2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23501256
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐竹 正延 東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (50178688)
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Keywords | 小胞輸送 / ArfGAP / 骨髄異形成症候群 / 急性骨髄性白血病 / 遺伝子ターゲティング |
Research Abstract |
膜からの小胞形成過程は、small GTPaseであるArfと、その活性化タンパクであるArfGAPによって調節されている。SMAP1遺伝子は、研究代表者らが同定・発見した、ArfGAPファミリーの一員である。平成23年度にSMAP1(-/-)マウスを作出した所、ヒトの骨髄異形成症候群(MDS)に類似の表現型を示した。生後1年以上を経た老令マウスの半数がMDSを発症し、しかもさらにその半数が急性骨髄性白血病(AML)を続発した。平成24年度は、SMAP1欠損がどの様な分子機序により、血球細胞の分化異常と増殖亢進をもたらすのかについて解析した。 先ず骨髄細胞の赤芽球分画では、トランスフェリン受容体の細胞膜から細胞質への取り込みが、SMAP1欠損細胞では野生型細胞に比べ、むしろ亢進していた。マウス胎仔線維芽細胞においても同様であった。次に、骨髄細胞を培養してマスト細胞を得、c-Kitの輸送について調べた。エンドサイトーシスについては、SMAP1(-/-)と野生型細胞の間で差は無かったが、SMAP1(-/-)細胞では取り込まれたc-Kitの分解が顕著に遅延していた。それに伴いSMAP1欠損下では、c-Kitのユビキチン化が持続したままであり、ERKのリン酸化レベルと細胞増殖能が亢進していた。取り込まれたc-Kitはmultivesicular body(MVB)に滞留し続け、ライソゾームへの運搬効率が低下していた。 以上、SMAP1(-/-)の骨髄細胞では、活性化Arf量の増加により、トランスフェリンのエンドサイトーシス亢進と、取り込まれたc-Kitの分解遅延が起こっており、これらが血球分化の脱制御と増殖亢進をもたらすものと推測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
SMAP1欠損マウスの表現型であるMDSの発症機序を、トランスフェリンとc-Kitという細胞増殖因子(受容体)の輸送異常に関連づけることができた。そして、その結果を、高いIFの雑誌に発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
SMAP1(-/-)欠損細胞に見られた輸送異常は、一見、奇異に映るかもしれない。というのも、トランスフェリン受容体のエンドサイトーシスは亢進するのに対し、c-KitのMVBからの輸送は傷害され、正反対の効果をもたらすからである。この中でトランスフェリンについては、SMAP1(-/-)細胞で、さらにSMAP2(SMAP1とは独立した、しかし相同の遺伝子)を欠損させると(2重欠損)、取り込みが全く無くなるとの結果を得ている。従って、トランスフェリンであれc-Kitであれ、SMAP1は本来は、小胞形成・輸送に対してポジティブに作用するものと考えられる。また、少なくともトランスフェリン取り込みに関しては、SMAP1とSMAP2の間には、何らかの相互・協調作用が存在するのかもしれない。平成25年度はSMAP1とSMAP2の関連について、詳細に解析する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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[Presentation] クラスリン小胞形成因子SMAP1の欠損は細胞内小胞輸送の異常をきたし,骨髄異型性症候群を誘引する2012
Author(s)
昆俊亮, 峯岸直子, 田邊賢司, 渡邊利雄, 船木智, 坂元大輔, 樋口雄大, 清成寛, 浅野克敏, 福本学, 真田昌, 小川誠司, 中村卓郎, 佐竹正延
Organizer
日本分子生物学会
Place of Presentation
福岡国際会議場
Year and Date
20121211-20121214