2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23500984
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
坂井 信之 東北大学, 文学研究科, 准教授 (90369728)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 真 宇都宮大学, 国際学部, 教授 (50231478)
飯塚 由美 島根県立大学短期大学部, 短期大学部保育学科, 准教授 (50222823)
長谷川 智子 大正大学, 人間学部, 教授 (40277786)
山中 祥子 池坊短期大学, 文化芸術学科, 講師 (30580021)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 共食 / おいしさ / coaction effect / 発達 |
Research Abstract |
今年度は本研究の目的のうち、「1.食育基本法で指摘されている現代の食生活の問題点の一つである「孤食」について、行動科学的なエビデンスを蓄積する。」および「2.共食することの利点、共食することによる社会性の発達等について、実験および質問紙調査により明らかにする。」についての予備的な研究を中心におこなった。 このうち、1のエビデンス面については、研究分担者の飯塚を中心に、1930年代以降の社会心理学の文献のうち、「共同で何かをする」こと(coaction effect)に関する文献を多く集めそれらを展望した。また、研究分担者の長谷川は、食事場面の発達という観点から、共食と子どもの発達に関する文献を展望した。これらの知見は、2012年3月に実施した研究打ち合わせ会議において、共同研究者全員で共有した。 また、2の実験/調査研究については、研究代表者である坂井と研究分担者である中村が中心となり、共食に関わる実験を実施した。坂井は、同じお菓子を食べていても、独りで食べるときと知らない人と一緒に食べるとき、親しい友人と一緒に食べるときの、おいしさなどを比較する実験をおこなった。結果からは、「親しい友人と一緒に食べるとおいしい」という仮説は支持されなかったが、親しい友人と一緒に食べたときには、食事中の咀嚼回数が多くなり、且つ二人の間で同期するという傾向がみられた。これは先に述べたcoaction effectの現れであると考えられる。また、中村は「他者が笑顔で食べているものを食べると、真顔で食べていたものを食べるときよりも、よりおいしいと感じる」という仮説を立て、予め笑顔か真顔のどちらかで、お菓子を食べている様子をビデオに録画したものをみせながら、同じものを食べさせるという実験をおこなった。結果としては、やはり仮説は支持されなかったが、今後の研究の展開に役立つ知見がえられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで共食について、実験的にアプローチした先行研究がなかったため、実験についてはすべて手探りで始めるという状況であった。そのため、実験研究はすべて仮説に対してネガティブな結果であったが、次年度以降の実験の遂行に参考となる知見および実験手続き手法については、かなりの収穫があった。一つは、実験の設定についての問題である。今年度は実験室内で、ビデオ撮影を受けながら、知らない人と一緒に食べるという設定で実験をおこなった。このことが、実験参加者には非常に負担となったようである。「便所飯」という言葉が一時期流行したように、食べられる姿を他人にみられるのは恥ずかしいという感情が、特に若い女性に多くみられるため、次年度以降の実験としては、設定を改良しなければならないだろう。幸いにも、今年度最後の研究打合会において、実験社会心理学に詳しい研究分担者の山中から、実験の手続きに関する意見がでたので、次年度以降の具体的な改良点がみつかった。 社会調査に関しては、今年度は文献調査に留まってしまった。しかしながら、共食に関する社会調査についても、先行研究は体系的なものはほとんどなく、また用いられる用語も統一されていなかった。そのため、本年度におこなったような関連する研究の展望は、次年度以降に用いる調査票の作成に必要不可欠である。この意味で、今年度先行する研究の展望をおこない、知識を共有できたことは大きな前進であったといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
1.今年度に明らかとなった実験遂行上の諸問題を統制した実験をおこない、共食のどのような要因が評価の上昇に関与しているかということを検証する。予定としては、まず実験対象者の募集の際に、「共感性」に関する質問紙調査(スクリーニング)をおこない、共感性の高い人と低い人を選抜して、実験に参加していただく。さらに、親しい友達と一緒に参加する条件と、独りで実験に参加する条件を設定し、それらの間での差を観察する。現時点では、食べる人の共感性がより高いほど、食べる相手との関係がより親密なほど、おいしさの評定が高くなると考えている。2.共食しているときの相手のどのような振る舞い(行動、表情、視線、発言など)がおいしさに影響を与えるかということを実験室内やフィールド(学生食堂や自宅等)で共食させることにより調べる。この実験では、実験室内で実験参加者と共食者の2名に同じ食物を摂取させ、摂取しているときの表情をビデオ撮影し、同時にその食物に対する評定を記録する。共食する相手は実験者が設定した条件で、それぞれの食物に対して決められた反応を示すようにトレーニングしておく。実験の条件としては、快表情反応(甘味を摂取したときにみられるような微笑みに近い表情)のときと不快表情反応(苦味や酸味を摂取したときにみられるような嫌悪的な表情)のとき、コントロール条件(特に顕著な反応をせずに黙々と食べる)を設定する。3.共食に関する質問票の作成と調査の実施をおこなう。加えて、過去の食事の記憶に関するディープインタビュー調査をおこなう。この過去の食事の思い出し調査においては、食卓を囲む場面(=共食)と孤食の場面の思い出し内容の深さ、感情価などを比較する。加えて、実験参加者に何種類かの食事の写真を提示し、それらの食事から連想する出来事や感情価などを自由に回答してもらい、その回答の内容をI解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
設備・備品:次年度は設備・備品の購入はない。消耗品費:本研究では実験室にて様々な条件で、また様々なデータを得るために、多くの食品を用いた実験を設定している。そのため、実験用食品の購入は必須である。また、調査や実験の遂行のために、文具およびパソコンソフトの購入も必要となる。旅費:東京、宇都宮ならびに神戸、島根などで実施する研究の進行に関する打ち合わせをおこなうための旅費を予算化した。次年度は関東で1回、関西で1回集まり、密な連絡を取り合う予定である。また、本研究成果を発表するにあたって、日本心理学会、日本味と匂学会など国内の学会参加に係る費用を計上している。謝金:主に、実験や調査を遂行するにあたり、必要な学生アルバイト(調査結果の入力、実験実施時の補助など)および実験/調査協力者(1実験あたり50人程度、1調査あたり100人程度)への謝金/謝礼を計上した。
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