2012 Fiscal Year Research-status Report
自然再生の順応的ガバナンスに向けた社会的評価システムの構築
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23510050
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Research Institution | Research Institute for Humanity and Nature |
Principal Investigator |
菊地 直樹 総合地球環境学研究所, 研究部, 准教授 (60326296)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
敷田 麻実 北海道大学, 学内共同利用施設等, 教授 (40308581)
豊田 光世 兵庫県立大学, 環境人間学部, 講師 (00569650)
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Keywords | 自然再生 / 順応的ガバナンス / 社会的評価 / 環境政策 / 地域再生 |
Research Abstract |
本研究課題は、自然再生が当該地域社会に与える影響・効果・課題などを評価する社会的評価モデルを構築することを通して、順応的ガバナンスに向けた政策と研究に有益な指針を提示することを目的としている。本年度は以下の研究を実施した。 (1)フィールド研究会:9月に北海道浜中町・鶴居村でフィールドワークと研究会を開催した。浜中町の湿地トラストの取り組み、鶴居村のタンチョウと共生する地域づくりの取り組みについて情報を収集した。さらに研究会を開催し、昨年度抽出した知識・情報、ステークホルダー、ネットワーク、課題認識、目標設定、社会的評価、意思決定の方法、社会的ストックというキーワードをもとに議論を進め、評価指標の検討とモデル構築を試みた。本研究の評価指標を用いたモデルは、研究者のみならず地域の多様なステークホルダーが使用可能であることを確認した。 (2)研究会:12月に京都市内で研究会を実施した。9月の研究会で抽出した評価指標を用い、石川県加賀市のラムサール登録湿地の片野鴨池、新潟県佐渡島の加茂湖水系再生研究所、兵庫県豊岡市の田結湿地、沖縄県石垣島のサンゴ村という事例の分析を進め、以下の評価指標を再設定した。・ 人(のつながり):アクター、ネットワーク、プラットホーム、・ 知識:知識、技術、課題認識、学び、ビジョン、・ 効果:豊かさ(社会・経済・自然)、外部評価、主観的評価 (3)フィールド研究会:2月に愛媛県西予市においてフィールド研究会を実施し、コウノトリに飛来による放棄田の再生に関する事例調査を行い、情報の収集に努め、ワークショップを開催した。12月に京都市で実施した研究会での議論を踏まえ、事例の分析を進めた。 この評価指標を用いた事例の分析をすすめた結果、より動的な指標として設定し直すとともに、動的なプロセスを表現できるモデルの構築の必要性を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3回の研究会を開催した。そのうち2回はフィールドワークを兼ねており、自然再生が地域社会に与えた社会的影響に関する情報を収集することができ、知見を深めることができた。 3回の研究会では、いずれも時間をかけた研究会を行い、(1)自然再生の順応的ガバナンスについての先行研究に関する評価、(2)自然再生の社会的評価指標の抽出の実施、(3)社会的評価指標を用いた事例の分析、を行った。 本研究で設定した指標を用いてこれまで研究代表者及び研究分担者が蓄積してきた事例の再分析を進め、社会的評価モデルの構築に向けた議論を行い、社会的評価指標の持つ有効性と課題を確認することができた。 また、NPO活動家を加えた議論で、本研究で進めている自然再生の順応的管理に向けた社会的評価モデルのユーザーは、研究者のみではなく、地域で活動しているNPO、住民、行政といったステークホルダーが使用できる可能性が高いことも確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
自然再生の社会的評価指標を用いたモデル構築に関する研究を進め、論文の執筆作業を進めていく。 (1)事例分析:これまでの現地調査で収集したデータを整理するとともに、・ 人(のつながり):アクター、ネットワーク、プラットホーム、・ 知識:知識、技術、課題認識、学び、ビジョン、・ 効果:豊かさ(社会・経済・自然)、外部評価、主観的評価という自然再生による地域社会への影響・効果・課題に関する指標の関係性について事例の分析を通じて図表化する。 (2)モデル構築に向けた議論:現地調査及び事例分析を踏まえ、敷田が提示している中間システムモデルなどを基本として、自然再生による地域社会の変容とその過程を包括的に評価するための理論的課題を抽出し、評価モデル構築に向けた作業をすすめる。 (3)論文執筆:(1)と(2)の作業と並行して、自然再生の順応的ガバナンスに向けた社会的評価モデルの必要性、評価指標の設定、事例を用いたモデル分析等を内容とする論文を共同で執筆する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究では、現地調査とミーティングが中心を占めるため、旅費の割合が高くなる。3回の研究会を予定している。 旅費は、ミーティングと論文執筆に向けたワークショップ、総括の研究会の開催旅費を50万円と計算した。
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