2011 Fiscal Year Research-status Report
出前授業方式による学生の環境教育実践力育成-「多国間環境問題解決型授業」を事例に
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23501060
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
宮薗 衛 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (00209909)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 国際情報交流 韓国 / 多国間環境問題解決型授業開発 / 海洋環境 / 海洋資源 / 漂着ゴミ問題 / 二百海里経済専管水域 / 境界 / 出前授業 |
Research Abstract |
今年度は、多国間環境問題解決型授業開発事例として「海洋(水)環境)」をテーマとする2年間の研究計画の第1年次である。陸地とは異なる海洋環境の特性に着目し、持続可能な海洋環境の保全という観点から、海洋ゴミ汚染問題、海洋の漁業資源・地下資源問題に焦点化し、その解決の為に東アジアの国々を中心に、どのような国際的な連携協力が必要かを考える国家間問題解決型授業の開発と学生による出前授業実践に取り組み始めた。 第2次世界大戦以降、世界的には二百海里経済専管水域設定に見られるように、国家による海洋の分割と管理を推し進めてきた。しかし、海洋の特性―海流・野生生物としての魚類の生態等―や「大気・海洋・海洋生態系という地球環境システムの変動」に関する研究を踏まえると、「海洋」問題解決の為には人為的な「境界」設定の目的と課題を踏まえた、境界を越えた国際的共同体制や連携が必要となる。今年度は境界を越える海洋ゴミ漂着問題と二百海里経済専管水域を越えて回遊する漁業資源管理をテーマに、大学院生及び学部生が教材研究と授業開発に取り組む活動を組織した。又「水環境」の維持・改善の在り方を巡る授業開発に取り組んだ。 授業開発と出前授業の実践に関しては、今年度は学部3年生8名が「水環境」の維持・改善に関する4時間の単元を開発し、2012年3月に附属小学校4年生のクラスで授業実践に取り組み、その成果と課題の分析に取り組み始め、その研究成果を24年度に纏める予定である。 又、今年度は特に日本と韓国との「海洋」問題に関する授業研究交流のために、韓国ソウル教育大学校等の社会科教育研究者と授業開発事例を巡る検討・交流を行い、韓国との研究交流を促進する方向で調整した。 以上のように、4年次研究の1年次として「海洋」をテーマとする国家間問題解決型授業開発と出前授業実践に取り組み、また韓国の研究者との研究交流を推進してきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
23年度は、以下の到達目標を設定して研究に取り組んだ。1)海洋環境に焦点化して、学部生・大学院生が多国間環境問題解決型授業を開発することに取り組む。2)授業開発を基に学生による出前授業実践を行い、その成果を検証する。3)海洋環境に関する授業開発研究について、韓国の研究者との研究交流を実施して、本研究の内容を高める。4)実践研究の成果を学会等で発表する。 これらの具体的な到達目標のうち、1)から3)まではほぼ計画通りに達成できた。2)の出前授業については、漂着ゴミ問題・海洋資源問題の実践まで実行できなかったが、学生の出前授業実践に取り組むという目標は達成できた。 4)については、韓国の研究者との交流や出前授業の実施時期が予定より遅れたため、23年度は実施できなかったので、24年度の研究の中で実施する。 以上のように、当初の計画より、若干の進度の遅れが見られるが、それは24年度研究活動の中で、十分に修正・回復することができるものである。
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Strategy for Future Research Activity |
4年計画の1年次計画は、韓国の研究者との研究交流の実施時期、また、出前授業の実践時期が計画より若干遅れたため、授業実践記録の纏めとその研究成果の学会等での発表ができず、学生の授業分析のための資料収集・作成等の謝金・研究成果発表のための旅費の執行が一部できなかった。これらの若干の遅れがあるものの、24年度にそれらを実施することで、23年度研究の若干の遅れは十分に修正・回復でき、また予算の適切な執行が可能である。 24年度は、概ね当初設定した研究計画に即して「海洋環境」をテーマに、漂着ゴミ問題、海洋資源問題に関する多国間環境問題解決型授業内容の見直し・修正と授業開発、それに基づく出前授業の実践に取り組む予定である。 但し、若干の修正がある。一つは、当初計画では、2年目は中国の研究者・実践者との研究交流による授業開発を予定していたが、海洋環境を考えるには「台湾」の研究者・実践者との交流による授業開発も必要であると考える。また、韓国の研究者との研究交流も継続して、韓国・中国・台湾と日本の東アジア諸国家・地域の中での海洋環境問題をテーマとする授業開発研究に発展させる予定である。 もう一つは、授業開発事例を小中学校の現職教員研修で検討・分析する機会を設け、「海洋環境」の開発事例の妥当性を検証し、内容の修正を図っていくことにする。そのことにより、本研究事例の実践可能性を一層高めることができると考える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度は、「海洋環境」をテーマとする多国間環境問題解決型授業開発と出前授業実践による2年次研究である。このために、以下の研究活動に取り組み、適切に研究費を執行する予定である。 1)23年度の出前授業実践の成果を纏める。2)学部生・大学院生による「海洋環境」に関わる多国間環境問題解決型授業開発事例の修正・発展を図る。3)それらの開発事例について、現職教員研修において検討・分析する機会を設け、事例の実践可能性・妥当性を検証し、授業開発事例の質的向上をはかる。4)学生による開発事例の出前授業を実施し、実践の成果を検証する。5)中国・台湾・韓国の研究者との交流による研究内容の検討・調査活動と研究内容についての学会発表等により成果を社会に発信・還元する。 以上の目標・内容において、資料分析等の謝金、研究交流・調査活動・研究発表旅費、教材等の消耗品費等として適切に予算を執行する予定である。
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