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2012 Fiscal Year Research-status Report

「人のつながり」からみた寺院社会の構造と機能の研究

Research Project

Project/Area Number 23520805
Research InstitutionOchanomizu University

Principal Investigator

安田 次郎  お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 教授 (60126191)

Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) 末柄 豊  東京大学, 史料編さん所, 准教授 (70251478)
前川 祐一郎  東京大学, 史料編さん所, 助教 (00292798)
Keywords寺院 / 興福寺 / 室町幕府 / 尋尊 / 紙背文書 / 大乗院
Research Abstract

二年めにあたる平成24年度は、貴族社会や寺院社会を引き続き広く見渡すことともに、初年度に得た研究のとっかかりを追究することに努めた。代表者の安田は、興福寺の年中行事書、尋尊『大乗院寺社雑事記』や経覚『経覚私要鈔』などの記録類の整理・分析をもとに、中世興福寺の公式芸能ともいえる延年の研究を通じて、従来寺院や僧侶の芸能とみられていたものがじつは京都の貴族社会の芸能と密接に関連していることを解明し、この面での「人のつながり」にスポットをあてることが出来た。また、経覚と醍醐寺三宝院満済の「つながり」を通して、南都と室町幕府との関係について新たな問題を見いだすに至った。
研究分担者の末柄は、精力的に史料調査、収集に努めた。細川氏とその庇護下にあった禅宗寺院との関係を解明するために大阪市崇禅寺などの、真宗と貴族社会あるいは武家社会との関係を調べるために堺市の真宗寺や興正寺などの、そしてさらに本願寺史料研究所などの所蔵史料を調査・収集した。石川県立図書館、金沢市立玉川図書館、勧修寺などの調査にも赴き、今後の研究の基礎となる知見を得た。
もうひとりの研究分担者である前川は、幕府、大名、地方武士などと南都との「人のつながり」を追究するなかから三好氏の立法や検断の問題にぶつかり、三好氏「新加制式」について新知見を得て発表した。
研究代表者と分担者は、前年度にひきつづき折に触れて東大史料編纂所で会合を持ち、情報交換と意見交換を行った。その作業を通じてお互いの視野を広く持ち、寺院社会を貴族社会や武家社会と密接に関連した存在として見る視点を堅持することが可能となっている。
研究代表者、分担者、連携者が共同で行ってきた福智院家文書中の紙背文書の発掘、読解、翻刻はなお継続中であるが、昨年度はこれまでの成果の一部を学界に提供することができた。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

本研究ではまず第一に、大乗院門跡を中心に、南都の僧とその実家、兄弟姉妹らとの関係の解明を課題とした。この点については、応仁の乱前後の尋尊を中心とする兄弟姉妹の関係がほぼ解明でき、発表の準備に取りかかっている。姉妹を中心とする結合のあり方に興味深い関係が見いだせた。また、その実家である九条家における経覚の地位にも注目すべき点が見いだせた。
第二に、「養子」「猶子」として寺院社会に入ることの意味・役割の解明を課題としたが、この点については依然として事例収集・分析の段階にあり、いまだ確たる見通しを得るのは至っていない。ひきつづき検討を加えていく。
第三の課題、室町幕府の将軍や有力者と寺院社会の中の下級の構成員との結びつきの解明であるが、室町幕府の財政のあり方や室町期荘園制の解明にまで問題が拡散しかねない大きなテーマであることが分かってきた。戦線をいたずらに拡大させないための方策を検討中である。
第四の課題は、贈答やものの貸し借りを通じて「越境する」「人のつながり」の解明であるが、まず多様なモノが頻繁に貸し借りされているおもしろさがある。なかには「どうしてこのようなものを権力者、富裕者が持っていないのか」と訝しく思われるものもある。個々の事実の面白さの指摘に終わることなく、どのように社会史論にまとめ上げていくことができるかを検討中である。
総じて事例収集の段階を依然として抜けきってはいないが、研究の収束する方向が少し先に見えてきたように感じられる。

Strategy for Future Research Activity

初年度、昨年度に引き続き、研究分担にもとづいて代表者、分担者、連携者はそれぞれの研究をいっそう推進していく。またそれと平行して相互の成果を共有し、本研究のテーマをトータルとして追究していく。個々の研究成果を論文や図書として逐次発表していくことはもちろんであるが、科研費による研究の最終年度にあたる平成25年度はいっそうの関連づけ、総合を心がけていきたい。また、個々に収集した史料などの学界への提供、共同研究の成果の発表・提供を試みていく。
とくに福智院家文書の調査・研究、その成果の学界への提供を実現していきたい。この仕事は、研究代表者、分担者、連携者の個々の分担研究に基礎的で重要な素材(史料)を共通して提供してくれるものであり、文書所蔵者と密接な連絡を取りながら、そのご理解のもとに出来るだけ早期に全貌の紹介にまで漕ぎ着けたい。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

いままで収集した資料を整理し分析する。京都を中心として各地で文書原本調査を行う。また研究機関や図書館などに所蔵されている資史料をマイクロなどの形でひきつづき収集する。それらのための旅費、物品費、複写費などがおもな支出予定である。資料の整理や研究補助などに従事する院生への謝金も若干必要と考えている。文房具費など細かな雑費もかかると予想している。

  • Research Products

    (7 results)

All 2013 2012

All Journal Article (6 results) (of which Peer Reviewed: 2 results) Book (1 results)

  • [Journal Article] 治部卿入道寿官2013

    • Author(s)
      末柄豊
    • Journal Title

      日本歴史

      Volume: 776 Pages: 107-115

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] 三好氏「新加制式」の検断立法について2013

    • Author(s)
      前川祐一郎
    • Journal Title

      東京大学日本史学研究室紀要

      Volume: 別冊 Pages: 287-299

  • [Journal Article] 慈尊院古聖教目録二種2012

    • Author(s)
      末柄豊
    • Journal Title

      勧修寺論輯

      Volume: 8 Pages: 5-35

  • [Journal Article] 土佐一条家祗候の中御門家の系譜をめぐって2012

    • Author(s)
      末柄豊
    • Journal Title

      ぶい&ぶい

      Volume: 23 Pages: 1-11

  • [Journal Article] 『看聞日記』2012

    • Author(s)
      末柄豊
    • Journal Title

      歴史と地理

      Volume: 238 Pages: 29-34

  • [Journal Article] 「十二絃道の御文書」のゆくえ2012

    • Author(s)
      末柄豊
    • Journal Title

      日本音楽史研究

      Volume: 8 Pages: 1-12

    • Peer Reviewed
  • [Book] 福智院家文書 第三2013

    • Author(s)
      上島享・末柄豊・前川祐一郎・安田次郎
    • Total Pages
      268
    • Publisher
      八木書店

URL: 

Published: 2014-07-24  

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