2012 Fiscal Year Research-status Report
幼児・児童の避難行動における経路誘導ナビゲーションと教師の遠隔指示システムの開発
Project/Area Number |
23501190
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Research Institution | Kansai Gaidai College |
Principal Investigator |
森田 健宏 関西外国語大学短期大学部, 英米語学科, 准教授 (30309017)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川瀬 基寛 十文字学園女子大学, 人間生活学部, 准教授 (40469268)
上椙 英之 神戸学院大学, 人文学部, 研究員 (50600409)
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Keywords | ナビゲーション / 安全教育 / 教育工学 / ユーザビリティ / ヒューマンインタフェース / 教師教育 / 防災教育 / 認知科学 |
Research Abstract |
幼児~小学校低学年児の防災教育支援の一環として、災害発生時における避難行動について大人による誘導や支援が困難な場合の経路誘導ナビゲーションの開発と、通信復旧時の教員による経路確認及び指示システムの検討を目的としている。2012年度は、前年度に実施した防災対策を含む「幼稚園ICT活用アンケート調査」研究の成果より「低年齢児のICT活用については、まず、教師自身の活用および指導スキルの検討が優先されるべき(日本教育工学会論文誌(2013)に採録)」との見解をふまえ、「(実験3)教師向け経路誘導システムの開発」研究を優先させた。特に、本研究はシステムにおけるユーザインタフェースと認知的な適性について検討していることから、試作したシミュレーターをもとに、操作所要時間と感性評価の計測を行った。実験の比較要因として、「(1)校舎内の被害状況を監視カメラで確認し(探索段階)、(2)安全な避難経路を策定して送信用ディスプレイへタッチパネルで入力する(入力段階)」の2過程を、(A)分離して別個に処理する条件、(B)同時に並行処理する条件、を比較している。また、実験条件で設定した校舎図を(a)2次元デザイン(平面図)条件、(b)3次元デザイン(立体図)条件の視認性についても比較した。被験者は小学校教諭36名で、前者を被験者間要因、後者を被験者内要因に設定した。実験の結果、前述の2条件共に主効果が有意であった。まず、前者の処理条件については、並行処理の方が分離処理よりも早く完了できることがわかった。また、後者の画面デザインは、2次元の方が3次元よりも視認性に優れることがわかった。ただし、被験者の感性評価については、校舎内を探索する(1)の段階では2次元の方がわかりやすいが、経路策定及び入力の段階では3次元の方がイメージしやすいという、操作所要時間の結果とは異なる印象を持たれていることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度研究計画書に示したとおり、幼稚園や小学校に防災支援システム等、メディアや通信機器を導入する場合、教師および保育者のコントロールに必要となる「教師にとってのユーザビリティ」および「システムの俯瞰的理解」が求められる。このことから、平成24年度計画と平成25年度計画の順序を入れ替え、教師のユーザビリティをシミュレーターの開発により実験的手法で調査している。その結果、現実的かつ実用的な問題点を見出すことができ、子どものナビゲーションシステムと連動したシミュレーターの開発につなげることができるものと考えている。この成果については、EdMedia(メディア教育についての国際学会)にProposalを投稿し、FullPaperとして採択されている。この内容を、平成25年6月24~28日にヴィクトリア(カナダ)で開催される学会でプレゼンテーションできる運びとなった。最終年度において、研究成果を国際学会で発表し、東日本大震災以降、子どもの生命を守るあらゆる研究の中で教育工学分野から1つの知見を提供して、他国の安全教育に対する考え方や特色ある取り組みの情報交換ができることで研究の発展性を見出してさらなる研究につなげていく、という当初の計画に沿っており、順調であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度(3年目)については、これまで学校場面におけるレアケースの子どもの避難支援について、その総合的な情報ニーズの把握と教師のためのシミュレーター開発研究に取り組んできたことから、子どものナビゲーションシミュレーターの開発に着手する予定である。そのために、これまでの科研費成果(若手研究(B)-21700832「幼児・児童の避難行動に適したリアルタイムウォークスルー型ナビゲーションの開発」 )において、子どものナビゲーション情報の理解に関する微視的な検討を行ってきたことから、幼稚園や小学校における避難行動パターンを実験校(園)に即した形で検討し、プレビュー型ナビゲーション情報を提示して、シミュレーター場面で行動や指示ができるかを測定するスタイルをとりたい。なお、実験対象校(園)については紹介を受ける準備ができており、実験実施に問題は無いが、分担研究者とのデータ作成および意見交換に一定の時間を要するため、実験実施が秋~冬になることを想定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
予算のうち、多くはEdMedia(メディア教育に関する国際学会)での学会発表にかかる渡航費、宿泊費、現地滞在費、学会参加費に充当する。なお、国際学会における発表にあたり、国際比較教育の観点からの論究が不可欠となるため研究協力者(笠井正隆:関西外国語大学短期大学部・准教授)を1名追加しており、それに応じ分担研究者1名(上椙英之:神戸学院大学文学部・研究員)が出張を辞退しているため、特に旅費については当初の配当計画と一部異なる結果となった。なお、研究成果を国際学会に発表し、発展的な展開を目指す点においては当初の計画通りであり、分担者の役割は計画通りであることから、研究遂行上に支障は無い。その他、子ども向けナビゲーションシステム用シミュレーターの開発について必要な資材およびソフトウェア、実際の幼稚園、小学校をモデルにすることから取材費等が必要になる。さらに研究の経過については、日本教育工学会第29回全国大会(於:秋田大学)で発表する予定であり、旅費に一部当てる予定である。
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