2013 Fiscal Year Research-status Report
精密質量分析を用いた農薬塩素処理物からの変異原性物質の探索
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23510102
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
高梨 啓和 鹿児島大学, 理工学研究科, 准教授 (40274740)
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Keywords | 高分解能LC/MS / 変異原性物質 / 農薬 / 塩素処理 / 構造推定 |
Research Abstract |
本研究では、殺虫剤fenitrothionの加水分解物である3-methyl-4-nitrophenol(3M4NP)が浄水場で塩素処理された際に生成する物質を検討している。同定された物質の毒性(変異原性)を測定することによって、浄水場で農薬由来の変異原性物質が生成され得ることを証明することを目的としている。 昨年度、3M4NPを塩素処理したサンプル中に含まれている物質を高分解能のLC/MSを用いて探索した結果、chloro-5-hydroxy-2-nitrobenzoic acid(C5H2NB)とその異性体が生成していると推定された。そこで本年度は、C5H2NBの単離を目指すとともに、C5H2NBの合成を検討した。さらに、単離されたC5H2NBのNMRを測定し、構造推定を行った。加えて、C5H2NB以外のイオンについても検討を加えた。 変異原性物質の単離は、異なる分離モードのLCカラムを用いた多次元LC分離により行った。得られた画分の純度をLC/MSで検討した結果、ほぼ単離を達成できたため、1H-NMRの測定を実施した。しかし、積算回数の増加などを行っても、有意な強度で信号を得ることができず、収率不足でった。C5H2NBの合成を検討したが、実験時の安全上の問題から合成を断念した。C5H2NB以外のイオンの検討については、様々な種類の多変量解析を検討し、3M4NPを塩素処理した際に発現する変異原性強度と相関関係の強いイオンを発見することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目標としていた変異原性物質の単離や合成には至っていないが、予定していた検討はすべて実施することができた。さらに、多次元LC分離や1H-NMRの測定など、当初検討対象としていなかった、より寄与率が高いイオンの検討など、年度途中で新たに発生した検討項目、新たな着想による問題回避を試みたため、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
精製不足・回収率不足が問題となったため、これを解決すべく多回精製を実施する。また、衝突断面積の測定に目処がたったため、衝突断面積の測定による構造推定を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度に、3-methyl-4-nitrophenol塩素処理副生物の分析を行い、その結果を基に副生した変異原性物質の分取・精製を行うとともに、得られた試料の毒性試験を行う予定であった。しかし、分取を実施した結果、精製と回収が不十分であったため、毒性試験を実施することができなかった。そこで、計画を変更して、多次元分取を追加で行うことにより目的の達成を試みることとした。 多次元分取を多回実施して純度の高いサンプルを高収量で得る。得られたサンプルの毒性試験を実施する。また、衝突断面積の測定の目処が立ったため、衝突断面積による構造推定を検討する。未使用額は、その経費に充てることとしたい。
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