2011 Fiscal Year Research-status Report
多モード切り替え型ハイブリッドシステムのオンラインスケジューリング方法
Project/Area Number |
23510163
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
五島 洋行 法政大学, 理工学部, 准教授 (00398950)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | スケジューリング / Dioid代数 / 状態空間表現 / ロバスト性 / 確率的変動 / CCPM |
Research Abstract |
主な研究成果は,1.システムパラメータに大きな確率的変動を伴う場合のロバストなスケジューリング方法,2.システムパラメータ変化時の軽量な再スケジューリング方法,の二点に集約される.同時実行可能な複数のタスクがすべて終了するのを待つ,いわゆる同期条件を取り扱う場合,複数タスクの実行時間の最大値が本質的な役割を果たす.このため,実行時間に確率的変動を含む場合,最大値の計算には畳み込み積分が必要である.従って,同期箇所あるいは並列実行可能なタスクの数が多い場合には,高次元の多重積分が必要になり,従来の方法では多数タスクからなるシステムを取り扱うことが困難であった.そこで本研究では,経営工学分野で近年注目されている,クリティカル・チェーン・プロジェクト・マネジメント法(CCPM法)の概念を,Dioid代数系の状態空間表現に適用して,多重積分を用いずにロバストなスケジューリングを行う方法を検討した.これにより,タスク数が数百~数千程度のシステムも取り扱えるようになった.また,タスクの実行時間が変更された場合に再スケジューリングを軽量に行う方法を考案した.ノード数がn,アーク数がmのグラフで表されるシステムを扱う場合,従来法では,最も効率の良い方法でもO(n*(n+m))の時間計算量が必要であった.この方法では,全ノードペアの最長経路長を表す行列を計算し,さらに現在のタスクの状態を表す状態ベクトルとの積を計算している.本年度の検討では,最長経路長の行列を計算せずに直接状態ベクトルを計算する方法を考案し,初期スケジューリングの場合にO(n*n),再スケジューリング時にはO(m)まで時間計算量を削減することに成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度当初の到達目標と比較すると,研究ボリューム全体としてはおおむね予定どおりの進展である.ただし個別のテーマ毎でみた場合,当初計画通り検討できた項目,平成24年度以降での予定を一部前倒しで実施できた項目,逆に平成23年度で実施の予定が後ろ倒しになったものなどがある.計画通り検討できた項目は,主にCCPM法のDioid代数系への適用であり,連携研究者とも積極的に連携しながら検討を進めた結果,当初予想していなかった簡素な定式化の方法を発見するなど,当初見込み以上の成果を挙げることができた.また,高い計算性能を有するワークステーションを,本研究費によって導入した.当初予定では,計算機環境の整備と試験的なコードの実行・実験程度を予定していたが,年度途中で軽量なアルゴリズムを考案するに至ったため,理論面・実装面の両面での検討も前倒しで行うことにした.一方,制御工学分野の関連研究のサーベイと本研究への適用可能性の検討については,着手することができなかった.以上のように,予定通り実施できた項目,前倒しで実施した項目,未着手の項目などが混在しているが,検討内容および研究成果のボリュームという観点では,おおむね予定通りの進展と考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
システムパラメータに確率的変動を伴う場合の軽量なスケジューリング方法について,理論面および実装面の両面から,より詳細な検討に入る.プログラムのチューニングや並列化などの工夫だけでは,高速化に限界があることが容易に予想されるため,計算量理論の意味での計算量削減を考えることが必要であろう.例えば,パラメータの確率的変動に関して,その変動範囲を限定したりして解の探索空間を減らすことなどが考えられる.また,当初の計画では構成した最適化問題の厳密解を求めることを前提としていたが,必ずしも厳密解に固執せず,ヒューリスティックな手法を用いて近似的な最適解を求める方法も一考の余地がある.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度中は,文献収集や関連学会・国際会議に参加しての関連研究の情報収集を主に行う予定であった.しかし上記11.でも触れたように,制御工学分野の関連研究のサーベイを平成24年度以降に実施することにしたため,おおよそ国際会議参加費用1回分の研究費を繰り越すこととした.これ以外の物品費,旅費,人件費・謝金,その他の使用予定額に関しては,現時点では当初計画から大きな変更はない.
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