2012 Fiscal Year Research-status Report
1860年代のドストエフスキーにおける文学と建築のトポロジー
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23520409
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
近藤 昌夫 関西大学, 外国語学部, 教授 (80195908)
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Keywords | ロシア / ペテルブルグ / ドストエフスキー |
Research Abstract |
2011年度は、『地下室の手記』(1864)の十字路を念頭に置いて『罪と罰』(1866)の十字路を検討した。その結果、小説を大地と結びつける十字路は、ラスコーリニコフの悔悟と蘇生にとってきわめて重要な詩的トポスであることが明らかになった(「ドストエフスキー『罪と罰』のaqua vitae」)。この成果に基づき、2012年度は、『罪と罰』における十字路の詩的機能を考察した。その際、センナヤ広場界隈と、ラスコーリニコフが見た暗示的な悪夢の中の町が位相的に一致することから、悪夢の中の「遠くの森」とは、『カラマーゾフの兄弟』にも登場する荒野修道院ではないかと着想した。そして、民間信仰とキリスト教の祝祭が融合した「セミーク=トロイッツァ」すなわちペンテコステの意義が教会の建立であることから、『罪と罰』のドストエフスキーが、物語の第7章にあたるエピローグに、西のペテルブルグの十字路を象徴的な「扉」とする巨大な聖堂を建立したことを論証した(「十字路から聖堂へ」)。これによってドストエフスキーが、次作『白痴』(1868)にキリスト公爵を降臨させた理由を新たな視点から提示できたことは意義深い。 国内調査の成果の一部は、評論「ドストエフスキーの祝祭的世界」(北海道新聞、2012年7月27日夕刊)で公表することができた。ドストエフスキーの『白痴』に基づく黒澤明監督の『白痴』の祝祭性を船山馨の『北国物語』に求めたことは特筆に値すると思われる。国外調査の成果の一部は、市民講座(毎日文化センター「サンクトペテルブルグ文学散歩」、2012年11月24日、12月8日、12月22日)で一般に還元することができた。 また、副次的成果として、ドストエフスキーの語りの特徴が二葉亭四迷の『浮雲』に影響を与えたことをまとめ、共編著『文化の翻訳あるいは周縁の詩学』(水声社、2012年)として上梓することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度の研究成果を継承し、課題を論文・口頭発表・編著において発展・深化させたばかりか、成果を新聞記事・市民講座で一般に還元した。また、次の分析対象である『白痴』の解釈の糸口がつかめたことは、全体構想に沿って、研究目的を順調に達成したものと高く評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
『罪と罰』の聖堂の建立と『白痴』のキリスト公爵の降臨の関係を、『白痴』におけるペテルブルグと郊外のパーヴロフスクの対比に注目しながら検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ペテルブルグのドストエフスキー博物館を訪れて資料収集を行う。
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Research Products
(3 results)