2011 Fiscal Year Research-status Report
「米」の高次機能利用をめざした新規米の作出と米粒および澱粉の物性発現機構の研究
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23500937
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
阿久澤 さゆり 東京農業大学, 応用生物科学部, 准教授 (60256641)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤田 直子 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (90315599)
早川 文代 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品機能研究領域食品物性ユニット, 主任研究員 (00282905)
松島 良 岡山大学, 資源植物科学研究所, 助教 (80403476)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 澱粉 / 変異体米 / 顕微鏡観察 / ペースト特性 / 動的粘弾性 |
Research Abstract |
野生種(日本晴)およびその変異体米(イネスターチシンターゼ(SSI、SSIIIa)、デブランチングエンザイム(PUL))の4種の米について、下記の実験を行った。 米粒の性状観察とデジタルマイクロスコープによる炊飯米の表面観察を行ったところ、日本晴は凹凸が観察され、SSIIIaは滑らかであり、米粒の表面性状に違いが認められた。また、胚乳の断面の観察から、澱粉合成酵素の欠損によりアミロプラストの形成にも影響が現れていることが観察され、変異体米の胚乳構造の違いが示唆された。胚乳中の澱粉粒は、アミロプラスト内に複粒として存在しており、充分な密度がある胚乳が形成されていた。分離澱粉の膨潤力・溶解度測定の結果、日本晴に比べてSSIIIaは、膨潤度はきわめて低いが、溶解度が高い結果であった。これはペースト特性(RVA)で得られた日本晴に比べてPULは最終粘度が高く、SSIIIaは著しく低い粘度特性を反映しており、SSIIIaの低粘度性は澱粉粒の膨潤と分散によるものではないかと考えられた。また、糊液のレオロジー特性である動的粘弾性を測定した結果、SSIIIaは貯蔵弾性率が低く、ネットワークを形成しにくい分散状態を示した。また、糊液を水可溶性区分(低分子画分)および不溶性区分(高分子画分)における分子量分布を測定した結果、糊液の貯蔵弾性率(G’)が高値であった糊液は不溶性画分(高分子画分)が多い傾向が示された。 一方、人の感覚により物質の特性を評価する官能評価に用いる用語を収集し整頓を開始し、用語間の関連性を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の研究計画では、イネの作出(収穫)と過去に収穫された変異体米の組織観察、胚乳の観察、米粒の性状比較、米粒の炊飯特性、胚乳から澱粉粒の分離精製、分離澱粉粒の電子顕微鏡観察、澱粉の構造解析などを実施目標として掲げた。本年度の成果として、すでに複数年度の試料米を作出し収穫しており、今後の研究試料としては確実な量が得られたことが重要である。また、作出された試料米の形態組織観察も鮮明な画像が得られ、観察方法および得られた画像も成果として用いられる精度の画像であった。さらに、胚乳からの澱粉粒の分離が精力的に行われ、すべての試料における精製が終了した。澱粉の糊化特性であるペースト特性、糊液の動的粘弾性など、レオロジー特性の測定結果も蓄積されており、すでに、その結果を学会で口頭発表(日本農芸化学会2011)し、情報の公開を行った。各研究分担者ともに、精力的に研究を遂行し成果発表も行っており、初年度として順調に進捗していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、現在蓄積したデータの再現性および精度を確認し、データを確実なものとするため、分離澱粉粒の構造解析およびレオロジー特性の測定に焦点を合わせて、引き続き研究計画に沿って遂行し、平成25年度の最終年度にむけて研究実績を蓄積する予定である。さらに、研究分担者にはデータの確認と解析の継続および研究者間のディスカッションによるデータの整合性の検討を依頼し、新たな実験の実施が必要になった場合は、逐次実行方法を検討する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
申請した研究計画に従って、平成23年度の研究成果を発表と平成24年度実施の研究打ち合わせのための旅費を計上し、研究成果の確認を行いながら進展させる予定である。また、成果を論文にまとめ公開するために論文投稿料を計上した。平成24年度の消耗品費として、引き続き澱粉の構造解析(光散乱による分子量測定、パルスNMRによる水の挙動、示差走査熱量計(DSC)による澱粉の老化特性)を行うため測定容器および関連試薬を計上し、さらに必要に応じて官能評価のプレテストを行うため、トレーなどの消耗品を計上した。
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Research Products
(9 results)