2012 Fiscal Year Research-status Report
前立腺がん腫瘍源細胞の形質維持における癌遺伝子相互作用の解明
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23501319
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Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
馬島 哲夫 公益財団法人がん研究会, がん化学療法センター分子生物治療研究部, 研究員 (30311228)
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Keywords | がん幹細胞 / 前立腺がん / 分子標的治療 / RNAiスクリーニング |
Research Abstract |
前立腺がんでは高い腫瘍形成能を有する腫瘍源細胞が存在し、再発や治療抵抗性に関わることが示唆されている。しかしその性状については十分に明らかでない。本研究では、癌関連遺伝子産物の役割の検討や、化合物、RNAiスクリーニングにより、腫瘍源細胞の生存維持機構の解明を目的とする。 前年度までに我々は、前立腺がん細胞株を用い、前立腺がん細胞集団より腫瘍源細胞の分離を試みた。その結果、がん幹細胞マーカーとして報告されているいくつかの細胞表面マーカーを指標に細胞分離するとマーカー陽性分画で腫瘍形成能が高いことが確認できた。中でも、CD151/CD166/TRA1-60陽性分画は腫瘍形成能が顕著であり、またスフェア培養での陽性細胞の濃縮も明確であった。また、臨床前立腺がん組織4例より、がん細胞の初代培養を行った。細胞集団中には、上述のマーカー陽性細胞が数%存在することを確認した。現在、その継続培養が可能であるかを検討している。 細胞株を用いた検討については、遺伝子発現解析および機能スクリーニングによる統合的解析をさらに進めた。まず、腫瘍源細胞が濃縮されたスフェア培養細胞、および、もとの培養がん細胞の両者よりRNAを抽出し、遺伝子発現解析をおこない、両細胞集団間での遺伝子発現の差異を検討した。遺伝子シグニチャー解析等の結果、前立腺がんのがん化に関わるAktの下流のシグナルがスフェア細胞で亢進していることを示唆する結果を得た。 腫瘍源細胞の生存維持機構をさらに明らかにするため、(1)スフェア細胞への選択毒性と、(2)マーカー陽性細胞率の低下の2つを指標として、ケミカルスクリーニングおよび包括的RNAiスクリーニングを実施した。この両解析によりヒット化合物およびRNAiを複数得た。これらについて、さらなる解析を現在進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は前立腺がん細胞株を用い、マーカー陽性分画に高い腫瘍源性があることを確認した。またこのマーカー陽性分画は、臨床前立腺がん組織由来の初代培養細胞にも含まれることを確認した。さらに、遺伝子発現解析および、ケミカル/RNAiスクリーニングにより腫瘍源細胞の生存に関わる候補因子の抽出までを進めた。これらは当初のほぼ予定通りである。
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Strategy for Future Research Activity |
ケミカル/RNAiスクリーニングにより得られた腫瘍源細胞の生存に関わる候補因子については、(1)正常組織と前立腺がんにおける発現の違い、(2)遺伝子工学的手法による腫瘍源細胞における生存への機能的関与の確認、(3) 下流のシグナルの解析や既存の生存シグナル分子とのクロストークなどに絞って研究を進める。また、臨床前立腺がん組織由来の細胞については、長期培養可能な細胞の樹立やそこからの腫瘍源細胞分画の分離の試みをさらに続け、それが得られた場合には、細胞株での解析で得られた結果が、より臨床材料に近い系でも再現されるかをみていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上述の研究方策に従い、研究費の使用については、当初の予定通り、shRNA, siRNA、シグナル阻害化合物の購入、細胞培養、遺伝子工学、生化学に必要な試薬や消耗品の購入、実験動物の購入等に充てたい。
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Research Products
(4 results)