2012 Fiscal Year Research-status Report
大腸癌幹細胞の性質を規定するエピゲノムおよび機能性RNAの解明
Project/Area Number |
23501261
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
鈴木 拓 札幌医科大学, 医学部, 教授 (20381254)
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Keywords | 大腸癌 / 癌幹細胞 / エピジェネティクス / メチル化 / microRNA / noncoding RNA |
Research Abstract |
本研究者はこれまで、大腸癌細胞を用いてエピゲノム解析およびnoncoding RNA発現解析を組み合わせることで、noncoding RNA遺伝子のエピジェネティックな制御異常を解析した。平成24年度は、これまで同定した遺伝子を臨床検体で詳細に検討することで、その機能的意義を検討した。大腸腺腫(n = 192)、大腸癌(n =100)を対象に検討したところ、miR-34b/cのメチル化は大腸腺腫においてすでに9割の症例に発生していることが明らかとなった(Am J Pathol, 2012)。miR-34b/cはp53の下流エフェクターであることが知られている。このことから、miR-34b/cメチル化は大腸発癌ステップの早期において、p53の腫瘍抑制能を減弱させる効果があることが示唆された。また、ニューロテンシン受容体遺伝子1型(NTSR1)のメチル化が、大腸癌浸潤および予後と逆相関を示すことを明らかにした。 また近年では、長鎖noncoding RNA (lncRNA)と癌との関係が注目されている。そこで本研究者は大腸癌細胞株および臨床検体のエピゲノムデータと発現データと比較することで、大腸癌において高頻度にエピジェネティックに不活化されたlncRNA Xを同定した。この遺伝子のCpGアイランドは大腸腺腫および大腸癌において極めて高頻度にメチル化していることから、新規大腸癌抑制遺伝子である可能性が示唆された。また、この遺伝子のメチル化を大腸洗浄液中から検出することで、大腸癌スクリーニングマーカーとして応用可能であることが予備実験で示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大腸癌細胞および臨床例の発現プロファイルおよびエピゲノムデータから、癌関連noncoding RNA遺伝子を複数同定することができた。さらにその遺伝子が大腸癌臨床例において早期からメチル化していることを明らかにすることができた。また、長鎖noncoding RNA遺伝子の中から、大腸癌関連遺伝子候補を同定することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
大腸癌臨床例におけるエピゲノム解析手法についてはほぼ確立できたため、今後は20症例を目標にエピゲノム解析を行う。また同定したnoncoding RNA遺伝子の機能解析を進めるとともに、診断マーカーや治療標的としての応用可能性を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品として、エピゲノム解析のためのシークエンス試薬および細胞機能解析のための細胞培養・遺伝子導入試薬を購入する。また学会での成果発表のための旅費および論文発表のための英文添削料・投稿料に充てる。
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Research Products
(10 results)