2011 Fiscal Year Research-status Report
成熟T細胞腫瘍で強く発現するケモカイン受容体CCR7の発現制御機構の解明
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23501273
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
義江 修 近畿大学, 医学部, 教授 (10166910)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中山 隆志 近畿大学, 医学部, 講師 (60319663)
樋口 智紀 近畿大学, 医学部, 助教 (00448771)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | CCR7 / c-Myb / ATLL / CTCL |
Research Abstract |
これまでに我々は、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)及び皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)におけるケモカイン受容体発現とその役割について、多数の報告を行ってきた(Blood 2002, Oncogene 2008, 他4報)。これらの報告はATLLで特徴的な組織浸潤を説明するだけでなく、ケモカイン受容体からのシグナルやケモカイン受容体発現に関わる転写因子(CCR4発現を誘導するFra-2)が細胞増殖を促進することも明らかにした。また我々は既にATLLでのCCR7発現がリンパ節浸潤と相関することを報告したが(Blood 2000)、CCR7発現に関わる転写因子やその転写因子のATLL発癌機構との関係は不明なままであった。本年度はこれらを解き明かす手始めとして、ATLL及びCTCLにおいてCCR7発現に関わる転写因子の同定を行った。その結果、1)患者由来ATLL細胞を用いた5´-RACE解析により、主なCCR7転写開始点は1カ所であること、2)CCR7の転写活性化エレメントは転写開始点の上流71~90 bp に存在すること、3)この領域には原癌遺伝子c-MybのDNA結合配列に類似した部位が存在し、c-Myb発現抑制によりCCR7が発現抑制されることを明らかにした。しかしながら、4)CCR7非発現細胞株を用いたc-Myb再構築解析では、CCR7プロモーターの十分な活性化がなかったこと、5)点変異解析により同定したコアとなる6 bpのDNA配列は、c-Mybを含む既知の転写因子のDNA結合配列とは高い相同性を示さないことも明らかとなった。これらのことは、ATLL及びCTCLにおけるCCR7発現には未知の転写因子による新規な制御系が寄与することを示唆する。また、成熟T細胞性腫瘍の発癌機構の一端を解明する上で、この転写因子の同定は一つの鍵となる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度我々は、1)CCR7プロモーターの活性化エレメントの同定、2)CCR7プロモーターの転写因子の結合解析、3)同定された転写因子のCCR7発現に与える影響の検討、4)同定された転写因子の発現解析、5)ATLLとCTCL臨床検体を用いたCCR7プロモーター転写活性化因子の発現とリンパ節浸潤との相関解析を計画し、実行した。その結果、CCR7プロモーターの活性化エレメントは転写開始点上流72~77 bpであることが明らかとなった。我々は当初c-MybがCCR7の発現制御にかかわっていると予想していたが、それを決定づける上で、この結果は十分ではなかった。また、本年度は研究代表者主催の学会準備や学内業務に多くの時間を費やさざるを得ず、CCR7高発現を担う転写因子を同定するまでには至らなかった。したがって、次年度は本年度において十分に実行できなかった研究計画も含めて遂行する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は主催学会の準備などのため、十分に研究計画を進めることができなかった。しかし、次年度は通常通りの予定であるため、本研究課題の実行に問題はないといえる。次年度は、本年度成しえなかったCCR7発現制御因子の同定を未実行の計画として組み込む必要があるため、少し計画を変更する必要がある。次年度は、まず、プロモーター解析のみでは十分に同定できなかったCCR7高発現に関与する転写因子の同定をMaldi-TOF MSを用いた実験系によって行う。この実験系は当該研究施設にてその基盤となる手技はすでに構築されているため、立ち上げに必要な時間と技術面は問題ない。この転写因子を同定したのち、それがCCR7発現に与える影響を検討する。最後に、成熟T細胞性腫瘍細胞株において同定した転写因子がもつ生理学的および病理学的意義について、目的遺伝子発現抑制実験系および臨床検体を用いた免疫組織染色などによって検討する。この実験系はすでに当該研究施設にて実験系が確立されたものであるため、手技的な面での大きな問題は生じることはない。以上のように、次年度計画を一部変更したが、CCR7発現制御に直接的にかかわる転写因子の同定を軸とする本研究目的には影響せず、研究計画全体での大幅な変更は生じない。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度研究計画の実行において、必要となる機器は当該研究施設にてすでに整備されているため新たに購入する必要はなく、主に必要となる研究経費は細胞培養や解析に使用する試薬、キット、siRNA、免疫組織染色に用いる抗体などの消耗品費にある。次年度も、本年度と同様に研究費は主に消耗品の購入に使用する。
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Research Products
(7 results)