2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23520253
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Research Institution | Komazawa Women's University |
Principal Investigator |
渋谷 香織 駒沢女子大学, 人文学部, 教授 (10196446)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松村 良 駒沢女子大学, 人文学部, 講師 (00265571)
石田 仁志 東洋大学, 文学部, 教授 (80232312)
田口 律男 龍谷大学, 経済学部, 教授 (80197251)
掛野 剛史 埼玉学園大学, 人間学部, 准教授 (00453465)
中澤 弥 多摩大学, グローバルスタディズ学部, 講師 (20279821)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国文学 / 近現代文学 / 表象文化 / 上海 / 日本人 / 国際研究者交流(中国) |
Research Abstract |
本研究は、当時の様々な分野の資料と表象との間に展開される関係性を明らかにしたうえで、1920年代から1940年代の日本人の見た上海を含む海外表象を横断的に分析・検証していくことを目的にしている。 平成23年度は横光利一『上海』を中心に、1920年代から1945年までに発表された文学テクストや、その他のメディアにおける上海表象文化の実態を明らかにするために、文学テクストに描かれた社会、経済状況や外国人表象の典拠となった様々な分野の資料を横断的に発掘・収集し、それらのインターテクスチュアリティについての分析を研究代表者ならびに研究分担者が相互協力して行った。邦字資料だけにとどまらず、諸外国の資料を参照することで、日本人の見た上海表象の実態を明らかにするとともに、当時の様々な分野の資料と表象との間に展開される関係性についても分析・検討を行った。また、この時期の上海を舞台にした日本、中国やアメリカなどの映画作品を中心とした映像資料に関する表象の検証を研究分担者中沢弥が中心になって行い、研究の相対化を図った。 5月29日の日本近代文学会春季大会で研究分担者石田仁志、田口律男、中沢弥がパネル発表「上海表象文化研究の試みー戦間期の上海を中心に」を行い、本研究の中間報告を行った。また、10月21日から24日まで、研究分担者石田仁志、松村良、掛野剛史、中沢弥の4名が上海で必要資料の調査、収集を行い、シンポジウム「近代百年 日本文学における上海」に参加し、研究発表を行った。日中両国の上海研究について意見交換を行うことで、日中相互の上海表象文化研究についての理解を深めた。 研究状況ならびに成果について確認を行うために、8月28日、12月4日、3月2日に研究打ち合わせをおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、様々な分野の資料と表象との間に展開される関係性を明らかにしたうえで、1920年代から1940年代の日本人の見た上海を含む海外表象を横断的に分析・検証していくことを目的とするとともに、出版のデジタル化が進む中、本文校訂や典拠研究、注釈といった伝統的な文学研究を、表象文化研究に基づくデジタルデータの構築に接続することで、新たな文学研究の方向性を提示したいと考え、始めた研究である。 平成23年度は、1920年代から1945年までに発表された文学テクストや、その他のメディアにおける上海の表象文化の実態を明らかにするために、まず、横光利一『上海』のテクストに描かれた社会、経済状況や外国人表象の典拠となった様々な分野の資料を横断的に発掘・収集し、それらのインターテクスチュアリティについての分析を行った。見い出した典拠等の資料についての分析を精密に行った結果、『上海』という作品を多元的に読み解くことができ、相応の成果をあげてきたといえよう。しかし、典拠となるべき資料の発掘が思うようにはすすんでいないため、資料不足という点は否めない。また、横光利一以外の作家の作品についての言及が十分行われているとは言いがたい。 このため、表象文化研究に基づくデジタルデータの構築に接続するという点については、研究成果を報告する段階まで、研究がすすんでいない。 この点から、計画よりはやや遅れているといわざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、平成23年度に得られた研究成果を検証し、前年度の研究の補完を行うべく、上海に関する様々な分野の資料を横断的に発掘・収集し、それらのインターテクスチュアリティについての分析を行うとともに、当時の上海における国際情勢を踏まえたうえで、収集された資料の多角的な分析作業を進めることが研究の中心になる。 具体的には横光利一『上海』をはじめとする文学テクストおよび映像資料に基づく上海の表象文化について、多岐に渡る分野の資料収集を行い、研究分担にしたがって精密な分析を進めることにする。 1920年代から1940年代の日本人の見た上海を含む海外表象を横断的に分析・検証していくことを目的としている本研究においては、東アジアネットワークの中の上海という観点が有効であろうと考え、平成24年度に予定していたシンポジウム内容を大幅に見直すことにした。シンポジウムでの歴史学、メディア研究もふまえ、学際的研究の観点も取り入れたたさまざまな方法論の研究者の発表ならびに、共同討議を通して「日本人から見た上海」について考え直してみることで、この研究の意義がよりいっそう明らかになると考えたからである。シンポジウムは9月8日、9日に龍谷大学で「戦間期東アジアにおける日本語文学」というタイトルで行うことにする。 『上海』に関する表象文化データベースの構築を推進するためにも、上記の方策が有効であると考えている。 なお、上記研究の打ち合わせ会議ならびに検討会を4回(5月、8月、12月、2月を予定)東京で行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度、研究を進めるうちに、1920年代から1940年代の日本人の見た上海を含む海外表象を横断的に分析・検証していくことを目的としている本研究においては、東アジアネットワークの中の上海という観点が有効であると同時に、歴史学、メディア研究もふまえ、学際的研究の観点をふまえたさまざまな方法論による研究発表ならびに、共同討議が必要と考え、平成24年度に予定していたシンポジウム内容を「戦間期東アジアにおける日本語文学」に変更した。さまざまな研究方法を試みている研究者から広く知見を得るため、研究発表ならびに、共同討議の参加者を研究代表者、研究分担者以外に国内外から10名参加するシンポジウムを行うことにした。 この費用を捻出するため、平成23年度の支出を必要最低限の支出に抑えようとした結果、研究代表者、分担者の研究費を合わせて10万円の経費を次年度に使用することにした。 平成24年度の研究費は資料購入代金、資料複写費用ならびに平成23年度に計画しているシンポジウム「戦間期東アジアにおける日本語文学」の経費に使用することにしたい。経費の内訳は代表者、分担者の旅費、中国からの研究者招聘旅費、研究発表者旅費や謝礼などである。
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