2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23501214
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
江藤 望 金沢大学, 学校教育系, 教授 (60345642)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮下 孝晴 金沢大学, 歴史言語文化学系, 教授 (40174180)
大村 雅章 金沢大学, 学校教育系, 教授 (00324062)
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Keywords | フレスコ画 / チェンニーノ・チェンニーニ / アーニョロ・ガッディ / 聖十字架物語 / 壁画 / サンタ・クローチェ教会 / 西洋古典絵画 / 技法復元 |
Research Abstract |
本研究の目的は、アーニョロ・ガッディ作『聖十字架物語』の実地調査に基き、彼の弟子チェンニーニによる技法書に則って、本作品におけるフレスコ画の工芸的装飾技法(課題1.円光の盛上げ、2.蜜蝋盛上げ、3.金箔装飾)を実証的に解明することにある。この3課題について研究実績の概要を記す。 1.オリジナルに施された円光を大きく分類すると、盛上げ剤の違いが2種類、放射状の光線を表す線刻の違いが2種類存在した。各タイプにおいて技法の復元ができた。復元に際して特に力を発揮したのが、現地調査での3Dスキャンである。スキャンした円光を3D出力し線刻に使用された道具を復元できたことで、完全復元(25年度)に至った。 2.本技法に関しては壁面への施工方法が明らかになった。オリジナルには盛上げ剤の色が異なるものが3種類存在する。うち二つはフィレンツェの画材店の協力により復元できた(商品名はCera del Cennini)。飴色のものに関してはギリシャ松脂の割合が多いと想定される(25年度に検証済み)。盛り上げ剤の成型方法に関しては、想定した作り方とオリジナルとを3Dスキャンで比較検証した結果、明らかに異なっていた。型に流し込み成形したと考えられる(25年度に大理石による雌型を作成)。 3.オリジナルに施された金箔装飾は、垂直の壁面に滲みなどがまったくなく極めて精細な筆裁きである。当時の職人の巧みな技術以前に、チェンニーニの言う油性接着剤ではこの筆致は不可能である。そこで、水性接着剤で実証実験を繰り返した結果、問題が解決した。よって錦糸模様などの精細な金箔装飾に関しては、水性接着剤と断定した。この他、礼拝堂天井に施された金貼り錫箔による星の表現に関しても、油性接着剤(25年度に検証)を含め技法復元にこぎ着けた。ただ、この接着剤に混入されたワニスについては詳細が不明で、今後の課題となっている。
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