2012 Fiscal Year Research-status Report
多モード切り替え型ハイブリッドシステムのオンラインスケジューリング方法
Project/Area Number |
23510163
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
五島 洋行 法政大学, 理工学部, 准教授 (00398950)
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Keywords | スケジューリング / max-plus代数 / 状態空間表現 / モデル予測制御 / CCPM |
Research Abstract |
今年度の主な研究成果は,1.Max-plus代数系における軽量なモデル予測制御器の開発,2.クリティカルチェーン・プロジェクト・マネジメント(CCPM)法の枠組みをmax-plus代数系で表現する時の表現形式の簡素化,の二点に集約される. 一般にモデル予測制御は,数ステップ先までの出力予測を行い,参照信号と出力との差を小さくするように制御入力を決定する.この時,予測ホライズンを大きく取るほど外乱に対して頑健になる反面,制御入力を決定する最適化問題を解くための計算負荷が高くなる.本研究では,制御入力に加えてシステムパラメータも可調整である場合を扱う必要があり,軽量な制御器の開発はオンラインでの運用に不可欠である. 本年度は,出力予測式をシステムパラメータの関数として扱うための,計算機上での内部表現方法を考案し,分枝限定法的な枝刈り演算によって冗長な制約条件式を除去し,軽量に最適解を求める方法を考案した.その結果,従来法と比較して予測ホライズンを2倍程度大きく取れるようになった. さらに上記2.では,システムパラメータの値の不確実性が大きい場合に頑健なスケジューリングが行えるCCPM法の枠組みをmax-plus代数系で表現する際の,表現形式の簡素化に取り組んだ.頑健性実現のために途中工程数か所に時間バッファを挿入するが,従来法ではバッファの大きさと挿入位置の計算が煩雑であり,特殊な演算や一時的な作業用行列とベクトルの計算を必要としていた. 本年度の検討の結果,値がゼロかどうかを判定する比較演算の他はすべてmax-plus代数系での標準的な演算系のみを用いて,適切な大きさの時間バッファを適切な位置に挿入できる方法を考案した.これにより計算時間が短縮されただけでなく,アルゴリズムの実装も簡素で容易になった.また,多入力多出力系のシステムも扱えるようになったことも大きな進展の一つである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全体的な成果ボリュームという観点では,おおむね当初計画どおりの進展である.ただし個別・詳細の検討テーマ毎に見た場合には,テーマの入れ替えが一部発生した. まず当初計画通り実施できた項目は,上記研究実績の概要で述べた二項目であり,軽量なモデル予測制御器の実装と,CCPM法の枠組みをmax-plus代数系の簡素な方程式系で記述することに成功した. 今年度の検討過程において,新たに検討・検証が必要となった項目の一つに,モデル予測制御器に使われる最適化問題の計算量・計算時間の事前見積りがある.頑健なスケジュールが計算できる制御器でも,最適解がオンラインで運用可能な時間スケールで求められなければ実運用に耐えない.本研究では複数モードの切り替えを伴う制御器の設計を目指しているため,最悪計算量の事前見積りや計算時間の保証ができることが重要である.この点の検討は現在も進行中であり,翌年度も引き続き検討する. 逆に検討が不要となった項目の一つに,複数モードの切り替えを行う際の,切り替え基準や切り替えパターンの整理がある.これは,状態空間表現に現れる入力ベクトルや遷移行列に切り替え変数を組み込むことで実現できるが,その統一的な枠組みがSMPL (Switching max-plus-linear)システムという呼称で,2012年秋に欧州の研究者らによって発表された.この枠組みは本研究が目指していた内容と重複する点も多く,本研究でで活用できる部分は最大限活用して,ハイブリッド系への適用を行うにあたって必要な修正や拡張を行う検討に注力することにする. 以上のことから,全体のボリュームの2/3程度が予定どおり,1/3程度は新規に検討が必要になった項目,逆に1/3程度は検討不要になった項目であるといえ,全体としておおむね順調に進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
残りの研究期間2年間では主に,1.軽量なモデル予測制御器をより広いクラスに適用可能なように拡張・改良,2.予測制御器の最悪計算量または計算時間の見積もり,3.予測制御器の最適化問題構成方法の見直し,4.max-plus代数系で表現するCCPM法のクラスの計算の複雑さの検証,などの検討を予定している. 上記1.では,内部バッファを考慮したむだ時間系のシステムに適用できる拡張を行い,より広いクラスの実システムに応用できるようにする.2.は上記の達成度評価で述べたとおりである.3.は,現在の予測制御器は,計算時間短縮のために最適化問題を二段階に分割して解いており,システムパラメータの調整と制御入力の決定が別々に行われる.これは一種の貪欲法的な考え方であり,全体的な最適性が保証されない.このため,問題を分割せずに一段階で解く枠組みも検討し,解の性能と計算時間との関係を明らかにしておくことが必要と考える.4.については,CCPM法における時間バッファの挿入方法はシステムの先行制約関係やパラメータの値の範囲によって,問題の複雑さが大きく変化することが,経験的には分かっているが,理論的な関係はこれまでほとんど明らかになっていない.このため,2.と同様に問題の複雑さの程度を明らかにし,計算時間を事前に見積もれるようにする.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度中に予定していた国際会議での研究成果発表を,平成25年度はじめに実施することにした関係で,必要な旅費と参加費の繰り越しを行った.このため,繰越分を含めた平成25年度全体の支出は,旅費の占めるウェートが相対的に高くなる. それ以外の物品費,人件費・謝金,その他の使用予定額に関しては,当初計画からの大きな変更は予定していない.
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