2011 Fiscal Year Research-status Report
和辻哲郎による日本倫理思想史および日本文化史研究の総合的再検討
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23520004
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
木村 純二 弘前大学, 人文学部, 教授 (00345240)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 和辻哲郎 / 日本倫理思想史 / 日本文化史 / 倫理学 / 思想史 |
Research Abstract |
研究初年度である本年度は、研究に取り組む基礎作業として、補助金を活用して、現在入手困難な和辻哲郎の著書『古寺巡礼』の初版本および雑誌初出論文等を入手し、研究代表者および連携研究者・研究協力者の間で共有することとした。これにより、最終形態を収録した現行の全集版のみに拠ることなく、和辻の思考の変遷をたどるという本研究の新たな試みをメンバー間で共有できることになった。また、同じく基礎作業として、補助金を活用し、和辻の主著『日本倫理思想史』の人名および書名索引を作成した。これにより、文庫4冊分に相当する大著を横断的に分析することが可能となった。 研究組織全体の研究内容においては、平成23年9月および24年3月に行われた研究報告会を通じて、メンバー全員に問題意識を浸透させることができ、また各自の研究においても、和辻の日本倫理思想史研究を再考する新たな論点が形成されつつある。特に『古寺巡礼』初版および初出論文における和辻の思考の展開が一つの焦点として問題視されている。 研究代表者個人の研究にあっては、以前から進めていた岩波文庫版の和辻哲郎『日本倫理思想史』全4巻の本文校訂および註・解説の執筆を終え、校正等の作業を経て、平成23年4・6・8月および24年2月に全巻の刊行を果たすことができた。また平成23年10月に開催された東北哲学会において、「和辻哲郎における「恋愛」概念の葛藤について」という題目で発表をし、学会による審査の結果採択されて、『東北哲学会年報』第28号に論文として掲載されることになった。さらに、平成24年3月には、法政大学国際日本学研究所主催のシンポジウム「日本を意識する時」において、「和辻哲郎の日本意識―国民道徳論との関連から―」という題目で発表をした。このように、研究初年度から充実した成果を収めることができたと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、研究初年度である平成23年度中に研究成果の発表をする予定ではなかったが、いくつかの構想をまとめることができたので、平成23年10月に東北哲学会において「和辻哲郎における「恋愛」概念の葛藤について」という題目で発表をし、学会による審査の結果採択され、『東北哲学会年報』第28号に論文として掲載されることになった。また、平成24年3月には、法政大学国際日本学研究所主催のシンポジウム「日本を意識する時」において、「和辻哲郎の日本意識―国民道徳論との関連から―」という題目で発表をした。このように研究初年度から、2本の学会発表と1本の学会論文を成果として発表できた点において、「当初の計画以上に進展している」と評価することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者・連携研究者・研究協力者が問題意識を共有しつつそれぞれの専門領域の研究に携わるという本研究の特性を活かし、初年度同様、今後も各自の研究と定期開催される研究報告会とを有機的に活用しながら研究を深めてゆく考えである。具体的には『古寺巡礼』前後の和辻の思想転換期に議論が集中しつつあるので、その点を一つの軸にしつつ、各自がみずからの専門領域に応じて研究を深めてゆくこととしたい。また、研究代表者を中心に、積極的に論文等の研究成果を発表してゆく予定であるが、最終年度には、研究全体の成果をまとまったかたちで発表できるよう、何らかの場を手配してゆきたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
まずは、入手困難のため研究初年度に手配の間に合わなかった和辻哲郎『日本古代文化』初版本およびその他の初出論文について、研究組織間で共有するために、複写費を20万円配分する予定である。 また、初年度の研究で議論された『古寺巡礼』での和辻の思想的転換について、特に浄瑠璃寺探訪の箇所が問題となったため、浄瑠璃寺を中心に大和地方を調査したいと考えている。年度内に2回予定している研究報告会の経費と合わせて、旅費を70万円配分する。ただし、研究初年度の平成24年3月に開催された研究報告会において、地方大学に勤務する研究協力者の旅費として配分する予定であった経費約9万円が、スケジュールの都合上参加できなくなったため研究二年度に繰り越されているので、その額を含むものとする。 その他、和辻哲郎関連図書・日本思想史関連図書・日本文化史関連図書の購入費として、約40万円を配分する。
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