2011 Fiscal Year Research-status Report
コーディネーション・ゲームを用いた効果的な住宅耐震化支援制度の構築と有効性の検証
Project/Area Number |
23510208
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Research Institution | Fuji Tokoha University |
Principal Investigator |
池田 浩敬 富士常葉大学, 環境学研究科, 教授 (80340131)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 防災 / 住宅 / 耐震補強 / ゲームの理論 / 同調行動 / 補助制度 |
Research Abstract |
本研究においては、1)ゲームの理論における「コーディネーション・ゲーム」のモデルを用い、耐震化を要する住宅所有者が地域において同調した行動をとることにより利得を得ることができる、といった住宅耐震化の普及・促進に関し効果的な支援制度に関する複数の代替案を構築し提案する。2)当該代替案ごとの同調効果について、実際に東海地震の発生が想定されている静岡県をケーススタディの対象地域として、耐震化を要する住宅所有者に対する調査票調査に基づき評価し、最も効果的な制度案を選定する。3)選定された制度案について、グループ・インタビューに基づき、その有効性(耐震化行動促進効果等)を検証する。4)同制度案について、耐震化を要する住宅所有者に対する調査票調査に基づき、その制度利用意向を把握する。5)同制度案について、その実施主体となる地方公共団体(静岡県及び県内市町)に対するヒアリング調査に基づき、当該制度の実現可能性についての検証を行う。 このうち平成23年度は、上記1)、2)を実施した。具体的には、地域での取り組みにより地区内でまとまった数の耐震補強の補助申請がなされた場合に補助の割り増しを行うといった同調行動により利得が得られるような支援制度の代替案について、対象となる地区の範囲や割り増しを行う際の最低件数、割増額などの要素を変えた代替案を複数設定した。次に、当該代替案に基づき、静岡県三島市の協力を得て、昭和56年以前に建てられた一戸建ての木造住宅居住世帯のうち、我が家の専門家診断実施世帯800、その他の昭和56年以前に建てられた一戸建ての木造住宅居住世帯800、の計1,600世帯に対する調査票調査を行い、それぞれ、375票、346票の回答を得、当該結果の入力・集計・分析を行った。当該分析結果から、最も同調効果の大きい案を選定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究においては、1)ゲームの理論における「コーディネーション・ゲーム」のモデルを用い、耐震化を要する住宅所有者が地域において同調した行動をとることにより利得を得ることができる、といった住宅耐震化の普及・促進に関し効果的な支援制度に関する複数の代替案を構築し提案する。2)当該代替案ごとの同調効果について、実際に東海地震の発生が想定されている静岡県をケーススタディの対象地域として、耐震化を要する住宅所有者に対する調査票調査に基づき評価し、最も効果的な制度案を選定する。3)選定された制度案について、グループ・インタビューに基づき、その有効性(耐震化行動促進効果等)を検証する。4)同制度案について、耐震化を要する住宅所有者に対する調査票調査に基づき、その制度利用意向を把握する。5)同制度案について、その実施主体となる地方公共団体(静岡県及び県内市町)に対するヒアリング調査に基づき、当該制度の実現可能性についての検証を行う。 このうち平成23年度には、研究計画の記述の通り、1)、2)を概ね終了することが出来た。1)については、研究計画では、代替案の設定の前提として、既存の支援制度の把握を、自治体へのヒアリング調査に基づき行う計画であったが、既存制度に関する情報が、自治体がWeb上等で公表している資料により把握可能であったため、方法を文献調査に切り替え実施したが、所定の成果が得られた。 一方、2)については、調査票調査の対象とした三島市へのヒアリング調査に基づき、分析に必要な回答数を確保するために、調査票の配布数を研究計画で記述した1,500票からさらに増やし、計1,600票とした。結果として、回収率は40%を上回り、分析に必要な回答数を得ることが出来たため、有効な成果を導き出すことが出来、概ね順調に進んでいると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も当初の研究計画通り、以下の項目を実施する。1) 平成23年度において選定された制度案について、耐震化を要する住宅所有者に対するグループ・インタビューに基づき、耐震化行動促進効果等検証する。具体的には、三島市に居住し、昭和56年以前に建てられた旧耐震基準の一戸建ての木造住宅に居住している住宅所有者を対象とした4~5名程度のグループ・インタビューを5回程度実施し、当該制度による耐震化行動促進効果や、当該制度の利用可能性、利用上の障害・課題等を明らかにし、当該制度の有効性を検証するとともに、必要に応じ、制度の詳細条件の再検討及び改善を行う。2) 1)において、効果の検証、詳細条件の見直しを行った制度案について、耐震化を要する住宅所有者に対する調査票調査に基づき、その制度利用意向を把握する。具体的には、三島市に居住し、昭和56年以前に建てられた旧耐震基準の一戸建ての木造住宅に居住している住宅所有者を対象とした調査票調査(郵送配布・郵送回収、配布数1,500票)を実施し、制度利用意向を把握し、当該制度の市場規模を予測する。3) 2)において利用意向把握を行った制度案について、上記1)、2)の調査結果を踏まえ、その実施主体となる地方公共団体(静岡県及び県内市町)に対するヒアリング調査に基づき、当該制度の実現可能性についての検証を行う。具体的には、三島市に加え、人口規模から見たその他、県内の主要な市(静岡市、浜松市、焼津市、沼津市)の民間住宅の耐震化支援の担当部署である建築指導課等の部署に対しヒアリング調査を行い、当該制度案の実現可能性、実施上の障害・課題等を明らかにし、当該制度の実現可能性について検証を行うとともに、必要に応じ、制度の詳細条件の再検討及び改善を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度において、研究計画では、代替案の設定の前提として、既存の支援制度の把握を、自治体へのヒアリング調査に基づき行う計画であったが、既存制度に関する情報が、自治体がWeb上等で公表している資料により把握可能であったため、方法を文献調査に切り替え実施したが、所定の成果が得られた。一方、調査票調査の配布数は、分析に必要な回答数を確保するために、当初の研究計画より100票増やし調査を実施した。これら増減分の差し引き、17,983円が「次年度使用額」となった。このため、平成24年度においては、当初予定していた、1)グループ・インタビューの記録のためのICレコーダー1台及びビデオカメラ(1台)、三脚1個の購入、2)グループ・インタビュー調査結果データの保存等に必要なUSBメモリの購入、3グループ・インタビュー調査のテープ起こし作業に必要な学生アルバイト900円/時×6時間×4人×6日×5回=648千円、の使用に加え、平成25年度に予定していた県内自治体に対するヒアリング調査を前倒しで開始するとともに、当初の研究計画に記述の無かった富士市、富士宮市などを新たにヒアリング先に加えることとする。
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