2011 Fiscal Year Research-status Report
江戸前期の思想・文芸における老荘思想受容についての研究
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23520229
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
川平 敏文 九州大学, 人文科学研究科(研究院), 准教授 (60336972)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 老荘思想 / 受容 / 俳諧寓言説 / 山岡元倫 / 林読耕斎 / 林希逸 |
Research Abstract |
本年度はまず、江戸時代における老荘受容に関する研究史について、とくに江戸前期の俳諧寓言説、および中期の老荘物談義本の問題を中心に概観し、今後残された課題についても言及した(「研究領域間の架橋へ向けて」、『江戸の文学史と思想史』所収、pp.158-169)。日本思想史・中国文学史といった、隣接領域における研究成果も参照しているので、今後このテーマを包括的に研究するための指針となることを期待している。 次に、江戸前期の文人・山岡元隣の仮名草子における老荘受容の問題について考察した(「江戸前期における禅と老荘―山岡元隣論序説―」、上記書所収、pp.170-193)。元隣の老荘受容は単体でなされたものではなく、禅を経由したものであったことを指摘した。江戸前期は禅が通俗的なかたちで普及した時代であったが、当時老荘は禅と表裏一体のものとして理解されており、元隣のような老荘受容の仕方は、当時ある程度一般化できることも示した。 さらに、江戸前期の朱子学者・林読耕斎の、宋の儒学者・林希逸の荘子注釈(『林註荘子』と略称)に対する態度について考察した(「林読耕斎と『林註荘子』、上記書所収、pp.194-201)。読耕斎は父・林羅山の弟子であるが、同門の兄・鵞峰や、人見卜幽軒らの『林註荘子』に対する温和的態度とは違って、その三教一致的な姿勢を筆鋒鋭く批判している。同じ林家一門といえども、微妙な温度差があることを示した。 そのほか、江戸中期の老荘物談義本の嚆矢とされる『田舎荘子』の作者・佚斎樗山との関係が問題とされてきた、岩田彦助なる人物の伝記・思想の解明へ向けて資料調査を開始し、一定の成果を得た。また彼の主著『従好談』を翻字した。これらは来年度以降に公表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
山岡元隣の仮名草子研究については、計画以上の成果を提出できたと思う。林希逸の老荘注釈書の書誌調査を進める予定であったが、こちらはやや遅れているか。本年度は、当初次年度に計画していた老荘物談義本に関連する問題の調査・分析に、比較的時間を費やしたためかと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は林希逸の老荘注釈の書誌調査を、当初予定よりも推進したい。また老荘物談義本に関連する問題として、岩田彦助の伝記・思想研究をまとめ、公表したい。また、山岡元隣の仮名草子研究についても、引き続きその成果を発表したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
文献調査および成果発表のための旅費、関係図書購入のための物品費、データ入力・整理のための謝金などを計上したい。
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Research Products
(2 results)