2011 Fiscal Year Research-status Report
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23500936
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Research Institution | Showa Women's University |
Principal Investigator |
高橋 真美 昭和女子大学, 生活科学部, 助教 (10245912)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 紅麹 / 物性 / 官能評価 / 機能性 / パン |
Research Abstract |
活性酸素種(Reactive Oxygen Species;ROS)は、細胞膜構成成分である脂質に連鎖的な脂質過酸化反応による酸化的傷害を生じ、各種疾患や病的な加齢に深く関与している。紅麹には、コレステロール生合成抑制作用を有するモナコリンK、血圧降下作用を有するγ‐アミノ酪酸が含まれていることが知られている。本年度は、とくに紅麹の抗酸化能に着目し、ROSの中でも反応性が高く検出が困難なヒドロキシルラジカル(HO・)消去能を検討した。さらに、食品への応用では紅麹をパンに添加し、生地物性への添加効果を検討することを研究対象とした。 紅麹の抗酸化作用の評価は、フリーラジカルを唯一直接的に検出可能な電子スピン共鳴(ESR)法を用いて、ROSの中でも反応性が高いことで知られるHO・に対する消去活性を ESR法を用いて、HO・産生系を示すCYPMPO-OHスピンアダクトの信号強度を利用して定量化を行い、信号強度の抑制効果を比較することで HO・に対する消去能を抗酸化能の評価とした。 本研究により、紅麹はHO・を濃度依存的に消去し、抗酸化作用を有することをESR法を用いて直接的に確認した。 また、紅麹をパンに添加した場合の力学特性については、ファリノグラフ試験およびエクソテンソグラフ試験を行い、検討した。その結果、ファリノグラフ試験では、紅麹の添加による生地形成時間への影響は認められなかった。エクステンソグラフ試験では、紅麹の添加により製パン工程において伸展性と抗張力のバランスの良い生地が得られることが判明した。これらの結果から、紅麹の食品への応用の有効性が示唆された。次年度は、生体内における紅麹の抗酸化能および生理機能について解析し、in vitroおよびin vivoの結果を基に紅麹の機能性食品素材としての有効性について総合的に究明する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで紅麹菌産生物の代謝産物の機能性には、コレステロール生合成抑制作用を有するモナコリンK、血圧降下作用を有するγ‐アミノ酪酸などが主要な機能性を有していた。本研究により新たに紅麹にヒドロキシルラジカル(HO・)消去能が確認されたことは有益な研究結果である。 電子スピン共鳴(electron spin resonance;ESR)による測定は、電子スピン(不対電子)を有する物質であるフリーラジカルを直接的かつ特異的に測定することが可能である。本研究では、生体内で生成されるROSを特異的に検出し、その種類の同定や定量が可能な唯一の方法であるESR法を駆使し、試験管内(in vitro)における直接的な抗酸化能測定・評価法を用いてROS検出技術の生物医学的応用について研究を行った。 また、紅麹を食品に応用した研究では、パンへの添加効果を検討し、ファリノグラフ試験およびエクソテンソ試験による生地物性への影響を検討した。紅麹の添加濃度を検討することで、製パン時には、加工硬化工程(丸めや成形)を経ると僅かに伸展性が優れ、抗張力とのバランスの良い生地が得られることを明らかにした。このことで紅麹のパンへの応用により食品的価値が高まることが判明した。
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Strategy for Future Research Activity |
紅麹の食品への応用の有効性では、蒸しパンへの添加による影響を検討する。とくに嗜好特性に関しては、紅麹の加熱温度、加熱時間による影響を測定し、適合する添加濃度、加熱条件を検討する。蒸しパンに紅麹を添加した場合の生地物性および嗜好特性を究明することで、紅麹の用途拡大、新たな食品加工の開発に継げたい。 また、紅麹の生理機能に関する研究では、高血圧自然発症ラット(spontaneously hyperten-sive rats: SHR)などを用いて、血圧降下作用、血清総コレステロール低下作用、血糖値を測定し、生体内における紅麹の生理機能について検討する。本研究課題では、紅麹の多目的食品素材としての有効性を明らかにするものである。 さらに、紅麹を含有した食品の抗酸化能および生理機能に関する実験では、これまで紅麹を含有した食品の抗酸化能評価に関する研究は国内外とも皆無であり、食品の形態において抗酸化能を明らかにできれば、科学的基盤に立った日常的に摂取可能な生活習慣病や各種疾患の予防食品の開発が期待できる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の研究実施計画であった、I.紅麹の抗酸化能に関する実験では、紅麹の抗酸化物質の検討、データ解析に相当の時間を要した。そこで、III.食品の抗酸化能評価紅麹に関する実験を次年度実施計画に移行した。さらに、II.紅麹を含有した食品の力学特性および嗜好特性に関する実験では、食品の力学特性の実験では、パンの生地物性のデータ解析が主たる実験項目となった。その結果、「食品の嗜好特性」の実験とのデータ解析が本年度では実施不可能となった。そこで、次年度に「食品の嗜好特性」の実験を移行した。従って、本年度の研究実施計画で実験が遂行できなかった上記の研究実施計画の研究費を次年度に移行し、次年度研究費として申請する。(1)紅麹を含有した食品の抗酸化能の測定は、ESR法で測定するための試薬として、スピントラップ剤で5-(2,2-dimethyl-1,3-propoxy cyclophosphoryl)-5-methyl-1-pyrroline N-oxide(CYPMPO)を用いて測定する。試薬、器具の購入に使用する。(2)紅麹をパンに応用した実験では、被験食を摂食する際の視覚、臭覚、口腔内感覚で評価する。パンの色、きめ、香り、味、食感、総合評価などの項目について、順位法による評価を行い、嗜好特性への影響について力学特性と総合的に解析をする。パン材料費、器具、紅麹の成分分析などに使用する。次年度実施計画である実験については、(3)紅麹の生理機能の実験では、モデル動物を用いた実験のため、モデル動物を購入する。また、長期飼育する施設設備が研究室内にないために、モデル動物の飼育は「その他」の項目の「業務委託費」として使用する。実験試料を冷凍・冷蔵保存するために必要な物品も購入する。
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Research Products
(2 results)