究員等と、研究打ち合わせを行い、GIS化の方法の検討や、地誌を扱う上での問題の解決方法を検討し、「注進案GIS」の第1段階の完成をめざす(旅費:研究打ち合わせ)。地誌をGIS化することで、他分野との利用が可能になるために、GISの利用に関する情報収集を行う(旅費 情報収集)。平成23年度に検討した結果、「注進案GIS」を行うにあたって、「注進案食品目録」の作成が必要であることが分かった。「注進案食品目録」は、平成26年(または27年)をめざしているが、そのための作業を行う。品目数は、単純に入力したものだけでも膨大であり、そのすべてについて概説を書くかどうかを検討とともに、概説を書く項目について、食文化・食生活関連の情報収集、資料収集を行う。山口県内外において、食料生産、食品の食べ方、調理についてなど、調査を行う(旅費 資料収集、情報収集、研究打ち合わせ)。 食文化・GIS関連の図書を購入(食文化・GIS関連図書)する。消耗品として、事務用品、コンピュータ関連消耗品等を購入する(消耗品)。
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