2012 Fiscal Year Research-status Report
現代中国語における方向補語の各種用法に関する横断的研究
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23520503
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
丸尾 誠 名古屋大学, 国際言語文化研究科, 准教授 (10303588)
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Keywords | 中国語 / 方向補語 / 現代中国語文法 / 派生義 |
Research Abstract |
本研究課題は、申請者(丸尾)がこれまで主に研究対象としてきた中国語の方向補語に関する各種用法を相互に関連付けることにより、その体系化を試みるものである。平成24年度においては、方向補語“上”の各種派生義の中で、とくに「開始」を表す用法について考察し、その研究成果を論文としてまとめた。 中国語の方向補語“上”については「付着義」「目的の達成義」がその主な派生義として挙げられる。また、これらとは別に、中国語教育の現場ではあまり取り上げられることはないものの、「開始および継続を表す」という意味を、多くの辞書・専門書の類が独立した項目として挙げている。日本人学習者が「~しはじめる」という日本語を中国語の方向補語を用いて表現するときに通常思いつくのは“起(来)”であり、両者はしばしば同義を表すものとして扱われる。同じく上向きの移動を表すものの、“起”は起点指向であることが開始義を表す動機づけとなっているのに対して、“上”については、多く言及される「付着」「目的の達成」といった意味は着点指向に基づくものであり、これは開始義とは相反するものであるように感じられる。 論文「『開始」を表す中国語の動補構造“V上”について」では、“上”の有するこうした語義特徴をもとに、“V上”の表す開始義について考察し、その結果、方向補語“上”は到達義に基づいて、動作の実現・(そういう状態に入るという)ある局面への移行について言及するものであると結論付けた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中国語の方向補語に関しては研究者によってその該当する範囲に差がみられるものの、本研究では“上[上がる;登る]、下[下りる]、進[入る]、出[出る]、回[戻る]、過[過ぎる]、起[上がる]”の7つとし、派生義を含めた各種用法について、その相互の関連を念頭に置きつつ考察している。前課題(平成19~22年度基盤研究(C)課題番号19520338)における研究成果を含めて、残る1年間において“下”の用法分析を行うことにより、当初より計画していたとおり上述の一連の方向補語の用法に考察の範囲が及ぶことになる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終年度となる平成25年度において、上記(11の欄)の各種方向補語のうち残りの1つである“下”[下りる]に関する用法分析を中心に行うつもりである。これを、申請者(丸尾)がこれまでに行ってきた関連研究の成果と合わせたうえで全体の整合性をはかり、「現代中国語における方向補語の研究」として総括する(最終的には方向補語をテーマとした研究書の刊行を目指す)。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
言語使用者による「空間認識」を背景とした発話意識というものまで考慮に入れようとする本研究の性格上、語感の問題など直接インフォーマントの協力に負うところが非常に大きいといえる。実際に平成24年度の研究遂行の過程におけるインフォーマントチェックの果たす役割は理論を構築するに当たって極めて重要であった。こうした事情に鑑み、今年度同様、引き続き情報提供者(大学院博士後期課程の中国人留学生)を1名雇用する。
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Research Products
(3 results)