2011 Fiscal Year Research-status Report
現代中国語における方向補語の各種用法に関する横断的研究
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23520503
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
丸尾 誠 名古屋大学, 国際言語文化研究科, 准教授 (10303588)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 中国語 / 方向補語 / 現代中国語文法 / 派生義 |
Research Abstract |
本研究課題は、申請者(丸尾)がこれまで主に研究対象としてきた中国語の方向補語に関する各種用法を相互に関連付けることにより、その体系化を試みるものである。平成23年度においては、方向補語の中でも派生義が見られないがゆえに、その用法が取り立てて問題となることはなかった"回"[戻る]という動詞について、日本語の「戻る」という概念とのずれから生じる認識の相違について分析し、その研究成果を以下の2本の論文としてまとめた。 論文「中国語の動補構造"V回(来/去)"について」では、日本語の「帰る・戻る」という概念とは必ずしも対応しない中国語の動補構造"V回(来/去)"の用法(Vは動詞)を具体例とともに概観しつつ、当該の形で表現される動機づけについて考察した。考察の際にはその移動物に着目し、「同類・等価」、「代替」、「主体+対象の移動」といった観点から"回"の使用によって形成される「往復」という事象について論じた。 もう1本の論文「「他動詞+"回(来/去)"」の形に反映された方向義 ―「取り戻す」「押し返す」意味を中心に ―」では、考察の対象を述語動詞(V)に他動詞が用いられた"V回(来/去)"の形に特化し、中国語で「戻す」イメージで捉えられる動作について、日本語の場合との相違に留意しつつ考察した。そして、補語"回"自体の用法はあくまでも方向義で解釈できるものであり、抽象的な派生義への広がりはみられないものの、「言葉、笑い、涙」などに方向性を見出して、その取り消しや抑制を"V回"の形で比喩的に表現するという特徴を指摘した。 また、口頭発表「方向補語の付与する意味」は、現在取り組んでいる方向補語全般にわたる用法分析を通して得られた成果の一部を、日中対照研究および中国語教育との接点から述べたものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中国語の方向補語に関しては研究者によってその該当する範囲に差がみられるものの、本研究では"上[上がる]、下[下がる]、進[入る]、出[出る]、回[戻る]、過[過ぎる]、起[上がる]"の7つとし、派生義を含めた各種用法について、その相互の関連を念頭に置きつつ考察している。前課題(平成19~22年度基盤研究(C)課題番号19520338)における研究成果を含めて、残る2年間において、"上、下"の用法分析を行うことにより、上述の方向補語の全用法に考察の範囲が及ぶことになる。
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Strategy for Future Research Activity |
方向補語のうちで中核的な位置を占めるがゆえに派生義がとりわけ多くみられる"上[上がる]、下[下がる]"に関する用法分析を行ったうえで、申請者(丸尾)がこれまでに行ってきた関連研究の成果と合わせて「現代中国語における方向補語の研究」として総括する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
言語使用者による「空間認識」を背景とした発話意識というものまで考慮に入れようとする本研究の性格上、語感の問題など直接インフォーマントの協力に負うところが非常に大きいことから、今年度同様、引き続き情報提供者(中国人大学院生)を1名雇用する。
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Research Products
(3 results)