2012 Fiscal Year Research-status Report
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23520027
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Research Institution | Nagano College of Nursing |
Principal Investigator |
屋良 朝彦 長野県看護大学, 看護学部, 准教授 (90457903)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藏田 伸雄 北海道大学, 文学研究科, 教授 (50303714)
金光 秀和 金沢工業大学, 基礎教育部, 准教授 (50398989)
本田 康二郎 金沢医科大学, 一般教育機構, 講師 (40410302)
増渕 隆史 北海道大学, 文学研究科, 助教 (60528248)
松浦 正浩 東京大学, 公共政策大学院, 特任准教授 (70456101)
大北 全俊 大阪大学, 文学研究科, 助教 (70437325)
松本 大理 山形大学, 教育文化学部, 講師 (20634231)
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Keywords | 合意形成 / 不確実性 / リスク / コンフリクト・レゾリューション / 応用倫理 / 医療倫理 / 科学技術倫理 / 意思決定 |
Research Abstract |
本研究の目的は、コンフリクト・レゾリューションやコンセンサス・ビルディングなどのコミュニケーション技法を習得し、それを各種の応用倫理学の分野(医療倫理、科学技術倫理、工学倫理、ビジネスエシックス、道徳教育)等への適用可能性を明らかにすることである。 まず、平成24年9月22日(土)桜美林大学淵野辺キャンパスにおいて、第3回合意形成研究会を行った。その際、はばたき福祉事業団の岩野友里理事に「薬害エイズ事件の実態と現状」という題で特別講演をしていただいた。次に、研究代表者屋良が「確率論と合意形成」という題で確率論的リスク論を批判し、研究分担者松浦が「「中立な」ファシリテーターは ほんとうに可能か? 」という題で合意形成論の自己批判を展開し、金光は「技術の現象学・序説」という題で現象学的工学倫理の可能性を追求し、本田が「リスク告知と科学者のエートス」という題で科学技術政策における科学者の倫理について論じ、増渕は「ステイクホルダー・エンゲイジメントとその問題点」、大北は「HIV感染症対策の転換?」、松本は「ボローニャ・プロセスと学生参加」という題でそれぞれ研究発表を行った。 次に、平成25年3月1日(金)に金沢工業大学で第4回合意形成研究会を行った。まず、桜美林大学坂井教授に特別講演「市民義務と徳」で、市民の道徳教育の可能性について論じてもらった。次に、屋良が英語で「予防原則」に関するメリットとデメリットの考察を行った。次に、金光がリスクを伴う技術に関する「責任あるデザイン(設計)」について論じた。本田は「研究の自由か統制か」で国家による科学技術のあり方について論じ、増渕はビジネスエシックスにおける合意形成の失敗、松本はカント解釈における合意形成の可能性について論じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の最終目的は、応用倫理学の各領域(医療倫理、科学技術倫理、ビジネスエシックス、道徳教育等)に、FisherやSusskind、Mooreらのコンフリクト・レゾリューションや合意形成といったコミュニケーションの方法論を組み込む可能性を検証することである。特に、不確実なリスクへの対策に関して合意形成は困難となるが、その問題に対してコンフリクト・レゾリューションがどの程度有効であるかを検証することである。 しかしながら、このような研究テーマは独創的かつ現在最先端のものであり、したがって、研究分担者の中には、このようなテーマが初めてである者もいた(勿論、それぞれの専門分野では十分な専門家であるが)。そのため、初年度は上記のコミュニケーションの方法論を習得することに力点を置いた。また、各分野において「不確実性」や「コミュニケーション」の問題がどのように関わってくるかに関する研究を行っていただいた。そのおかげで、2年目である平成24年度から、応用倫理学の各分野において「不確実性」や「コミュニケーション」の問題に関する本質を突く研究が多く出てきた。それによって、コミュニケーションの方法論の必要性が十分に確かめられるにいたった。 具体的には、研究代表者の屋良は、科学技術政策において、従来の確率論的リスク論では不十分であり、市民による合意形成の方法論で補う必要性を示した。金光は「責任あるデザイン」という工学倫理の概念から、人間に定位した設計を主張した。本田は政府の科学技術政策の在り方を歴史的に検証し、民主的な政策決定の必要性を示した。増渕はビジネスエシックスにおける合意形成の失敗をテーマとし、松本はカント倫理学における合意形成の可能性を追求した。他方で、松浦は合意形成論などの方法論自体がはらむリスクを指摘し、その倫理学的可能性と限界を問いただす必要性を主張した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)「不確実性に対する合意形成」という問題設定と、各コミュニケーション技法の適用:本年度が最終年度である。本年度も前年度と同様、夏と春に2回の研究会を開催する。そこにおいて、応用倫理学の各分野におけるにおける「不確実性に対する合意形成」という問題を最終的に明確化し、コンフリクト・レゾリューションや合意形成といったコミュニケーションの方法論を具体的にどのように適用できるかを探究していく。 (2) 「不確実性に対する合意形成」のためのカリキュラムの作成:これまでの研究成果をもとに、応用倫理学各領域における「不確実性に対する合意形成」を大学等の教育現場で活用するためのカリキュラムを作成する。そのために実際に模擬メディエーションなどを行う。模擬メディエーションはデジタルビデオで撮影する。その後、これまでの研究をPDFソフトやマルチメディア編集ソフトを用いて編集し、「不確実性に対する合意形成」のカリキュラムを完成させる。カリキュラムは①コンフリクト・レゾリューションの理論的研究、②応用倫理学諸分野への適用、③模擬授業の実践と分析の3章から成る。 (3)研究成果の公表:以上の研究が完了した後、研究成果を公表する。研究成果は、教育カリキュラムに関してはインターネット上でホームページを開設し、電子図書(動画組込PDFファイル)にして公開する。また、以上の研究成果を文書化し、平成26年度の科学研究費補助金研究成果公開促進費(学術図書)に応募し、学術図書(『不確実性に対する合意形成』(仮題))として出版する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度および最終年度に使用予定の研究費の使途は下記の通り。 (1)各年度ごとに2回づつ研究会を行うが、それに招聘する外部講師の謝金および旅費として。(2)マルチメディア教材作成のための編集ソフトの購入費として。(3)国内外の応用倫理学関連学会への参加費及び旅費として。(4)科研最終年度である本年度には、3年間の全活動の記録と研究成果をまとめた研究活動報告書を印刷し、各関連研究機関や研究者に配布するが、その印刷費と送料として。(5)研究遂行のための物品(書籍、パソコンおよびその周辺機器、ソフトウエア、文房具等)の購入費として。
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Research Products
(16 results)