2011 Fiscal Year Research-status Report
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23520649
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
富谷 玲子 神奈川大学, 外国語学部, 准教授 (40386818)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内海 由美子 山形大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (20292708)
福永 由佳 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 大学共同利用機関等の部局等, 研究員 (40311146)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 移民言語 / 日本語自然習得 / 移民言語としての日本語 / 初期日本語教育 / 教室内学習者 / アメリカの成人識字教育 / ドイツにおける教室内学習者 / ハンガリーにおける教室内学習者 |
Research Abstract |
移民言語データの収集について検討を重ね、データの質に関する概要を決定した。音声言語を収集するためインタビュー形式を用いるが、データの質的変数をできるだけ減じるために、(1)プロフィール、(2)日本語学習経験、(3)日本語接触範囲および接触頻度、(4)説明課題、(5)意見陳述課題、(6)絵画(短いマンガ)描写課題をタスクとして用い、そこでどのような日本語が使われているかを分析するという調査概要を決定した。 国内での移民言語データ収集対象地を山形県と神奈川県に決定し、その地勢的・経済的・社会的特徴を分析した。山形県では結婚移民女性が定住しコミュニティの一員として活躍するケースもある。一方、神奈川県では住民全体のの転入・転出・県内転居など移動が激しく、外国人や移民にもその傾向がありコミュニティに根づきにくい。なお、国内では、日本語学校や日本語教室に通わず日本語を自然習得した人の日本語データを収集する。 国外での教室内学習者言語(日本語)データ収集対象地を決定した。当初は移民のおもな出身国であるアジアも検討し、調査依頼および現地調査による検討を行ったが、予想以上に日本語との接触が多く、調査協力者を得ることができなかったため断念し、ドイツとハンガリーの日本語学習者を対象とすることとした。両国の場合、日本語の授業外で日本語にほとんど接触する機会のない学生も地域によっては少なくない。調査協力者も得られ、2012年度に当初の目標数のデータを収集する目処がたった。 成人(主として移民)に対する成人基礎教育(含む英語教育)の動向を政策立案の側面と現場の側面の両面から理解するため、アメリカ調査を行った。90年代に連邦教育省成人職業教育局が推進した成人基礎教育の標準化実現に中心的な役割を担った国立識字研究所の廃止後,連邦教育省成人職業教育局の現在の成人基礎教育の政策に関する情報を収集することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、日本語自然習得者の話し言葉データを収集し、それを一定の文字化システムの下で文字化した上で、コーパスとして公開することを目的の一つとしている。申請時には、2011年度中に「移民言語としての日本語」のデータ収集方法を決定したうえで、国内でのデータ収集とその文字化を開始する予定であった。データ収集の具体方法は、ICレコーダーによる録音とビデオ撮影である。 ところが、2011年3月の東日本大震災が起こり、移民自身が被害を受けたり強い精神的ストレスから解放されなかったりするなど、とても調査協力を依頼できる状況ではなかった。一時的に母国に非難したり、国内転居するといったケースも珍しくなかった。こういう状況を鑑み、国内でのデータ収集については2012年度に開始することとした。この点で、当初の予定より遅れていると言わざるを得ない。 一方、データの内容、データ収集方法の検討は十分行うことができた。また、国外でのデータ収集地の検討も丁寧に行い、調査協力者も得ることができた。こうした点で、2012年度には、データを国内・国外並行して収集することができる。2011年度の研究計画で実施できなかった点に関しては、2012年中に補うこととしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
データ収集とその整備と管理に重点を置く。国内では、「移民言語としての日本語」のデータ収集を重点的に行う。日本語学校や日本語教室に通った経験のない移民と接触するには、移民の支援者との連携が必要不可欠である。支援者との関係を維持しつつ、本研究の目的に合致した移民を紹介してもらえるよう、丁寧にデータを集めていくこととする。 国外では、日本人や日本語との接触の乏しい「教室内学習者」のデータ収集を行う。このような日本語学習者と接点を持つキーパーソンを研究協力者とし、緊密な連携をとることができる環境づくりを行う。なお、国外データに関しては、できるだけ短期間でデータ収集を行うこととしたい。 データの文字化システムの開発(以前の研究で用いたものの改善)や、データ管理方法に関しても検討を重ね、データを分析可能な形態に整えることも2012年度の目標である。 これと並行して、アメリカにおける成人識字教育に関する言語政策の研究、ドイツにおける移民統合にかかわる言語政策の研究も行う。その成果から、2013年度には、移民を対象とした「初期日本語教育」の在り方を具体的に検討したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
データ収集に用いる録音・録画機材、ならびに映像編集や音声編集が可能な高機能のコンピュータを購入する。また、その作動環境を整備するためのソフトウェアや周辺機材も合わせて購入する。 国内の「移民言語としての日本語」、国外の「教室内学習者言語(日本語)」のデータ収集のための費用として、データ提供者と調査協力者への謝金を支出する。さらに、データの管理、文字化、コーパス化にかかわる人件費の支出も必要となる。 ドイツ・ハンガリーでのデータ収集に関しては、旅費の支出が必要となる。 また、アメリカでの成人識字教育に関する調査を継続し、ドイツにおける移民統合に関する言語政策の現地調査を行うため、海外旅費も使用する予定である。 このほか、研究の最先端をフォローするために、書籍にかかわる研究費も必要となる。
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