2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23520860
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
徳永 洋介 富山大学, 人文学部, 教授 (10293276)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 正人 金沢大学, 法学系, 教授 (60237427)
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Keywords | 刑罰制度 / 治安立法 / 盗賊重法 / 盗賊窩主法 / 天聖令 / 明律 / 唐六典 |
Research Abstract |
この研究は宋代に形成され元代に継承された刑事制度を時系列に即して体系的に考察しようとしたもので、およそ下記の結果が得られた。まず北宋時代の刑事政策は、良賤制の崩壊など、国家の編戸支配が大きく様変わりした事情に加え、盗賊問題が深刻化するなかで講じられた。とくに、元々は治安維持の目的で軍隊に編入された大量の非定住民や犯罪者たちがこうした社会不安と密接に関係していたことから、国家は「景迹」や「盗賊重法」などの治安立法をはじめ、保甲法を実施するなどして対応に苦慮した。これらの施策は必ずしも期待どおりの成果を挙げられず、結局は北宋後期に制度化された「刺環」や南宋で普及する「拘鎖」を汎用する方向に移行したが、「刺環」はかつての「景迹」の要素を取りいれながら元制や明律の「警跡」となる。このことは北宋後期に実施された「盗賊重法」についてもあてはまり、同法が最も重視した「窩蔵」(盗賊・盗品の隠匿行為)の取締条項は、南宋になると、地域を限定して適用する法規から全国一律に施行される「海行法」へと発展し、最終的には元代の「盗賊窩主法」を経て明律の「盗賊窩主条」に帰結する。つまり、明律は北宋に始まる各種の刑事制度を単に集約しているというだけでなく、刑法から見た唐宋変革の到達点を示すものに他ならない。 また『唐六典』「尚書刑部」の訳注作業を通して、唐代の刑事制度とその沿革を明らかにするとともに、歴代王朝の法制のあらゆる面に影響を与え続けた本書の歴史的意義についても分析結果を公表した。とりわけ「天聖令」残巻の分析作業を並行して進めた結果、『唐六典』はあくまで唐の玄宗の「開元の治」と密着して書かれた書物であって、必ずしも唐制一般を集約したものではない事実が明らかになった。むろん、唐宋時代の法制を知る手がかりとして、「天聖令」の史料的価値を改めて浮き彫りにできたことも本研究の大きな成果である。
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Research Products
(1 results)