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2013 Fiscal Year Research-status Report

ハプスブルク帝国下の文学・芸術における東方への眼差し

Research Project

Project/Area Number 23520372
Research InstitutionTokyo Institute of Technology

Principal Investigator

山崎 太郎  東京工業大学, 外国語研究教育センター, 教授 (40239942)

Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) 市川 伸二  東京工業大学, 外国語研究教育センター, 教授 (20176283)
安徳 万貴子  東京工業大学, 外国語研究教育センター, 准教授 (70585132)
Keywords国際情報交流(オーストリア)
Research Abstract

山崎は過去2年間に収集した資料の解読と整理に多くの時間を費やした。資料の中でも、アルジェリアの港湾都市オランをめぐる1708年および1732年のスペイン対イスラム教徒の攻防を報道する当時のウィーン他の新聞記事からは、半年以上にわたる紙面での詳細な扱いを通し、この事件が当時のヨーロッパのキリスト教社会全体に与えた大きな衝撃と影響が見えてきた。他方、アルジェリアの社会と歴史について書かれたヨーロッパの古文献からは、アフリカ北部地中海沿岸の地勢学的位置付けとヨーロッパ社会に脅威を与えた同地の海賊の実態について認識を深めることができた。
市川は9月にロシアに出張し、モスクワとサンクト・ペテルブルグで、二十世紀初頭リルケが体験した風景と文物を追体験すべく、フィールドワークを試み、研究に直接結び付く一定の成果をあげた。またホフマンスタール研究に替えて、取り組むことにしたカフカへのドストエフスキーの影響について、『審判』を手がかりに考察し、これも論文執筆に直接結び付く一定の成果をあげた。
安徳は、ホフマンスタールにおける「東方への眼差し」を、比較対照し、かつ歴史的・文化的な流れのなかでとらえるべく、この作家に大きな影響を与えた作家ノヴァーリスに視点を移して考察した。それによって浮かび上がってきたのは、彼らの目に映った「東方」そのものというよりも、むしろ、東方文化への視線をもつことで醸成されてゆく、自然との関わり方の模索である。ノヴァーリスの『ハインリヒ・フォン・オフターディンゲン』『サイスの弟子たち』に共通するアトランティス伝説に焦点をあて、この伝説を作品の柱とすることで、自然と人間のいかなる関係が描かれ、目指されているかを考察し、その成果を『言語文化論叢』に発表した(「研究発表」参照)。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

山崎は過去2年間の出張で収集した膨大な古文書・新聞類の整理と解読に主な時間を費やし、アフリカ北部の地中海沿岸におけるイスラム海賊の活動が近世キリスト教世界の交易に真の脅威となっていた事実、1708年および1732年のアルジェリアの港湾都市オランをめぐるスペイン対イスラム教徒の攻防が全ヨーロッパの大きな注目を集めた事実を確認し、モーツァルトの歌劇《後宮からの逃走》創作の知られざる政治・社会的背景についての認識を深めることができた。その結果、当初の構想よりもテーマが大きく膨らんだのに加え他研究テーマでの著書の執筆が並行し、論文にまとめあげるのに、なお若干の時間が必要なため、年度の延長を申請・受理された。
市川はロシア出張を通し、二十世紀初頭リルケが体験した風景と文物についての具体的な認識を深めることができた。その一方、『審判』を手がかりに、ドストエフスキーがカフカに及ぼした影響について、論文を執筆した。
安徳は、ホフマンスタールの東方文化への眼差しと創作との結びつきを、比較対照によってより立体的に捉えるべく、前年度までに入手した関連文献をもとに、ホフマンスタールと思想的に最もつながりの深い作家ノヴァーリスについて論文を執筆した。これにより、本研究テーマについて成果をまとめる更なる土台を築くことができた。

Strategy for Future Research Activity

最終年度が26年に繰り越されたのは、上記達成度の項目で述べたように、主として山崎の研究の進展に理由があるが、市川、安徳も期間延長のメリットを活かすべく、25年度の成果をさらに進める方向で、各自のテーマをさらに広げ、深めた論文の執筆に取り組む。そのため三人で情報交換と研究会を行なう。
山崎は25年度の研究で得られた新たな社会史的視点を本来のモーツァルト研究にフィードバックしつつ、歌劇《後宮からの逃走》を同時代のオリエントをテーマにした数々の作品とも比較しつつ、論文にまとめる。執筆のための最終的準備として、秋口までを目安に論文のドイツ語によるラフ・スケッチを書き上げ、この分野の専門家(ウィーン楽友協会資料室館長オットー・ビーバ氏)との意見交換および最終資料の補充のために、ヨーロッパ出張を予定。
市川はリルケにおけるロシアの影響について、前年度のフィールドワークを参考に、まず
リルケのロシア体験のインパクトについて様々な角度から考究を継続する。同時にカフカの『審判』論をドストエフスキーを関連付ける形で書き上げる予定である。
安徳は、ホフマンスタールの講演『国民の精神的空間としての著作』『ヨーロッパという理念』のほか、『帰国者の手紙』『チャンドス卿の手紙』といった代表作に立ち返り、過去3年間のまとめを行う。当初の目標のとおり、「東方への眼差し」を動力とする文学的理想、あるいはそこで模索される自然との関係を明らかにし、その成果を論文として発表する。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

平成25年度の科研費のうち、当初は文献購入その他に予定した残額を、山崎の最終的な資料の補填および現地の当該分野専門家(ウイーン楽友協会資料室館長O・ビーバ氏)との相談のためのウイーン出張に振り替えようと考えたが、平成24年度に入手した膨大な資料の解読に加え、著書の執筆その他の研究が入り、スケジュール的に困難を生じたため。
山崎のウイーン(オーストリア)出張(9月に予定)に当てる。秋口までに山崎が作成する研究ノート(論文の骨格)をもとに、現地の当該分野研究者と意見交換を行ない、その助言に従って、最終的な資料を補填するため。

  • Research Products

    (1 results)

All 2014

All Journal Article (1 results)

  • [Journal Article] 〈終わりのない流体のなかの結晶〉――ノヴァーリス『サイスの弟子たち』――2014

    • Author(s)
      安徳万貴子
    • Journal Title

      言語文化論叢(東京工業大学外国語研究教育センター)

      Volume: 第19巻 Pages: 75-86

URL: 

Published: 2015-05-28  

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