2013 Fiscal Year Annual Research Report
「原因」「因果」概念との比較に基づく「おのずから」概念の研究
Project/Area Number |
23520017
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
遠山 敦 三重大学, 人文学部, 教授 (70212066)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 眞里子 三重大学, 人文学部, 特任教授(教育担当) (00185513)
片倉 望 三重大学, 人文学部, 教授 (70194769)
秋元 ひろと 三重大学, 教育学部, 教授 (80242923)
久間 泰賢 三重大学, 人文学部, 准教授 (60324498)
田中 綾乃 三重大学, 人文学部, 准教授 (70528760)
藤田 伸也 三重大学, 人文学部, 教授 (20283509)
森脇 由美子 三重大学, 人文学部, 教授 (10314105)
斉藤 明 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (80170489)
桑原 直巳 筑波大学, 人文社会科学研究科(系), 教授 (20178156)
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Keywords | おのずから / 原因 / 因果 |
Research Abstract |
研究最終年度にあたる平成25年度は、前年度までに行われた東西諸思想における「原因」「因果」観念の特色把握を総合し、「おのずから」概念の立体的な把握を行うべく努めた。研究分担者からは、新たに以下の知見が報告された。すなわち、西洋思想の文脈では、伝統的なアリストテレス的因果理解に対するベーコン、ホッブスの知識論における「原因」「結果」理解の特質が報告されるとともに、一方東洋思想の文脈からは、古代インドのヴァイシェーシカ学派における業と因果の関係とともに、それらと解脱との特殊な関係が仏教的因果理解との相同性の観点から報告された。これらをも踏まえ、さらにこれまでの研究で明らかとなった「おのずから」と人の現実的な意志的行為やそれを可能とする「自由」との関係、あるいは「自然」のもつ超越性との関係の孕む問題性を視野に入れながら、研究代表者から『愚管抄』を手がかりとした研究報告が行われた。『愚管抄』において歴史の流れは普遍的な「法爾自然」(「世の移りゆく道理」、具体的には「劫初劫末の時運」という下降史観)に支配されているが、一方『愚管抄』には、具体的な政治形態は皇統の持続という「因果の道理」に基づきその都度作り変えられてゆくとする理解がある。ここに、人の意志的行為や、超越的な「冥衆」の働きかけを介在した、「因果」との、ある意味で矛盾・対立を含んだ「おのずから」(「自然」)理解の特質を見ることができる。これまで生成論の文脈で示された「おのずから」、すなわち人為を超え、人がその運動に寄り添うべきものとされた「おのずから」概念との比較を行うことで、考察すべき方向がさらに明示的に示された。
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