2012 Fiscal Year Research-status Report
精密質量分析を用いた農薬塩素処理物からの変異原性物質の探索
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23510102
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
高梨 啓和 鹿児島大学, 理工学研究科, 准教授 (40274740)
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Keywords | 農薬 / 塩素処理 / 変異原 / 精密質量分析 / 構造解析 |
Research Abstract |
本研究では、殺虫剤fenitrothionの加水分解物である3-methyl-4-nitrophenol(3M4NP)が浄水場で塩素処理された際に生成する物質を検討している。同定された物質の毒性(変異原性)を測定することによって、浄水場で農薬由来の変異原性物質が生成され得ることを証明することを目的としている。 昨年度、3M4NPを塩素処理したサンプル中に含まれている物質を高分解能のLC/MSを用いて探索した結果、chloro-5-hydroxy-2-nitrobenzoic acid(C5H2NB)などの生成が示唆され、衝突誘起解離(CID)により構造を解析したが結論には至らなかった。そこで本年度は、LC分離を実施して構造解析を進めた。その結果、C5H2NBは4つ以上の異性体が存在していることが示唆された。次に、2-picolylamine(PA)を用いて選択的誘導体化を実施し、官能基情報を得ることとした。その結果、質量誤差-2.382~0.305 ppmでm/z 306.0287のイオンが塩素、炭素および窒素の天然同位体ピークを伴って観察され、いくつかの異性体はC5H2NBであることが明らかになった。残りの同位体がベンズアルデヒドであると予想し、2,4-dinitro-phenyl-hydrazine(DNPH)によるformyl groupの誘導体化を行い、benzaldehydeの存在を検討した。しかし、誘導体化方法、イオン化方法、移動相の非水化を検討してもbenzaldehydeは検出されなかった。このことから、3M4NP塩素処理物中のm/z 215.9705にはCD2NB は含まれず、C5H2NBとその異性体から構成されていると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の計画は、1)当該変異原性物質の分子式候補を絞り込む、2)HPLCにおける分離条件を検討する、3)APCIで分析することの必要性を検討する、4)構造式を推定することを主な目標として掲げていた。平成23年度および平成24年度において、上記の目標をすべて達成した。また、平成25年度の計画である5)CIDによる確認については、平成24年度で達成した。さらに、当初計画にはなかった選択的誘導体化を行い、成果を得ている。以上より、当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
変異原性物質の単離には至っていないので、その単離を目指す。同時に、生成が予想されているC5H2NBの合成を試みる。以上のように標品の入手を試み、NMRによる生成・精製の確認を行った後、標品に基づき構造を決定する、また、標品の変異原性試験とサンプル中の濃度測定を行い、3M4NPの変異原性物質生成能に対する当該物質の寄与率を求めることを目指す。さらに、C5H2NB以外のイオンについて検討を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度の研究において、リサイクル分取液体クロマトグラフィーによる変異原性物質の分画を行った際、変異原性活性の回収率が低いことが課題としてあげられた。そこで平成24年度にその検討を行ったが、分離条件を見直すことにより容易に回収率を向上させることができたため、当初予定より研究費を圧縮することができた。 平成25年度は、当初計画になかったC5H2NBの合成を試みる。次年度に使用する予定の研究費は、合成に充てる予定である。
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Research Products
(2 results)