2011 Fiscal Year Research-status Report
ハーブポリフェノールの酸化的変化‐酸化物の新機能と安全性の検証
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23500929
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
増田 俊哉 徳島大学, 大学院ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部, 教授 (10219339)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ポリフェノール / 酸化 / 機能 / ロスマリン酸 / レスベラトロール / セサモール |
Research Abstract |
まずハーブポリフェノールの酸化物調製を行った。食用ハーブに存在するポリフェノール30種類を入手し,その酸化を通常自然におこる酸化を想定して,鉄イオンを触媒とした空気酸化を行い,酸化の程度をHPLCによりモニターした。酸化反応後は,サンプルをイオン交換樹脂を用いて鉄イオンを除去し,濃縮ののち酸化物サンプルとした。なお,以降の研究には,酸化反応を行った20日以内で少なくとも20%以上酸化されたポリフェノール22種を選抜し使用した。続いて,その22種の酸化物(混合物)の機能と安全性を評価した。まず安全性は,正常細胞であるラット胸腺細胞を用い,その細胞致死活性をフローサイトメーターにより評価した。その結果,酸化前のポリフェノールに比べて,有意に細胞毒性が増強したものが,シナピン酸など8種類に見られた。一方,有用機能として,代表的酸化的劣化酵素であるチロシナーゼ,リポキシゲナーゼ,キサンチンオキシダーゼに対する阻害効果を測定し,阻害率の増強で評価した。なお,チロシナーゼ阻害は,Masudaらのマイクロプレート法,リポキシゲナーゼがFOX法,キサンチンオキシダーゼはHPLCによる尿酸検出法を用いた。その結果,チロシナーゼ阻害活性が酸化により増強あるいは保持されたものが,ロスマリン酸など2種類,リポキシゲナーゼ阻害活性が増強またはほぼ保持されたものが,レスベラトロールなど4種類,キサンチンオキシダーゼ阻害活性が増強またはほぼ保持されたものが,カフェ酸など5種類のポリフェノールに認められた。これらの選択されたポリフェノール酸化物のHPLC分析を行い,分析結果と活性について考察を加え,細胞毒性,酵素阻害活性を有するポリフェノール酸化物をそれぞれ1種類ずつ選抜した。次年度は,これらのポリフェノール酸化物を精製して行き,含まれる活性本体の特定を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究遂行に必要不可欠な食用植物由来のポリフェノールの入手は,30種を超えるものを集めることができ,目的を達成した。さらに,それらの酸化物の調製に当たっては,食品の通常の酸化的劣化条件にきわめて近い,鉄触媒下での酸素酸化反応を適応し,入手したポリフェノールを酸化したところ,2週間以内の酸化反応において22種類の酸化物の調製が可能であることがわかった。このようにして調製した酸化物の安全性の評価として正常細胞を用いた細胞毒性の測定を終了した。また,酸化物の新たな機能性として,食品の劣化防止に重要な酸化還元酵素の阻害活性をスクリーニングした。22年度は,酵素として,当初予定していたチロシナーゼとリポキシゲナーゼに加えて,キサンチンオキシダーゼの阻害活性スクリーニング実験を完了した。これらの機能を示している酸化物中の本体を現在追求中であるが,その一部については,すでに学会発表および学術誌への投稿を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
食材や食品由来のポリフェノールの酸化法の確立,および安全性と3種の酸化還元酵素における制御活性スクリーニングについては,ほぼ完了したので,次は,その活性を示す本体の特定が主たる研究目的となる。これについても,一部前倒して本年度に行ってきている。今後は,その特定研究をさらに詳細に進めることを行う。その結果,様々な化学構造を有する機能性ポリフェノール酸化物が特定されると予想され,その知見を深く考察し,それらがどのように生成し,食品の中に蓄積するかを解析していく。すなわち生成反応機構の解明にまで研究を進行させる予定である。特に,本年度新たに見出した,ポリフェノール酸化中における周りの食品成分との成分間反応とその生成物およびそれらの生成機構や,機能性の検証にまで研究を発展させる予定したいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は,新たな設備備品の設置は行わず,本年度に購入設置したHPLC検出器の維持管理を行いながら,必要な試薬,溶媒,実験器具を用いて研究を進行させる。特に,次年度は,HPLC関係のカラムの更新や機器の消耗部品などの購入が不可避と考えている。したがって,今年度の繰り越し分を機器の消耗部品購入に用い,年間を通して継続的な研究が可能にする予定でいる。さらに,本分野の研究の発展は目覚ましく,新たな情報収集のための旅費や1年間の成果を報告できる適切な学会への参加旅費も重要な経費となる。なお,次年度度の実験は,さらに広範にわたるため,その実験をサポートできる実験補助にも研究費を使用する予定でいる。
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