2011 Fiscal Year Research-status Report
抗がん剤による抗腫瘍免疫応答活性に関わる分子機構の解明
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23501283
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
地主 将久 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 准教授 (40318085)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉山 裕規 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 准教授 (10253147)
千葉 殖幹 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 非常勤研究員 (20550023)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 腫瘍免疫 / 抗癌剤 / 樹状細胞 / MFG-E8 / ネクローシス / RIP1 / RIP3 |
Research Abstract |
MFG-E8は抗原提示細胞へのアポトーシス死細胞の貪食を促進することで、免疫寛容や腫瘍免疫抑制に貢献しているが、生体内で最も強力な抗原提示細胞である樹状細胞におけるMFG-E8の機能修飾については不明な点が多い。申請者は、未熟樹状細胞から高産生されるMFG-E8が、抗癌剤治療に伴う炎症性細胞死であるネクローシス細胞を特異的に認識すること、さらに炎症シグナルのひとつRIP1/3の活性の抑制効果を介することによって、腫瘍抗原のendosomeへの取り込みを抑制することを同定した。以上より、MFG-E8はこれら一連のメカニズムにより、樹状細胞による有効な抗原処理・提示機構を負に調節していることを同定した。さらに、抗癌剤により誘導されたネクローシス死細胞を貪食したMFG-E8遺伝子欠損樹状細胞は、同様に処理された野生型樹状細胞と比較して、優れた炎症性サイトカイン(IL-12, IL-23, IFN)産生能や腫瘍抗原に特異的な細胞障害性Tリンパ球(CTL)誘導能をを有すること、さらにin vivoでの抗腫瘍免疫誘導に伴う腫瘍拒絶を誘導を強力に促進することを判明した。以上の成果は、MFG-E8による腫瘍内樹状細胞の腫瘍免疫原性抑制の新たな分子メカニズムの解明に大きく貢献すると共に、化学療法や放射線療法などがん細胞死誘導を介した内因性抗腫瘍免疫誘導を負に制御するうえでの、新たな分子経路を明らかにした点で意義を有する成果であるといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
該当年度において、MFG-E8を介した新たな細胞死シグナル制御機構の同定と、それが抗原提示、CTL活性に与えるインパクトや、抗癌剤によるネクローシス細胞死誘導とMFG-E8依存性宿主免役制御との関連をin vivoでの抗腫瘍活性を指標にして解析を思考した結果、概ね仮説通りの研究成果が得られた。以上を総合すると、当初の研究到達目標には概ね到達していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
ネクローシス細胞死に伴うRIP-1/3が、抗原のEndosome取り込みを制御していることや、MFG-E8によるその抑制効果を前年度に明らかにしてきたが、具体的なシグナルやその応答を媒介する責任因子の存在などは不明である。以上より、MFG-E8発現およびネクローシス細胞取り込み時におけるendosome関連因子の同定を、two hybrid法やDNA microarrayの手法を用いて解析、同定する。さらに、そのsiRNAベクターを作成し、MFG-E8発現の有無にて分離した樹状細胞を対象にして、その炎症応答、抗原クロスプライミング能の変化や腫瘍特異的CTLの誘導に与える影響をin vitroにて検証する。さらに申請者は、抗癌剤による宿主免疫応答を制御する別の因子としてTIM-3の関与を示唆する予備データを得ている。よって、抗癌剤を介した免疫応答制御におけるTIM-3の役割についての検証を開始する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度における研究成果は、本研究予算に加えて他事業による予算により遂行されたものであるため、未使用額の発生が生じた。平成24年度については、ネクローシス細胞認識に伴うRIP1/3制御に係わる因子のうち、MFG-E8免疫制御に関与するものを同定、機能解析を遂行するための網羅的解析に要する研究資材の購入にその一部を充てること、さらに同定された因子のsiRNAベクター作成や、その機能解析に要する試材(抗体、プライマーなど含む)の購入に充てることを予定している。さらに、TIM-3による抗癌剤を介した腫瘍免役修飾能の検証に要する試薬類、備品の整備にその一部を充てる。また平成24年度においては、他事業による上記研究予算の配当は予定されていないため、現時点で未使用額の発生は生じない予定である。
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Research Products
(7 results)