2012 Fiscal Year Research-status Report
帝政ロシアの移住・入植事業と移住農民ー19世紀後半から20世紀初頭
Project/Area Number |
23520895
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
青木 恭子 富山大学, 人文学部, 准教授 (10313579)
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Keywords | 近代史 / 移民史 / ロシア / シベリア |
Research Abstract |
本研究の主目的は、帝政ロシアにおいてヨーロッパロシアからアジアロシア(ウラル以東の地域を総称する地理的概念)への移住・入植が実際にどのように行われていたのか、一次史料に基づいて再現することにある。そこで、本年度も昨年度と同様に、ロシア国立歴史文書館とロシア国立図書館にて3週間の資料収集を行った。 1880年代以降、アジアロシアへの移住および入植・開発の推進は、帝政ロシア政府にとって重要な国家的事業となっていった。しかしながら、もう一方の当事者である移住農民は、政府の移住支援策は利用しつつも、必ずしもその思惑通りには行動しなかった。帝政期からソヴィエト期を経て現在に至るまで、ロシア国内外で膨大な数の移住研究が公刊されているのにもかかわらず、主体者としての移住農民の行動論理については未だ十分に解明されているとは言いがたい。移住農民自身が書き残した史料がほとんど存在しないに等しい状況の中で、その意思や論理を明らかにするのは簡単なことではない。本研究では、主として二つの方向からアプローチを試みている。一つは、統計データから実際の移住の動きを明らかにすることで、移住者の行動論理を解明する試みである。もう一つの方法は、文書館所蔵の史料から、政府の移住政策の変遷を詳細に再検討することである。政府の側でも、思惑通りには進まない現実に直面する中で、問題点をあぶり出して議論し、常にその方針を手直しし続けている。どのタイミングでどのような通達や法令を出してきたか、またそれらの通達や法令の成果についてどのような自己評価をしているのか、といったことを丹念に跡づけ、移住・入植事業の実態を明らかにすることを通じて、そこに映し出される移住農民の実像に迫ろうとしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究資料収集はおおむね順調に進んでおり、今後も継続して行っていく。統計データの収集・分析に関しては、当初の予定を上回るペースで順調に進んでいるので、今後は、移住政策の再検討の方に重点を置いて、資料収集およびその分析を進めていくことになる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでと同様に、研究資料の収集およびその分析を継続して行う。ロシア連邦サンクトペテルブルク市での資料収集が主たる活動となり、具体的には、ロシア国立歴史文書館で未公刊の行政文書等を閲覧し、ロシア国立図書館で刊行資料を収集する。今後は、資料収集と並行してその分析にも重点的に取り組み、論文としてまとめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
未公刊文書の閲覧・収集が本研究の遂行には絶対的に不可欠であるため、次年度もこれまでと同様、9月に3週間程度の外国出張を計画している。その費用として、過去2年間の実績から55万円を見込んでいる。残りは図書の購入費に充てるものとする。
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