2012 Fiscal Year Research-status Report
授業者視点映像を活用した授業リフレクション法の開発
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23501153
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
有馬 道久 香川大学, 大学本部, 理事 (10151185)
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Keywords | 授業リフレクション / 授業者視点映像 / 教師 |
Research Abstract |
教師が自らの授業を振り返ることは、授業技能の向上のためにも重要である。これまで、振り返りの方法として自由口述法を用いたが、まんべんなく振り返るには一定の枠組みが必要であることがわかった。そこで本年度は、教師が自らの授業を振り返る際に活用できるチェックリストの作成を目的とし、授業者視点映像の特長も活かすために、既存のチェックリストに改訂を加えることにした。授業者の視点から撮影された算数の授業を香川県内の公立学校の教師に観察させ、大阪府、愛媛県、香川県の各教育委員会が作成した「教師による授業の自己評価チェックリスト」について意見を聴取した。その結果に基づき、「教師による授業チェックリスト」を作成した。区分として、「教授行動」、「指導」、「教師の表情・話し方」を設けた上で、「教授行動」区分の中に、「発問・助言」、「指名の仕方」、「発言の取り上げ方」、「机間指導」、「板書」、「ノート指導」、「グループ学習」の7観点を設け、観点ごとに2~6の質問項目を設けた。また、「指導」区分の中に、「『考える力』を育てる指導」、「『話し合う力』を育てる指導」、「個に応じた指導」の3観点を設け、観点ごとに3~4の質問項目を設けた。そして、「教師の表情・話し方」の区分に、「声の大きさや話すスピードは適当か」「身振りや手振りを交えて話しているか」といった教師自身の話し方や表情を問う11項目を設けた。中でも、「子どもの表情を見て、反応を確かめながら話しているか」、「子どもの発言は顔を見ながら聴けているか」、「机間指導の時の視線の向きは適切か」という3項目は、通常の教室後方から撮影した映像では判断しがたい項目であり、授業者視点映像の特長が活かされるチェック項目であると言える。「導入」、「展開」、「終末」の学習指導過程ごとに評定を行うことができる計47項目からなる新しいチェックリストを作成することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
遅れた理由は、リフレクションの方法を自由口述法からチェックリスト法に変更したためである。当初は、「対話リフレクションを継続的に実施することによって授業者の課題を発見し,その後の授業改善にどのような効果を及ぼすかについて検証する」ために自由口述法を用いる計画であった。しかし、授業者視点映像の特長を生かし、かつ対話リフレクションを円滑に行うためには、リフレクションのための新たなチェックリストの作成が必要となった。そこで本年度は、小学校の教師が自らの授業を振り返る際に用いるチェックリストを作成することを目的とした。来年度はこのチェックリストを活用して、研究の遅れを取り戻し、当初の研究目的を達成する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
新たに授業者視点映像の特長を生かした対話リフレクションを継続的に実施することによって授業者の課題を発見し,その後の授業改善にどのような効果を及ぼすかについて検証する。 方法としては、①同じ小学校に所属する若年教師とベテラン教師のペアを構成する。② セッション1として若年教師に算数もしくは国語の2回分の指導案を準備してもらう。③若年教師に指導案に基づいて1回目の授業を行ってもらう。その際,教師にヘッドセット・カメラを装着してもらい,授業者の視点から授業を撮影・録画する。④授業日の放課後,プロジェクターによって小型スクリーンに投影した授業者視点映像を手掛かりとして,授業者とペアを組むベテラン教師の2人に別々にチェックリストを用いて授業評価を行わせる。その結果を基に対話リフレクションを行わせる。⑤セッション2として、セッション1と同様の手続きで2回目の授業、授業評価、そして対話リフレクションを行う。 上記の手続きで得られたデータについて、①2人の教師のチェックリストの評定結果について照合するとともに、対話リフレクションの観点ごとの頻度,記述量,記述内容などについて1回目の授業と2回目の授業を比較する。②セッション1で示された課題が2回目の授業でどのように改善されたかについて検証する。③授業力向上に有効なリフレクションの開発に向けて手続き・方法の改善を図る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、備品としてプロジェクター、タブレットPC、消耗品として授業録画メディア用品(SDメモリーカード、フラッシュメモリー)と分析用ソフトウェア、ファイリングケース他を計上した。謝金等については、授業の撮影・録画の補助,録音した内容の逐語録の作成とデータ入力に関わる謝金を計上した。そして、学会での研究成果発表と情報収集のための旅費を計上した。
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