2011 Fiscal Year Research-status Report
日本の〈辺境〉における英文学研究に関する研究-沖縄と北海道を中心に
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23520284
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
齋藤 一 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (20302341)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 英文学 / 辺境 / 北海道 / 沖縄 / 東日本大震災 / 広島 / 想像力 |
Research Abstract |
【本年度の研究成果と「研究の目的」との関係】本研究は、日本の〈辺境〉とされてきた沖縄と北海道における英文学には〈中央〉(主に東京)のそれとは異なる歴史と意義があったことを調査研究するものである。この点においては、(1)平成23年10月1日と平成24年3月24~7日に、北海道大学付属図書館にて、H24年度以降の調査のための予備的調査をおこなったこと、(2)日本英文学会北海道支部第56回大会シンポジアム「個別の受容から迫る「日本の英文学受容」」において「ある英文学者の肖像――三輪明と翻訳」と題する発表をおこなったことを挙げることができる。【本年度の研究成果と「研究実施計画」との関係】本年度は、東日本大震災と原発事故のため、北海道と沖縄における本格的な調査や調査結果の検討はH24年度以降にずれ込むこととなった。また、これらの出来事のあとでは、英文学研究の意義を今一度根本的に問い直さざるを得なかった。具体的には、第三回高麗大学校・筑波大学合同フォーラム(平成24年2月10日、於:高麗大学〔ソウル、韓国〕)の「セッション:アジア研究におけるグローカルという視点」において「広島原爆碑文の「「主語」」をめぐって」と題する発表をおこなった。これは広島市平和記念公園にある原爆死没者慰霊碑の碑文を撰文・揮毫した英文学者・雑賀忠義(広島大学)が碑文にこめた意図を探ったものである。 このようにして、北海道と沖縄を「中心に」してきた本研究の視野を広げつつ、〈辺境〉における英文学を、単に〈中央〉/〈辺境〉という抽象的な二項対立において漠然と問い直すのではなく、〈辺境〉における具体的な出来事に対して英文学(者)はどのように応じてきたのかを調査することも、本研究の課題であることを確認した。また、広島の事例を研究することで、〈辺境〉という概念もあらためて問わねばならないことも確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、平成24年度と25年度におこなう北海道と沖縄における本格的な文献調査に向けての予備的作業(英文学制度研究や翻訳論等の先行研究の購入、改装された北海道大学付属図書館での予備調査)をおこなった。東日本大震災の余波のため、資料収集と予備的調査や口頭発表以上の本格的調査等は実施できなかったが、先行研究の収集・購入と予備的調査という、科学研究費による研究の初年度におこなうべきことはおおむね達成できた。 また、東日本大震災を受けて、北海道と沖縄のみならず広島における英文学(者)についての調査研究が必要であることが分かった。ただし、広島は〈地方〉ではあるが〈辺境〉とは呼びがたいので、本研究の目的との整合性について慎重に検討する必要があることも確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定を修正し、平成24年度に北海道での文献調査をおこない、平成25年度に沖縄での文献調査をおこなう。研究成果の発表については、各年度ごとに口頭発表と論文で発表する。H25年度末には本研究を総括する論文を発表する。 また、平成24年度には、第2次世界大戦後の広島の英文学(特に雑賀忠義)についての調査研究もおこない、核時代における想像力と英文学研究者の課題について根源的に思考するための基礎を構築する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度(500,000円配分予定)は北海道出張(2回、7月と12月を予定)にそれぞれ100,000円を配分する。また、広島への出張(1回、8月を予定)に100,000円をあてる。 資料収集(主にコピー代)に50,000円を配分し、資料整理に大学院生(1名、50,000円)を雇用する。残額の150,000円は文献購入等にあてる。 なお、F-6-1(収支状況報告書)で次年度使用額となっている32,497円については、平成23年度に韓国の高麗大学校でおこなった講演のための旅費として支出が確定している。
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