2011 Fiscal Year Research-status Report
性同一性障害当事者に対する社会の対応 ~その現状と当事者と考える支援策~
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23510358
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Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
関 明穂 川崎医科大学, 医学部, 講師 (20314685)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中塚 幹也 岡山大学, 保健学研究科, 教授 (40273990)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 性同一性障害 / セクシュアルマイノリティ / 当事者支援 / 自助支援グループ |
Research Abstract |
性同一性障害の当事者が学校、職場、医療の場で直面している問題について、当事者本人から半構造化面接法により聞き取り調査を行った。その結果、施設側からの対応の中で、当事者が困難を感じることの多い状況をリストアップすることができた。また、施設側からどのような対応がなされるかには、施設側の意識、当事者側の性別移行状況に加えて、当事者が施設側に対してどのように自己開示し、対応を依頼するかが重要な因子になっていることが明らかとなった。そして、その際の交渉では精神科医をはじめとした医療職からの助言が有用であるものと考えられた。と同時に、性同一性障害当事者による自助支援グループも、当事者の抱える問題や悩みの受け皿として、また、問題解決に向けての種々の情報が蓄積、活用されることを通して、重要な役割を果たしていることが確認された。しかし、これまで性同一性障害に関してどれだけの数の自助支援グループがどの地域で活動しているかさえ把握されていなかったため、全国の自助支援グループの活動状況についての調査を行った。その結果、全国各地で40弱のグループが活動を行っていることを明らかにした。また、岡山大学病院ジェンダークリニック受診者と家族の会が自助支援グループの紹介冊子を作成する計画であったため、これに情報を提供することによって「GID/トランス全国交流誌2012」発行に協力した。また、医療施設における性同一性障害当事者への対応例として、岡山大学病院ジェンダークリニックでの対応について調査した。当事者からの聞き取り調査をもとにリストアップした医療の場で困難を感じることの多い状況にほぼ対応した内容であることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画の時点では、当事者が学校、職場、医療の場で直面している問題に関して、主として質問紙調査により把握する予定としていた。しかし、事前調査として当事者を対象とした面接調査を実施する中で、それぞれの問題には当事者側、施設側双方の意識や状況などの個別の事情が深く関係していることが明らかとなり、質問紙調査を行うのではなく、面接調査を継続して、それぞれの事例について細かく聞き取っていくことが望ましいと判断した。質問紙調査に比べて面接調査では必要とする調査時間が長くなり、調査人数を十分確保することも難しくなる。このため、本年度は当事者を対象とした調査を行ったにとどまり、当事者への調査をもとに実施する予定であった施設対象の調査を次年度に持ち越すことになった。この点では当初の計画よりも遅れている。一方、当初の計画には含めていなかった性同一性障害に係る自助支援グループの調査を本年度実施した。自助支援グループは当事者の抱える種々の問題の解消に向けて、当事者の支えになりうる存在であると考えられる。当初予定していた支援策マニュアル作成に加えて、自助支援グループに関する情報を提供することができれば、性同一性障害当事者の抱える問題の解消に向けて、より意義が大きいものと期待でき、これについては当初の予定に加えて、さらに成果を得ることができたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの達成度の項に記したように、当初予定していた性同一性障害当事者に対する質問紙調査を、当事者に対する面接調査に変更した。このため、本年度は当事者を対象とした面接調査を行ったにとどまり、当事者への調査をもとに実施する予定であった施設対象の質問紙調査を次年度に持ち越すことになった。これに伴って、質問紙調査を行うために計上していた研究費を本年度は使用しなかったが、次年度に持ち越すこととなった施設対象の質問紙調査で使用する予定としている。なお、この調査の準備はすでに整っているため、当初の研究計画よりも若干遅れているものの、次年度の研究は支障なく実施できるものと考えられ、次年度分の予算は当初計画どおりの研究のために使用する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度から繰り越すことになった施設対象の質問紙調査を、次年度前半に実施する。これについては、本年度予算から繰り越す研究費を充てる。また、当事者を対象とした面接調査を、本年度に引き続き実施し、調査事例数の追加を図る。次年度半ばを目途に上記調査をまとめ、その結果をもとに当初計画していたとおり、岡山大学病院受診者と家族の会の有志の方とともに、学校、職場、医療の場でどのような対応が望まれるかを検討し、施設でとりうる対応策マニュアルの作成を行う。これについては、次年度予算として計上していた研究費を充てる。また、本年度の研究を通じて、性同一性障害当事者自身による自助支援グループが重要な役割を果たす可能が示唆された。そこで、当初の計画に加えて、自助支援グループの現状と機能についての調査を、主に岡山大学病院の受診者の会の方からの聞き取り調査によって実施する予定である。なお、対応策マニュアル作成で受診者の会の方との共同作業を予定しているため、これについての研究費の追加は必要としない。
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Research Products
(1 results)