2012 Fiscal Year Research-status Report
認知文法を応用した失語症者の構文ネットワーク構造の解明
Project/Area Number |
23520470
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Research Institution | Prefectural University of Kumamoto |
Principal Investigator |
村尾 治彦 熊本県立大学, 文学部, 教授 (50263992)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小薗 真知子 熊本保健科学大学, 保健科学部, 教授 (80128272)
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Keywords | 構文ネットワークモデル / 失語症 / 認知文法 |
Research Abstract |
本研究は、認知文法のネットワークモデルを援用して、失語症者の構文ネットワークモデルを構築し、失語症者の重症度別、失語症タイプ別にネットワーク構造のどの部分まで理解や表出が可能かを明らかにしながら、失語症者の言語知識をモデル化することを目的 とするものである。同時に、人間言語を分析する真に有効な理論として認知言語学が妥当かどうか実証的に検証し、今後の認知言語学の発展、将来性に寄与することを目的とする。 24年度は、まず、失語症者の誤りの多い助詞「で」に注目して、伊藤(2008)、森山(2008)の先行研究を元に「で」の各用法毎の構文パターンを中心とした健常者のネットワークモデルを作成した。それをもとに、「失語症者の理解・表出テスト」を作成し、県内の医療機関を通じてデータの収集を行った。収集したデータに対して、認知言語学と脳生理学、高次脳機能障害学の立場から整理、分析し統計処理を行った。 結果として、データ数の不足にもよるが、ネットワークのプロトタイプ用法と拡張用法間で理解度の統計学的に有意な差異はまだでていないが、失語症者は「で」のネットワーク内の「空間的背景の用法」の場合、背景的な「場所」を移動の着点もしくは存在位置として前景的な参与者としての意味として捉え、「役割的背景の用法」の場合、背景となる役割的要素を前景化して参与者である行為主体として捉え、共に背景的な要素から前景的な事態参与者への格上げという現象が起こっている可能性を明らかに出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に遅れていた失語症者の理解・表出テストを作成し、データ収集、分析を行い、失語症者の理解度において、助詞「で」のネットワーク内の特性を部分的に明らかにできたため、失語症者のネットワークモデルの作成も進み、おおむね順調に進展している。 しかし、一方で、ネットワーク内のプロトタイプと拡張用法間の理解度の差異については今後のデータの追加とその分析において詰めていく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度の予定は以下の通りである。不足しているデータの数を補うため、さらに県内医療機関を通じてデータの収集を行い、分析をし、引き続き失語症者のネットワークモデルの構築及びその検証に向けて作業を行う。次に、得られた研究成果を取りまとめ、学会等で報告する。その後総括を行い、構築した失語症者のネットワークモデルから健常者のモデルを再検討することで、構文ネットワーク理論が人間の言語一般の特性を明らかにするものとして妥当かどうかを検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度は、作成した助詞のネットワークモデルの妥当性について意見交換を行うため、助詞研究の専門家の招聘のための旅費・謝金を計上している。また、研究成果報告のため、学会等での研究発表用の旅費を計上する。引き続き、認知言語学、失語症関連の最新の情報を得るために関連図書費用も計上している。
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Research Products
(3 results)