2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23520253
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Research Institution | Komazawa Women's University |
Principal Investigator |
渋谷 香織 駒沢女子大学, 人文学部, 教授 (10196446)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松村 良 駒沢女子大学, 人文学部, 講師 (00265571)
石田 仁志 東洋大学, 文学部, 教授 (80232312)
田口 律男 龍谷大学, 経済学部, 教授 (80197251)
掛野 剛史 埼玉学園大学, 人間学部, 准教授 (00453465)
中澤 弥 多摩大学, グローバルスタディーズ学部, 講師 (20279821)
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Keywords | 日本文学 / 近現代文学 / 表象文化 / 上海 / 日本人 / 国際研究者交流(中国) |
Research Abstract |
本研究は、様々な分野の資料と表象との間に展開される関係性を明らかにしたうえで、1920年代から1940年代の日本人の見た上海を含む海外表象を横断的に分析・検証していくことを目的とするとともに、出版のデジタル化が進む中、本文校訂や典拠研究、注釈といった伝統的な文学研究を、表象文化研究に基づくデジタルデータの構築に接続することで、新たな文学研究の方向性を提示したいと考え、始めた研究である。 平成24年度は1920年代から1945年までに発表された文学テクストや、その他のテクストおける上海表象文化の実態を明らかにするために、横光利一『上海』を中心に、村松梢風、井東憲、前田河広一郎等の文学テクストに描かれた社会、経済状況や外国人表象の典拠となった様々な分野の資料を横断的に発掘・収集し、それらのインターテクスチュアリティについての分析を、研究代表者ならびに研究分担者が相互協力して行った。邦字資料だけにとどまらず、諸外国の資料を参照することで、日本人の見た上海表象の実態を明らかにするとともに、当時の文献資料とテクスト表象との間に展開される関係性についても分析・検討を行った。また、この時期の上海を舞台にした日本、中国やアメリカなどの映画作品を中心とした映像資料に関する表象の検証を研究分担者中沢弥が中心になって行い、研究の相対化を図った。 9月8日、9日に龍谷大学において行った「国際シンポジウム 戦間期東アジアにおける日本語文学1920~1945年」では、歴史学、メディア研究もふまえ、学際的研究の観点も取り入れたたさまざまな方法論の研究者の講演、発表、共同討議を通して、この研究の意義を明らかにした。 研究状況ならびに研究成果について確認を行うために、5月26日、9月7日、1月5日、2月23日に研究打ち合わせならびに研究検討会をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度は、平成23年度と同様、1920年代から1945年までに発表された日本語の文学テクストや、その他のメディアにおける上海の表象文化の実態を明らかにした。特に、横光利一『上海』については、テクストに描かれた社会、経済状況や外国人表象の典拠となった様々な分野の資料を横断的に発掘・収集し、それらのインターテクスチュアリティについての分析を行った。この作品については典拠と思われる重要資料を数多く発掘することができ、綿密な分析を行った結果、この作品を多元的に読み解くことができ、相応の成果をあげてきたといえよう。しかし、典拠となるべき資料の発掘がすすんでいるものの、より多くの資料が必要という認識も得た。 村松梢風、井東憲、前田河広一郎等、この時代に活躍した作家の作品からの上海表象についても、調査を進めている。 9月8日、9日に龍谷大学で行った「国際シンポジウム 戦間期東アジアにおける日本語文学1920~1945年」というシンポジウムにおいて、歴史学、メディア研究もふまえ、学際的研究の観点も取り入れたたさまざまな方法論の研究者の発表ならびに、共同討議を通して、この研究の意義を明らかにした。 しかし、表象文化研究に基づくデジタルデータの構築に接続するという点については、研究成果を報告する段階まで、研究がすすんでいない。 この点から、計画よりはやや遅れていると言わざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、平成24年度までに得られた研究成果を検証し、これまでの研究の補完を行うとともに、検証を終え、この研究の総括を行う。 具体的には平成24年度に引き続き横光利一『上海』をはじめ村松梢風、井東憲、前田河広一郎等の文学テクストおよび映像資料に基づく上海の表象文化について、様々な分野の資料を横断的に発掘・収集し、それらのインターテクスチュアリティについての分析を行うとともに、当時の上海における国際情勢を踏まえたうえで、研究分担にしたがって収集された資料の多角的な分析作業を進め、検証、総括することになる。特に中国語等で書かれた資料も積極的に利用し、表象文化研究に基づくデジタルデータの構築に接続することを目指したいと考えている。このために、2回研究検討会議を行い、研究の進捗状況ならびに成果を確認する。 また、平成24年度に行った「国際シンポジウム 戦間期東アジアにおける日本語文学1920~1945年」というシンポジウムをふまえた本研究の成果を研究代表者、分担者がそれぞれのアプローチで論文にまとめるとともに、本研究グループの研究成果報告会を3月に行う予定である。 横光利一『上海』に関する表象文化データベースの構築を推進するためにも、上記の方策が有効であると考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、上記推進方策に従い、研究検討会議を行いながら研究を継続し、研究を総括するため、研究成果報告会を行う。このため、研究費は資料購入代金、資料複写費用、資料翻訳、研究分担者の旅費等に使用する予定である。 平成24年度は「国際シンポジウム 戦間期東アジアの日本語文学1920~1945年」というシンポジウムを開催するため、中国からの研究者招聘者旅費等を予算化していたが、安い航空運賃の利用などで、経費を節約することができた。これは平成25年度に資料を補充するための費用等に使用することにしたい。
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