2011 Fiscal Year Research-status Report
「原因」「因果」概念との比較に基づく「おのずから」概念の研究
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23520017
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
遠山 敦 三重大学, 人文学部, 教授 (70212066)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 眞里子 三重大学, 人文学部, 教授 (00185513)
片倉 望 三重大学, 人文学部, 教授 (70194769)
秋元 ひろと 三重大学, 教育学部, 教授 (80242923)
久間 泰賢 三重大学, 人文学部, 准教授 (60324498)
田中 綾乃 三重大学, 人文学部, 准教授 (70528760)
藤田 伸也 三重大学, 人文学部, 教授 (20283509)
森脇 由美子 三重大学, 人文学部, 教授 (10314105)
斉藤 明 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (80170489)
桑原 直巳 筑波大学, 人文社会科学研究科(系), 教授 (20178156)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | おのずから / 原因 / 因果 |
Research Abstract |
本研究は、日本の哲学的思惟の基層をなす「おのずから」概念の特質を、東西諸思想における「原因」「因果」概念との対比を通して明らかにすることを目的とする。「おのずから」概念の重要性については、すでに先行研究において注目されてきたが、それらは、「おのずから」を日本思想に限定された特殊概念として捉え、広く諸思想との対比からその姿を明確にしたものとなっていない。これに対し本研究は、「原因」「因果」という観点から「おのずから」概念に注目し、東西諸思想における「原因」「因果」概念の検討を通じ、それとの対比から、「おのずから」概念を一般的な哲学的概念として位置づけ、その特質の明確化を図ろうとするものである。今年度は、生成論における「おのずから」概念の特質を、東西諸思想の「原因」「因果」概念把握との対照から検討した。具体的には、月1回をめどに定例研究会を開催するとともに、9月には三重大学において共同研究会を開催し、問題点の所在を確認した。その中で特に注目されたのが、「おのずから」的思惟と超越との関係である。因果性には(1)自然科学的因果性と(2)倫理的責任の因果性とを区別することができるが、例えば(2)について見れば、日本近世初頭に来日したキリシタンにとって、伝道の障害と考えられたのがキリスト教的な自由意志の概念が「おのずから」概念との間に生みだす軋轢であった。もとより東洋にも仏教の因果応報説や儒教的な天命観があるが、そうした諸思想においても、世界生成の理解を「神」や「天」といった超越的なものとの関わりでどのように捉えるかが、個人の倫理的主体性の問題と分かちがたく結びついている。世界を「おのずから」なる生成と捉える思惟が、それらとどのように関わるのか、それはまた(1)について見れば、病因論における自然発生説の否定といった自然科学的認識の発展の問題とも分かちがたく結びつく問題であることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
定例研究会及び9月に三重大学で実施した共同研究会において、「原因」「因果」概念について、代表者及び分担者それぞれの専門領域の立場から発表が行われ、問題点の所在についての確認と理解の深化が行われたとともに、3月にはその中間的なまとめを発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き三重大学に所属する研究者を中心に定例研究会を開催するとともに、夏期には東京大学において、研究メンバー全員による研究会を開催し、次の中心的課題となる時間論(歴史意識)に関わる「因果」概念について、問題点の所在を確認し、中間的な成果の発表を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
23年度はほぼ順調に計画が遂行されたが、18円の未使用研究費が出た。少額であるためいずれの費目においても使用することができず、次年度の繰り越しとなった。繰り越しが少額であるため、24年度も当初計画通り、必要な研究資料の購入・複写等を行うとともに、旅費を使用し研究メンバー全員による研究打合せを実施する。
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Research Products
(9 results)