2011 Fiscal Year Research-status Report
53BP1によるDNA二重鎖切断端の運動性亢進は、末端結合修復能を向上させるか
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23510067
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
橋本 光正 金沢医科大学, 医学部, 講師 (70293975)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 53BP1 / Rad18 / TRF2 / 非保護テロメア末端 / DNA二重鎖切断端 / CO-FISH / 末端結合修復 / T-SCE |
Research Abstract |
本研究は、テロメア非保護のDNA断端の運動性を指標として、53BP1がどのようにして非相同末端結合修復活性を亢進させているのか、Rad18の関与はどうか、その機序と調節機構の全容を明らかにする。本研究計画によって、非相同末端結合修復の全経路を明らかにする。1. 非保護テロメア端の末端結合修復と53BP1、Rad18の関係(1)実験系の構築について。染色体末端結合修復について、その結合の方式を定量的に評価する系を構築した。具体的には染色体末端保護タンパクTRF2のsiRNAを用いて染色体末端を露出した状態を誘導し、その末端の結合修復活性をTelomeric PNA FISHを用いて定量的に測定する系を構築した。(2)53BP1-/-MEF、Rad18-/-MEF、野性株MEFを用いた非保護テロメア端の結合能について。Rad18-/-MEFは野性株MEFと同等の結合能を示した。53BP1-/-MEFの結合能は著しく低下することを示した。2. 非保護テロメア端の末端結合修復と細胞周期依存性(1)Chromosome Orientation (CO)-FISHによる末端結合の細胞周期依存性。CO-FISHを用いて、末端結合の細胞周期依存性を検討した。その結果、Rad18-/-MEF、野性株MEFにおいて、末端結合の約80%はcromosome type、約20%はchromatide typeの結合であった。1の結果と合せてRad18による末端結合の関与は認められないと考えられる。(2)53BP1-/-MEFにおいて、CO-FISHの結果から、T-SCE(テロメア末端姉妹染色体分体組換)が高頻度に起こることがわかった。このことは、極めて相同性の高い部位における組換修復の機構を検討する上で重要な知見を与えてくれるものと考えられる。現在、このメカニズムについて検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時点に考えた実験系の構築は予想通りの進行となった。Telomere RPA FISH、Chromosome Orientation FISHによる染色体末端結合能の解析および染色体末端の変異解析は予定通り進行した。またRad18-/-MEFと53BP1-/-MEFにおいて、申請時点に予想した実験結果とは異なる結果が得られたが、その実験結果はDNA二重鎖切断の修復モデルを考える上で、新しい機構を想起させるものであった。現在、その結果を基に、新しい機構モデルを立てて、それを検討中である。具体的には、細胞周期G1期における53BP1とRad18相互作用における染色体末端融合の促進効果は認められなかった。しかしこのことは非相同末端融合以外における両者の機能、例えば組換修復への関与などを想起させるものである。53BP1欠損細胞のみでT-SCEが頻度高く観察されたことから、53BP1にはDNA二本鎖切断端の相同組換修復を制御する機能を持つことが考えられる。現在このことについて、詳しく検討中である。Rad18については、野生型、機能領域変異型の遺伝子を構築、蛍光タグ付き発現プラスミドに挿入、53BP1についても蛍光タグ付き発現プラスミドを構築した。これらをMEFs53BP1-/-、Rad18-/-に導入し、タイムラプス蛍光顕微鏡で観察した。現在、siRNA(TRF2)導入後のこれらの蛍光タグ付きタンパクの運動を撮影し、その運動を定量化する方法を検討しているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
53BP1-/-MEFにおいて高頻度に観察されたT-SCEについて、その機構を明らかにすること。具体的には、現在、構築中あるいは構築済みの53BP1機能ドメインは細胞に戻し、T-SCEを調べ、その機構を担う部位を明らかにする。 また53BP1機能ドメインの変異体を作成し、同様のことを調べる。またテロメアマーカーとしてのEGFP-TRF1を発現させるプラスミドを細胞に導入し、TRF2をノックダウン、非保護テロメア端のタイムラプス蛍光顕微鏡を用いて、EGFP-TRF1の蛍光を非保護テロメア端のマーカーとして運動性を観察する。運動度は一定時間に移動した距離で定量化する。53BP1-/-MEFにEGFP-TRF1発現プラスミドを導入する際に、RFP-融合53BP1(野生型、および53BP1変異型発現プラスミドを同時に導入する。53BP1のDNA二重鎖切断端への集積能、53BP1のBRCTドメイン、53BP1のリン酸化が、それぞれ非保護テロメア端の運動性保持に必須か否かを検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
予定通り、物品費として1,300,000円を充てる。 購入品としては、細胞培養に関するもの、血清(\300,000. ¥30,000@500mlX10)、培養のためのプラスチック製品(¥500,000)等、小計¥800,000 分子生物学実験に関するもの、蛍光タグ付きプラスミド、抗体等、小計¥400,000 蛍光顕微鏡に関する消耗品(ガラスボトムシャーレ)等に¥100,000を充当する計画である。
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Research Products
(4 results)