2012 Fiscal Year Research-status Report
「米」の高次機能利用をめざした新規米の作出と米粒および澱粉の物性発現機構の研究
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23500937
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
阿久澤 さゆり 東京農業大学, 応用生物科学部, 准教授 (60256641)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤田 直子 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (90315599)
早川 文代 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品機能研究領域食品物性ユニット, 主任研究員 (00282905)
松島 良 岡山大学, 資源植物科学研究所, 助教 (80403476)
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Keywords | 澱粉 / 変異体米 / アミロペクチン / 鎖長 / 分子量 / アミロプラスト / 官能評価用語 |
Research Abstract |
平成24年度の研究目的および計画に従って、野生種(日本晴)およびその変異体米(イネスターチシンターゼ(SSI、SSIIIa)、デブランチングエンザイム(PUL))の4種の米澱粉の特性を明らかにするために、変異体米のアミロペクチン構造の詳細な分析と分子量の測定、糊液のレオロジー測定および、官能評価のための用語の収集と解析を行った。 その結果、澱粉合成酵素の欠損によりアミロプラストの形成に影響を及ぼしていることが確認され、澱粉合成酵素の制御により多様な胚乳を作出できる可能性が示された。その澱粉のアミロペクチンの鎖長は、SSIIIa変異体では超長鎖が増加し、PUL変異体では短鎖が増加していた。また、分子量ではSSIIIa変異体は減少していた。PUL変異体米は、詳細なデータを得るために実験を継続している。糊液のレオロジー特性では、SSIIIaは顕著に粘弾性が減少し、PULは粘弾性が増加しており、この物性変化はアミロペクチンの構造変化が糊液の粘弾性に現れたものと考えられた。一方、官能評価の用語の収集と分類・解析を行い用語間の関連性をまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究計画では、イネの作出(収穫)と複数年度にわたって収穫された変異体の組織観察、胚乳の観察、胚乳から澱粉粒を分離精製し、その分離澱粉粒の電子顕微鏡観察、澱粉の構造解析などにより、変異体イネの登熟過程において、再現性の有る胚乳および胚乳澱粉が合成されているかを確認し、その特性を検討することを実施目標として掲げた。 本年度の成果として、昨年度からの継続実験を行うとともに、すでに複数年度の試料米を作出し収穫しており、研究を確実に実行できる充分な量の研究試料が入手できていることが重要である。また、研究試料の変異体米は、収穫年度にかかわらず特性に再現性があり、多収穫をめざした実用性に耐えられる素材であることが示唆された。胚乳からの澱粉粒の分離精製は継続して行われており、さらに、消化性など栄養効率を検討する実験結果も蓄積され、すでにこれらの成果をシンポジウム(第6回多糖の未来フォーラム2012、第39回食品の物性に関するシンポジウム2012)学会で口頭発表(日本食品科学工学会2012)を行うことにより、研究の独創性の発信と情報の公開を行った。このように各研究分担者は、精力的に研究を遂行し成果発表も行っており、2年目として順調に進捗していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、本研究課題の最終年度である。現在蓄積したデータの確認および相互関係を検討し、データを確実なものとするため、各研究者ともにディスカッションによる実験結果の整合性と、今後の新しいテーマへの展望をふくめて、本研究課題をまとめて意義ある成果として情報公開をする予定である。 したがって、研究分担者にはデータの確認と解析の継続および研究者間の密な連絡による成果の開示を依頼する予定である。主に解析に必要な試薬・器具類が研究費の使用用途として予定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
申請した研究計画に従って、平成24年度の研究成果を学会および論文の成果として発表を主な目的とする。また、その経過において必要に応じ、継続育種している変異体米の収穫と関連実験によって研究成果の確認を行う。さらに、研究課題をまとめるのみではなく、本研究課題を進展させる予定である。 成果を論文にまとめ公開するためには論文投稿料が必要であるが、この支出は各研究分担者がそれぞれで行い、申請研究費は、データの解析・確認に必要な経費を計上することとした。 平成25年度の消耗品費として、引き続き澱粉の構造解析(光散乱による分子量測定、DSCによる澱粉の老化特性)を行い、必要に応じて官能評価の解析用ソフトやトレーなどの消耗品を予定した。
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Research Products
(16 results)