2012 Fiscal Year Research-status Report
プロテオーム解析で見出した抗癌剤耐性関連蛋白質の構造機能相関の解明とその応用
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23510267
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Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
境 晶子 大阪医科大学, 医学部, 講師 (30225750)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 覚 大阪医科大学, 医学部, 助教 (50595741)
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Keywords | 抗癌剤耐性 / 翻訳後修飾 / リン酸化 / オリゴマー構造 / HSPB1 |
Research Abstract |
抗癌剤5-fluorouracil (5-FU)に対する耐性を獲得した DLD-1細胞株において,発現が増加するタンパク質の一つにHSPB1を同定した。HSPB1はモノマー・ダイマーから500 kDa以上の高分子オリゴマー構造をとること,そのオリゴマー化の調節にリン酸化が関与していることが報告されているが,その詳細は不明である。耐性獲得との関連を明らかにするために実験を行った。 1.抗癌剤paclitaxel (Pac) 耐性株におけるプロテオーム解析~5-FU耐性によって発現の増加したHSPB1であるが,これが抗癌剤に特有のものなのか,もしくは耐性獲得に一般的な事象なのかを調べるために,他の抗癌剤によるプロテオーム解析を行った。すなわち,乳癌細胞MCF-7とそのPac耐性株MCF-7/Pacを用いて,等電点二次元電気泳動法によるタンパク質の発現比較と質量分析による同定を行った。用いた耐性株はPacに対して耐性を示したが,5-FUに対して交叉耐性は示さなかった。MCF-7細胞は元々HSPB1の発現量が顕著に多く,Pac耐性株では逆に発現が低下していた。HSPB1のsiRNAでノックダウンしても耐性能にはあまり影響しなかった。 2.HSPB1の翻訳後修飾とオリゴマー構造~オリゴマー構造を維持したまま泳動できるBlue-Native-PAGEとWestern blot法を用いて解析した結果,オリゴマー形成にはリン酸化が必須であること,どの部位がリン酸化されるかで高分子オリゴマーの解離しやすさが変わることがわかった。さらにMCF-7細胞におけるHSPB1のリン酸化状態を詳しく解析したところ,DLD-1細胞とは異なるリン酸化が観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の最終目的は次の二つである。 1. HSPB1が抗癌剤耐性獲得の機構においてどのような役割を果たしているかを,翻訳後修飾・オリゴマー構造・他のタンパク質との相互作用を解析することで明らかにする。 2. これが耐性獲得マーカーとしての有用であるかを確認する。 前者については,リン酸化状態とオリゴマー構造についての知見は得られた。しかし,免疫沈降法によってHSPB1と相互作用するタンパク質の同定については,用いる抗体の選定などに手間取ったこともあり予定よりやや遅れている。後者は,解析の手法は確立したが判定に十分な数の患者血清がまだ集まらないので,収集を続行している。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度の計画は以下のとおりである。 1.免疫沈降法を用いてHSPB1と相互作用するタンパク質を同定する。免疫沈降は相互作用した高分子タンパク質を効率よく沈降できるDynabeadsの系を用い,抗体はHSPB1モノマーを認識する抗体と,リン酸化された高分子オリゴマーを認識する抗体を用いる。これら抗体の検定は,リン酸化状態を解析できるPhos-tag-PAGE/Western blot法を用いて既に行っている。相互作用するタンパク質の同定は,MALDI-TOFとLC-MSによって行う予定である。これを5-FU耐性とPac耐性について行い比較する。さらに,同定したタンパク質の抗体を用いて,Blue Native-PAGEもしくはPhos-tag-PAGEのWestern blotを行い,どのタンパク質がどのようなHSPB1モノマー/オリゴマーと相互作用しているかを明らかにする。 2.耐性マーカーに関しては,患者血清の数が集まり次第,分析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費は上記研究を行ううえで必要となる消耗品に充てる予定である。 また,次年度使用額の7,577円は,次年度必要となる試薬類を購入する費用に充てるために繰り越した。
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