2012 Fiscal Year Research-status Report
日本の〈辺境〉における英文学研究に関する研究-沖縄と北海道を中心に
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23520284
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
齋藤 一 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (20302341)
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Keywords | 英文学 / 米文学 / 北海道 / 沖縄 / 広島 / 小樽 |
Research Abstract |
【本年度の研究成果と「研究の目的」との関係】本研究は、日本の〈辺境〉とされてきた沖縄と北海道における英文学史には〈中央〉(主に東京)のそれとは異なる歴史と意義があったことを調査研究するものである。本研究の本年度の成果としては、主として以下の2点をあげることができる。(1)平成24年8月10日~17日に、北海道の小樽商科大学と北海道大学において、太平洋戦争前後に活躍した小樽商科大学の英語教員である玉井武と清水春雄の業績について、それぞれ論文を執筆出来る程度の文献調査をおこなった。(2)本研究の一環として開催した「文学受容変容研究会第2回研究会」(平成24年12月17日、於:東洋大学)において、齋藤は「「〈北方〉と混淆性――玉井武「北海道に於ける英學の發達」(1950)について」」と題する発表をおこない、参加者と意見交換をおこなった。 【本年度の研究成果と「研究実施計画」との関係】本年度は、北海道の小樽商科大学で活躍した玉井武と清水春雄の業績について調査できたことが最大の成果であり、本研究計画の狙いと合致するものである。玉井は太平洋戦争後の1950年から北海道における英学受容の研究を行ったが、これは〈地方〉と〈中央〉という二項対立を崩すものではなくむしろその逆転を試みるものであり、戦時中の国策と合致することが多かった。清水は小樽商科大学に赴任する前に広島で被爆しており、この経験が彼の小樽における研究教育活動に影響を与えていた可能性がわかってきた。 以上のように、本年度の研究のおかげで、北海道における英(米)文学の意義を考察するための貴重な手がかりを得ることができたが、沖縄の英米文学についての研究は進まなかった。沖縄についての調査研究は平成25年度の重要な課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は北海道(小樽商科大学、北海道大学)において、充実した調査研究をおこなうことができた。その結果、玉井武と清水春雄という二人の英米文学者の業績とその歴史的意義を把握することができた。玉井については、太平洋戦争期の小樽商科大学(小樽高等商業専門学校)と当時の国策、すなわち小樽という〈辺境〉をいわば〈北方〉の〈中心〉と考えるという政策との関連において、北海道英文学史を構想したことがわかった。清水については、広島での被爆体験とウォルト・ホイットマン研究との関係が重要であることがわかった。 ただし、沖縄の英米文学については調査をおこなうことができなかった。 また、昨年度(平成23年度)には広島における英米文学者の業績を調査研究することに相当な時間を費やしたが、この調査研究は本研究とは別の研究としておこなうこととした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、平成24年度の北海道における調査研究の成果(特に玉井武と清水春雄について)を論文として発表する。また、沖縄での調査研究、特に太平洋戦争後における琉球大学においての英米文学者の業績を整理整頓することに傾注する。 また、平成25年度は本研究の最終年度であるので、本研究の一環としておこなっている「文学受容変容研究会」の成果を冊子等にて公開する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度(500,000円配分予定、平成24年度分から201,741円繰越予定)は、平成24年度繰り越し分を、データ整理のために用いる最新のパーソナルコンピューターの購入費用に充てる。また、沖縄出張(8月を予定)に100,000円を、沖縄の英米文学関係資料購入に100,000円をあてる。資料整理と成果報告冊子の編集のために大学院生2人(一人50,000円、計100,000円)を雇用する。残額の200,000円は成果報告冊子の編集印刷費用として用いる。
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Research Products
(1 results)