2012 Fiscal Year Research-status Report
源氏物語の本文関係資料の整理とデータ化及び新提言に向けての再検討
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23520241
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Research Institution | Kokugakuin University |
Principal Investigator |
豊島 秀範 國學院大學, 文学部, 教授 (90133272)
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Keywords | 源氏物語 / 河内本 / 平瀬本 / 七毫源氏 / 岩国市吉川家本 / アメリカ議会図書館本 アメリカ議会図書館 / 本文データベース |
Research Abstract |
平成24年度は、平成23年度からの「基盤研究C」の2年目に当たり、「源氏物語諸伝本の再検討を通して新提言へ」の研究テーマのもと、1.『源氏物語』の巻ごとに主要本文十数本を翻刻して対校一覧を作成しデータ化する、2.そのデータ資料などに基づいて、各研究委員が研究会で研究成果を発表し、それを年度末(25年3月)発行の『研究報告書』に掲載して公開するという形で24年度の研究を進めた。 1では「帚木」巻の主要伝本14本の翻刻と、その対校一覧を作成してデータベース化の処理を行なって、公開可能な状況に仕上げた。これは、平成19~22年度の「基盤研究A」での「花散里」「野分」「柏木」「早蕨」、及び平成23年度の「基盤研究C」での「桐壺」「蓬生」「関屋」の各巻十数本の対校一覧とデータベース化の作業を引き継ぐものである。 2では、平成24年12月15日の共同研究会(於國學院大學)で発表して、質疑応答を経た以下の論文を年度末に発行した『研究報告書』に掲載した。豊島秀範「『源氏物語』「平瀬家本」の本文の特徴─「蓬生」巻を中心に─」、田坂憲二「対校資料としての京都大学図書館本『紫明抄』」、伊藤鉄也「ハーバード大学本『源氏物語』の改行意識」、渋谷栄一「明融臨模本「桐壺」「帚木」「若菜上」「若菜下」帖の親本の性格について」、上野英子「『源氏物語聞書 覚勝院抄』雑攷─周辺人物・書本・成立経緯をめぐって─」、中村一夫「孤立する本文─早蕨巻における─」、上原作和「東海大学桃園文庫蔵吉見正頼旧蔵本「浮舟」巻別註と木下宗連」。 なお、「基盤研究A」の4年間の研究を検証するために「源氏物語本文研究の現状と課題」と題して座談会を豊島秀範(司会)・伊藤鉄也・渋谷栄一・田坂憲二・中村一夫が参加して行い、『國學院雑誌』(國學院大學)平成23年2月号に掲載した。そこで確認した現状分析と課題に基づき本研究を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当研究課題の研究期間は、23年度から25年度までの3年間であるが、その目標は以下の通りである。 1.「平瀬家本」の翻刻本文の確認と、テキスト版の作成。2.「七毫源氏」の翻刻本文の確認と整理。3.「吉川家本」の翻刻本文の確認と整理。4.定家本を初めとする主な青表紙本、尾州家本を初めとする主な河内本、および上記の翻刻本文を合わせた十数本の本文による対校一覧を巻ごとに作成する。5.一覧の完成した対校本文を、巻ごとにデータ化する。 上記の1・2・3に述べた「平瀬家本」「七毫源氏」「吉川家本」の翻刻と本文の確認は既に終えており、「研究実績の概要」にも記したように、共同研究会で各研究者が発表で取り上げ、検討を加えた上で、年度末の研究報告書『源氏物語本文のデータ化と新提言 2』に掲げた、対校一覧の本文として収めている。また、4・5は、同じく「研究実績の概要」で述べたように、1・2・3での研究成果も取り入れながら、巻ごとに、十数本の主要本文による本文対校一覧を作成し、データベース化して、公開できる段階まで、準備を進めている。平成24年度は、「帚木」巻の分量が多いことから、当巻のみを対象として、14本の主要本文を翻刻し、対校一覧を作成して、データベース化まで進めた。 以上のように、「平瀬家本」のテキスト版の作成についてはまだ完成していないが、平成24年度の研究成果としては、ほぼ計画通りに進んできている。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度は、23年度から始めた「基盤研究C」の最終年度(3年目)を迎えるが、24年度までと同様に、以下の方向で研究作業を進めていく。 1.巻ごとに『源氏物語』主要本文十数本の翻刻と、それに基づいた対校一覧の作成と、そのデータベース化を進める。 2.研究員各自が、上記の成果と関わって、それぞれが研究テーマとしている本文についての研究作業を進め、その成果を共同研究会で発表し、それを年度末の報告書に掲載し公開する形で進めていく。 3.上記の1・2の成果を総合して得られる視野から、『源氏物語』本文に関わる新たな提言を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度に使用できる研究費の範囲で、1.当該研究の基礎であり、最も時間を要する本文の翻刻に関わる謝金などに50%、2.年度末の報告書の作成費に25%、3.本文の対校一覧のデータベース化の費用に25%を、それぞれ予定している。
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