2011 Fiscal Year Research-status Report
児童・生徒一人一人が安全かつ主体的に日食を観測するための教材の開発とその評価
Project/Area Number |
23501085
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Research Institution | Nagano National College of Technology |
Principal Investigator |
大西 浩次 長野工業高等専門学校, 一般科, 教授 (20290744)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 科学教育 / 金環日食 / 日食網膜症 / 大規模観察 / 天文学 / 限界線 / 太陽直径 / 天文教育 |
Research Abstract |
2012年5月21日早朝に大阪・名古屋・東京など、全国の主要都市を横断する金環日食が起きる。この日食では、金環日食帯に約8300万人、すなわち、日本のおよそ3分の2の人々が居ながらにして観察する事が出来る。本研究では、この金環日食を題材とし、児童や生徒たちが知的好奇心や探究心をもって、自然現象を安全に観察し、宇宙の中での地球や月の動きを理解・実感するための教材や観測組織の編成と共に、特に、日食の前年度として、安全な観察への方法の研究に重点を置いて活動を行った。これらの活動を支える組織として、日本天文協議会(会長:海部宣男放送大学教授、次期国際天文学連合会長)のワーキング・グループ、2012年金環日食日本委員会(委員長:海部宣男、副委員長:大西浩次)を4月に立ち上げた。これは、天文学の研究・教育・普及・アマチュアが協力して、日食観測の正確な情報の公開と安全な観測法の普及を図る組織である。 この活動の中で、日食観測に於ける目の障害の最新の研究から、2012年の金環日食では児童・生徒を含め、1万人に1名程度の目の網膜の障害(日食網膜症)が起きる恐れが判明した。そこで、2度のシンポジウムを通じて、観察に於ける目の障害の危険性を訴えるとともに、日本眼科学会・日本眼科医会と協力し、学校向け資料「2012年5月21日(月)日食を安全に観察するために」を制作し、文部科学省より、全国の小学校・中学校・高等学校に日食の安全な観察法を通知した。 また、金環日食の限界線を観測するための全国的な組織を編成し、多くの児童・生徒、市民を取り込んだ大規模な観測隊を作った。これらの成果は、日本天文学会2012年春季年会にて5件発表し、「金環日食を迎え撃つ-日本史上最大人数が観察できる金環日食を安全に-」として記者会見にも採択され、テレビ・新聞を始め多くのマスコミに取り上げられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、2012年金環日食を題材とし、児童や生徒たちが知的好奇心や探究心をもって、自然現象を安全に観察してもらうための教材開発や観察会の編成を行う事を目標にしている。このため、児童や生徒、学校関係者や市民への日食の広報と安全な観察法の普及のための活動組織として、日本天文協議会(会長:海部宣男)のワーキング・グループ、2012年金環日食日本委員会(委員長:海部宣男、副委員長:大西浩次)を立ち上げ、研究者・教員・科学館職員等のメンバー約10名で、日食観測の正確な情報の公開と安全な観測法を行った。 特に、日食観測に於ける目の障害の研究から、多数の日食網膜症が起きる恐れを指摘し、2度のシンポジウムを通じて、観察に於ける目の障害の危険性を訴えた。これらより、日本眼科学会と日本眼科医会との協力が成立した。3団体が協力し、学校向け資料「2012年5月21日(月)日食を安全に観察するために」を制作し、文部科学省より、日食の安全な観察法を通知できた。これより、全国の小中学校に安全な観察法を普及するという重要な役割が達せられたと考える。 2回目のシンポジウムで、全国規模の観測会の結成を呼びかけ、限界線観測研究会を始め全国各地に観測を行うための教職員や科学館職員を中心にしたグループができた。児童・生徒や市民を巻き込んだ観測隊の結成という大きな成果を生んだと考える。また、今回は、教職員ではなく、観測した児童・生徒に解析をしてもらうことで、児童・生徒や市民を巻き込む新しいサイエンスの手法の種をまくことが出来たと考える。一方、実際の教材開発に付いては、「日食学習連絡会」を協力する形で、児童生徒向けの教材をグループで作成した。なた、安全な日食観察のDVD(国立天文台制作)の監修を行い、JSTのサイエンス・ウインド誌を通じて、全国約4万校の学校に教材や資料を配布出来た。このように、ほぼ目標を達した。
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Strategy for Future Research Activity |
2012年5月21日の日食まで、講習会やシンポジウム、Webを使った教材や指導案の配布を行うなどの普及活動に努める。なお、教材、および、監修したDVD(国立天文台制作)の教育機関への配布に当たり、当初計画より、配布先を増やしたため、制作印刷費が、H23年度残金をオーバーしたため、H24年度予算と合算して執行することにした。このため、H23年度に残金があるが、教材の印刷代として支払われる予定である。 なお、金環日食の広報普及活動と同時に、2012年6月6日の金星の太陽面通過の観察法も広報する予定である。また、日食直前まで、全国での観測会の開催の支援を行うと共に、金環日食の北限界線を通る主要な都市(例えば、明石市、神戸市、京都市、彦根市、塩尻市、上田市、郡山市)に、限界線がどこになるかの観測隊を数万人規模で組織し、児童・生徒、市民によるサイエンスを実施する計画を推進する。 日食の事後には、教材や指導法のアンケート調査などによって、日食観察の実態や日食教材と指導法の使い安さ・問題点などを調査・分析する。また、児童・生徒たちの大量の観察データを使った教育支援とそのデータを使ったサイエンスについて検討する。特に、児童・生徒達の発表の場と交流の場を設けて、日食現象をもとに人的繋がりも構築し、共同でのデータ解析を目指す。これら児童・生徒が観測した多地点からののデータを見ることによって、小学生でも月の影が地上の上を移動してゆく様子を認識できると期待する。 このための支援(画像収集・アーカイブなど)を行う。これらの成果を総括するシンポジウムを開催し、日食観察の実践教育の結果と大規模観察による教育法について総括する。これらを元にこの研究の成果をWebや論文で公表する。また、このような児童・生徒、市民などによる観測から導く新しいサイエンス教育の可能性を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2012年5月21日の日食まで、講習会やシンポジウム、Webを使った教材や指導案の配布を行うなど、その普及活動に努める。合わせて、2012年6月6日の金星の太陽面通過の観察法も広報する(この現象の観察は日食観測と同様に出来る。なお、その次の金星の太陽面通過は、105.5年後の2117年12月である)。また、全国各地で講習会等を実施し、安全に楽しく観察してもらうことに努める。 日食の事後に教材や指導法のアンケート調査などによって、日食観察の実態や日食教材と指導法の使い安さ・問題点などを調査・分析する。また、児童・生徒たちの大量の観察データを使った教育支援とそのデータを使ったサイエンスについて検討する。 児童・生徒が観測した多地点からののデータを見ることによって、小学生でも月の影が地上の上を移動してゆく様子を認識できる。これらのための支援(画像収集・アーカイブ、コンピュータシュミレーションを実時間で示すフリーのソフトウエアの配信などを行う。2012年5月21日の日食での、教材や指導法のアンケート調査の結果を受けて、日食観察の実態や日食教材と指導法を調査・分析し、今後の日食を含む天文現象を使った科学リテラシー教育に寄与する。 同時に、児童・生徒たちの大量の観察データを使ったサイエンス教材を開発する。児童・生徒が観測した多地点からののデータを見ることによって、小学生でも月の影が地上の上を移動してゆく様子を比較的簡単に理解できることを目指す。高校生などには、月の相対速度などから月までの距離を測るなどという、発展的な研究テーマも可能である。 シンポジウムを開催し、これらの成果報告おこなう場を提供する。なお、各地域ごとの集会など、当初の予定にない集会も計画する。
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[Presentation] 2012年金環日食日本委員の活動2012
Author(s)
大西浩次, 海部宣男, 大川拓也, 大越 治, 齋藤 泉, 佐藤幹哉,篠原秀雄, 塩田和生, 塚田 健, 松尾 厚,三島和久, 森 友和, 山田陽志郎
Organizer
日本天文学会2012年春季年会
Place of Presentation
龍谷大学
Year and Date
2012年3月20日
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[Presentation] 2012年金環日食の日本での見え方と人口分布2012
Author(s)
齋藤 泉, 海部宣男, 大西浩次, 大川拓也, 大越 治, 佐藤幹哉,篠原秀雄, 塩田和生, 塚田 健, 松尾 厚,三島和久, 森 友和, 山田陽志郎
Organizer
日本天文学会2012年春季年会
Place of Presentation
龍谷大学
Year and Date
2012年3月20日
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[Presentation] 2012年金環日食日本委員会による日食観察方法の広報活動2012
Author(s)
大川拓也, 海部宣男, 大西浩次, 大越 治, 佐藤幹哉, 篠原秀雄, 齋藤 泉, 塩田和生, 塚田 健, 松尾 厚三島和久, 森 友和, 山田陽志郎,安藤享平, 小野智子, 高橋 淳
Organizer
日本天文学会2012年春季年会
Place of Presentation
龍谷大学
Year and Date
2012年3月20日
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