2012 Fiscal Year Research-status Report
環境標的治療法開発のためのSp1依存性癌細胞新規低酸素応答メカニズムの解明
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23501280
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Research Institution | 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所) |
Principal Investigator |
小井詰 史朗 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所), その他部局等, その他 (60416063)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮城 洋平 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所), その他部局等, その他 (00254194)
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Keywords | ハイポキシア |
Research Abstract |
昨年度申請者は、cDNAマイクロアレイ解析によりFVII遺伝子類似のSp1依存性メカニズムで発現誘導を受ける遺伝子群を見出した。特にinter cellular adhesion molecule (ICAM1)をコードするICAM1遺伝子は、細胞を低酸素と低血清環境が共存する虚血性環境で培養すると高度に相乗的に転写活性化されることが分かった。昨年度、この相乗的遺伝子発現増強には低酸素誘導性転写因子HIF1aおよびHIF2a(HIFs)やmTORシグナリングが関与することを報告したが、本年度さらに転写因子NFkappaBの活性化が重要な役割を担うことを明らかにした。さらにcDNAマイクロアレイ解析により虚血性環境において相乗的に発現誘導される遺伝子群を探索し、ICAM1発現誘導に重要なメカニズムに関して知見を得た。ICAM1発現が癌細胞のどのような悪性形質発現に関与するか解析するために、shRNAを安定発現させ、ICAM1をノックダウンさせた卵巣癌細胞株を樹立した。これらの細胞を用いて細胞の生存能、侵潤能等についてin vitro実験により検討したところ、ICAM1は虚血性環境における卵巣癌細胞の生存、浸潤性を増強することが明らかとなった。一方、ICAM1の発現がほとんど検出されない正常酸素環境下ではこのような効果は観察されなかった。さらに、in vivoにおけるICAM1の発現、腫瘍増殖における効果を検討するために卵巣癌細胞をNOD-SCIDマウスに移植した。その結果、ICAM1は腫瘍内の低酸素領域において強度に発現し、腫瘍の増殖を著しく増強させることが明らかになった。これらの結果はICAM1が卵巣癌の進展に重要な役割を担うことを示唆している。現在本研究より得られた知見を基に虚血性環境における癌細胞の環境応答メカニズムのさらなる詳細な解明に取り組んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
Sp1依存性発現誘導遺伝子のうち、がんの悪性形質発現に重要な役割を担う分子ICAM1を特定した。ICAM1遺伝子発現メカニズムに関してもその詳細を明らかにした。新たにcDNAマイクロアレイ解析を行い、細胞の虚血性環境適応メカニズムについて予想以上の知見を得た。また、研究はin vitroのがん悪性形質発現への効果解析のみならず、マウスxenograftモデル実験を用いたin vivo環境における解析へと発展し、腫瘍進展におけるSp1依存性発現誘導分子の重要性を見出すなど予想以上の成果を得たと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
ICAM1の腫瘍進展における重要性が明らかになったので、今後臨床検体を用いた実験により臨床データ(予後、悪性度等)と本メカニズムにより発現調節を受ける遺伝子産物との関連も検討していきたい。この結果も踏まえ、これまでの成果をまとめて欧文誌に投稿する。また、本研究終了後、得られた成果をよく検討し、今後本研究をさらに発展させるための研究を立案し、スタートさせる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
In vivo実験に必要な消耗品や免疫染色用試薬類の購入、学会出張費等に充てる。
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