2012 Fiscal Year Research-status Report
演劇的知見を活かした実践型生涯活動のモデルプログラム策定に関する基礎研究
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23520196
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Research Institution | Osaka Institute of Technology |
Principal Investigator |
椋平 淳 大阪工業大学, 工学部, 教授 (00319576)
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Keywords | 生涯活動 / 演劇 / アウトリーチ / 住民参加 |
Research Abstract |
平成24年度は、前年度の調査で入手した資料・データの分析に本格的に着手し、研究成果を学会で発表した。また、前年度に引き続き、全国各地で開催されている市民参加型演劇公演の運営についての実態調査を行った。 まず、6月に開催された日本演劇学会全国大会(於:近畿大学)において、「関西の劇場」というシンポジウムで発表し、研究代表者・椋平は「従来型公共ホールの活性化と地域の劇場化について」という題目で、公共ホールが提供する地域住民参加型事業の現在と展望について、前年度秋に京都府で開催された文化庁主催「第26回国民文化祭・京都2011」のプログラム「構成朗読劇」を中心に論じた。 7月には仙台市市民文化事業団が管理・運営する「せんだい演劇工房10-BOX」への視察や、10月に大阪府高槻市が京都のNPOと共催した市民参加劇、12月に京都市山科区で開催された地元NPO主催の住民参加劇の視察を行った。 さらに、住民参加劇の成功事例として全国的に注目されている北海道士別市あさひサンライズホールの事業を、2月・3月に継続して視察した。すでに10回目となる参加型市民劇製作事業「芝居で遊びましょ」は、運営主体となる士別市教育委員会地域教育課が普遍的なテーマの住民参加劇を創造する取り組みとして、地域住民に人気が高いだけでなく、地域文化の活性効果も高い。今回の作品である「グッバイ父さん」の演出家や主催者・出演者へのインタビューなどにより、貴重な資料が収集できた。 また、調査・視察などの成果を実際の事業に生かす試みとして、椋平が実行委員長を務める「第34回Kyoto演劇フェスティバル」(主催:京都府)において、中高年向け生涯活動事業「朗読夜会」を開催した。京都市内外に居住する一般市民が朗読の舞台を経験し、同時に地域の観客も舞台に感化され、地域文化高揚の仕掛けとして効果的な取り組みとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究2年目の実績として、全国各地の公共文化施設で行われている演劇的アウトリーチから、成功例として全国的に有名な北海道士別市の住民参加型演劇事業の視察を実施し、アンケートや現場視察によって多角的な資料が収集できている。また、その理念や運営方法を比較考察するため、活動に携わる演劇関係者や施設の担当者、さらには一般参加者にアンケート・インタビューを実施することで、成果や課題について生の声を収集している。仙台市市民文化事業団においても、責任者から、東日本大震災後の公立ホールの役割・演劇的公共事業の在り方に関する意見聴取を行った。 こうした実地調査にもとづく資料収集によって、今後さらに他の事業の調査やこれまでの視察実施事業の追加調査を推進する際に土台となる調査フォーマットの改訂版作成や、収集資料に基づく分析・考察が予想通り進んでいる。 さらには、これまでの調査・研究の成果として、学会での口頭発表や、考察した内容の実際の演劇事業への応用にも着手できている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究3年目は、一応の成果集約期と位置づけ、初年度・2年目で収集できた様々な資料の整理・考察を進める一方、これまでの視察対象に対して継続視察や補足考察を行い、それによって明らかになる演劇的生涯活動の理念や方法論の抽出を行う。 具体的には、北海道士別市あさひサンライズホール、札幌・コンカリーニヨ、仙台市市民文化事業団(せんだい演劇工房10-BOX)、岐阜・可児市文化創造センターなどで実施される住民参加型事業を視察・調査する。実際の調査は、先方の調査受け入れ態勢、事業の実施時期などを総合的に勘案し、適宜決定する。 また、現時点での研究進捗・分析考察の結果を、9月開催の日本演劇学会近現代演劇研究会などで発表する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主に、調査対象となる事業実施会場への出張費として支出する。特に、24年度に実施予定だった札幌・コンカリーニョでの事業視察が、同施設の事業計画変更により25年度に延期となったため、24年度研究費の繰り越しが生じた。そのため、改めて次年度での同施設視察も含めて研究を進めるものとする。 また、専門的知識を有する調査対象者へのインタビュー謝礼や、収集資料の整理・編集を委託する作業担当者への謝礼、資料収集に必要な記録媒体の購入、研究成果報告書の作成費用に当てる。
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