2013 Fiscal Year Annual Research Report
『畸人十篇』とその朝鮮・日本における思想的影響に関する研究
Project/Area Number |
23520055
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
柴田 篤 九州大学, 人文科学研究科(研究院), 教授 (00117128)
|
Keywords | 畸人十篇 / マテオ・リッチ / 天主教 / 明末 / 中西対話 / 死生観 |
Research Abstract |
本研究は、明末においてイタリア人イエズス会士マテオ・リッチが中国人と実際に行った対話を記録した『畸人十篇』について、その成立過程と思想内容を分析した上で、朝鮮や日本に与えた思想的影響について解明したものである。従来、平田篤胤に与えた影響などは注目されていたが、『畸人十篇』自体に対する研究はほとんどなされておらず、その意味で本研究が果たした役割と意義は大きいと言える。 本研究では、先ず現存書の調査と検討を行うことによって、該書の出版過程を明らかにした。そうした書誌学的研究を経て、最終年度には明末刊本と清末刊本の異同について具体的に解明し、「明清刊本校勘表」を作成した。これは従来にない画期的成果の一つと言える。また、日本における該書の影響という観点から、『天学初函大意書』を取り上げて、最終年度には『畸人十篇』に関する部分の翻刻を行った。これも初めての試みである。 本研究の目的の一つでもあった『畸人十篇』の訳注に関しては、第一篇から第四篇までの現代語訳と詳細な注釈を完成させることができた。これも本邦初訳であり、全篇が完成すれば、天主教思想史研究のみならず、平田篤胤研究に対しても多大な貢献を果たすことになる。 また、最終年度には本研究の成果をもとにして、「国際東方学者会議東京会議」において「明末天主教と死生観」という標題で発表を行った。中西の「対話」の意義についての本発表は、従来にない新たな視点として注目され高い評価を受けた。発表内容は、刊行予定の『西学東漸と東アジア』の中に収載されるが、これも本研究の重要な成果の一つと言えよう。
|