2011 Fiscal Year Research-status Report
心血管イベント抑制のための栄養学的戦略ー若年成人からの動脈硬化予防ー
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23500990
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Research Institution | Seinan Jo Gakuin University |
Principal Investigator |
田川 辰也 西南女学院大学, 保健福祉学部, 教授 (50347142)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 血管内皮機能 / 動脈硬化 / 酸化ストレス |
Research Abstract |
現在、日本人の死因の2位は心臓病、3位は脳血管疾患であり、その合計は約30%で、日本人の30%は血管病で亡くなっている。したがって、心血管病や動脈硬化症の予防は日本社会の急務といえる。最近では肥満やメタボリックシンドロームの動脈硬化が話題となっており、さらに若年や子どものメタボリックシンドロームが問題になっている。動脈硬化は、その前段階として血管内皮機能障害を認める。したがって、血管内皮機能障害の段階で何らかの介入を行えば、血管内皮機能が改善し動脈硬化の進行を抑えられ、将来発症すると考えられる心筋梗塞、脳卒中の発症抑制につながると考えられる。 現代の食生活は欧米化し、魚の摂取量が少なくなる一方で、脂肪の摂取量が多くなっている。4割以上の人で、脂肪エネルギー比率が25%を超え、30%を超えている人が2割以上もいる。この食生活状況が続けば、若年成人ですでに血管内皮機能障害が生じ、将来の心筋梗塞や脳卒中などの動脈硬化性疾患の発症は増加すると考えられる。 本研究では、1.若年成人の血管内皮機能と脈波伝播速度(baPWV)及び酸化ストレスを測定し、血管内皮機能障害の程度や血管弾性を調べ、食生活との関連を明らかにすること、2.動脈硬化を予防することが期待されている抗酸化食品(茶カテキン等)やエイコサペンタエン酸の血管内皮機能や血管弾性及び酸化ストレスに対する効果を調べること、3.食事習慣の改善とくに脂肪の摂取量の抑制による動脈硬化抑制効果を検討すること、4.運動習慣の改善による動脈硬化抑制効果を検討することを研究目的とする。 今年度は上記1について検討し、若年女性成人の血管内皮機能とbaPWV及び酸化ストレスを測定し、血管内皮機能障害の程度や血管弾性を調べた。研究結果では、若年女性成人の血管内皮機能とbaPWV及び酸化ストレスは正常であり、血管内皮機能障害は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度、本研究では、若年成人(メタボリックシンドローム症例を含む)の血管内皮機能、血管弾性、酸化ストレス度を測定した。健康成人と比べ、メタボリックシンドロームの症例は血管内皮機能が低下していることは、すでに我々は報告している(山川ら 国際高血圧学会 2006 福岡)。しかし、現代社会では、食事の欧米化、運動不足などから、健康と思われている若年成人においても、すでに血管内皮機能障害が生じている可能性がある。本研究では、若年成人との血管内皮機能を調べることにより、若年成人の血管内皮機能がすでに低下しているのか、また低下しているとすれば、どのような食生活をしている症例が血管内皮機能障害を生じているのかを検討した。 対象は平均年齢22歳の若年健康女性成人20名、血管内皮機能と脈波伝播速度(PWV)及び酸化ストレスを測定し、血管内皮機能障害の程度や血管弾性を調べた。(1)プレチスモグラフによる安静時および反応性充血時の前腕血流量測定により血管内皮機能を検討した。(2)form PWV/ABI(オムロンコーリン(株))により脈波伝播速度(baPWV)を測定し血管弾性を調べた。(3)活性酸素・フリーラジカル自動分析装置FRAS4(ウィスマー研究所)により、d-ROMs testを行い、酸化ストレス度を測定した。 結果、対象者の安静時および反応性充血時の前腕血流量、baPWV、d-ROMs testによる酸化ストレス度は正常であった。現代の若年成人女性において、血管内皮機能、血管弾性は正常に保たれていると考えられた。また、酸化ストレスも正常の範囲内であると考えられた。 本年度の研究において、現代の若年成人女性の動脈硬化は進行していないことが解明され、おおむね目標が達成された。次年度以降は、抗酸化食品や運動の血管内皮機能改善に体する効果の研究を進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後(1)~(5)の方策にて、研究を実施していく方針である。(1)茶カテキンによる血管内皮機能と血管弾性の改善効果に関する研究:茶カテキンの投与前後で、安静時および反応性充血時の前腕血流量、PWV、FRAS4による酸化ストレス度の測定し、茶カテキンによる血管内皮機能(血管拡張機能)の改善効果について検討する。(2)エイコサペンタエン酸(EPA)による若年性人の血管拡張機能と血中脂質に対する効果に関する研究:EPAの投与前後で、安静時および反応性充血時の前腕血流量、PWV、FRAS4による酸化ストレス度の測定し、EPA投与が血管拡張機能と血中脂質に及ぼす影響を検討する。(3)食事の脂肪エネルギー比率の違いが血管内皮機能に及ぼす効果に関する研究:脂肪摂取エネルギー比率が20%、30%の群において、安静時および反応性充血時の前腕血流量、PWV、FRAS4による酸化ストレス度の測定し、脂肪摂取エネルギー比率の違いにより、血管内皮機能に差が生じるかどうか検討する。(4)運動の強度の違いによる血管内皮機能に対する効果の違いに関する研究:10Wで30分の運動、もしくは、30Wで10分の運動を実施する前後で、安静時および反応性充血時の前腕血流量、PWV、FRAS4による酸化ストレス度の測定し、運動強度の違いによる運動の血管内皮機能に対する効果について検討する。(5)食事時間および食後の運動と血管内皮機能、血管弾性の関連に関する研究:クッキーテスト用のクッキー(糖質 75g、脂質 28.5g)を10分もしくは30分で食する前後で、安静時および反応性充血時の前腕血流量、PWV、FRAS4による酸化ストレス度の測定し、食事時間の違いによる、食後の血管内皮機能、血管弾性、酸化ストレス度の変化を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、設備備品として、血圧脈波検査装置form PWV/ABI(BP-203RPEIII;オムロンコーリン(株))を購入する。使用していた血圧脈波検査装置form PWV/ABIが、故障で廃棄となるため、新しく血圧脈波検査装置form PWV/ABIを購入するのである。この予算として1,000,000円使用する。消耗品として、マーキュリーストレンゲージ、FRAS用dROMs testキット、採血管、注射針・シリンジ、アルコール綿、サージカルテープ、検査用の食品(アイソカルアルジネード、ヘルシア緑茶等)、文房具などを購入するために510,000円使用する。 また、日本循環器学会、日本高血圧学会への参加、成果発表のための国内旅費として、80,000円使用する。 さらに、印刷費として、10,000円使用する。
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