2011 Fiscal Year Research-status Report
ミノア・ミュケナイ期~前古典期における国家と宗教の諸相と変容に関する研究
Project/Area Number |
23520901
|
Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
山川 廣司 愛媛大学, 法文学部, 教授 (30113682)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古山 夕城 明治大学, 文学部, 准教授 (10339567)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | ミノア期 / ミュケナイ期 / 初期鉄器時代 / 前古典期 / 宗教 / 民衆信仰 / 英雄崇拝 |
Research Abstract |
研究代表者は、全体の統括とミノア・ミュケナイ期、研究分担者は初期鉄器時代・前古典期を中心に研究課題の考察を行ったが、まず初年度の取り組みについて5月、8月、11月の計3回の研究打ち合わせの場を設定し、その都度情報の共有と進捗状況を確認した。その他メールによる連絡を行った。平成23年度はクレタ島を中心にミノア期から前古典期までの宗教および民間信仰の諸相と変遷について考古学研究の成果と碑文研究の現状を踏まえて考察を行ったが、前半のミノア期に関して集中的に考察できた。 また本年度の実施計画に基づき、研究代表者・研究分担者2名は8月~9月に約2週間にわたってクレタ島を中心に、ギリシア本土でもミノア期から前古典期にかけての宗教遺跡・遺物の現地調査を実施した。特に交通の便の悪いクレタ島では、8月27~30日の4日間レンタカーを借り受け、(a)クノッソスやフェストスなどの宮殿やカヴーシ、ブロンダ、カストロ、ミルトス、ヴァシリキ、フルニ、ドレーロス、アムニッソスなどの遺跡調査の他、イラクリオン考古学博物館、アヨス・ニコラオス考古学博物館、シティア考古学博物館、イエラペトラ博物館等で調査を行い、4000枚以上の資料をデジタルカメラに収めることができた。(b)研究代表者はアテネを中心にアクロポリス,アゴラ、ケラメイコス遺跡、近郊のエレウシス遺跡およびアテネ国立考古学博物館、新アクロポリス博物館、アゴラ博物館、ケラメイコス博物館、エレウシス博物館、ピレウス考古学博物館などで宗教関係の遺物の確認とデジタルカメラによる約4000枚以上の資料収集を行い、帰国後資料データの整理・分類を行った。研究分担者はアテネ国立考古学博物館その他での資料収集に加えて、在アテネ英国研究所と米国古典研究所において初期鉄器時代についての発掘報告書・前古典期に関する碑文の研究情報を入手し、古代祭祀関連文献を閲覧・複写した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者は、ミノア・ミュケナイ期における国家と宗教の諸相と変容の解明を課題とし、本年度はクレタ島を中心に、ミノア期からミュケナイ期の豊饒信仰(地毋神信仰)などの民衆信仰がどのようにミノア王権に取り込まれていくかを考察した。また海外調査では、クレタ島に展開した民衆信仰やミノア宗教に関連する宗教遺跡の確認と博物館に所蔵されている出土遺物のデジタルカメラによる資料収集を行い、資料整理のために購入したパソコンにデータ入力し、資料の整理・分類を行った。また入手したミノア宗教関係図書は順次内容の把握と整理を行っているが、8000枚余の海外調査のデータ資料の整理・分類は大方目処がついたが、データ処理に予想以上の時間がかかり、当初予定していた王権との関わりについての文献による課題設定の考察は必ずしも十分ではなかったという点で本年度の達成度は80%ほどと評価している。 研究分担者は、ミノア・ミュケナイ期と初期鉄器時代・前古典期の半神崇拝・墓所祭祀との関連性や比較分析の研究に関し、2011年度はクレタ島における現地踏査とそこでの信仰の変化・国家祭祀の形成に焦点を絞って研究したため、研究分担者の担当課題としては80%ほどの達成度である。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、研究代表者は(1)主としてクレタ島に進出し、ミノア王権に取って代わった印欧語系のギリシア人王権のミノア宗教受容について構想し、また線文字B文書史料及び考古学資料を活用して、ミュケナイ期末期における宗教と王権の関係について考察する。(2)研究分担者と合同で、8月にギリシア本土を中心にギリシア現地調査を実施し、ミノア期から前古典期の宗教遺跡の確認と出土遺物のデータ収集を行う。(3)昨年度の研究成果としてミノア期の王権による宗教の受容について10月に開催される四国地域史研究大会で報告を行う。 研究分担者は、ギリシア本土とくにポリス成立地域におけるミュケナイ期から初期鉄器期時代までの信仰と宗教の歴史的展開について、とりわけ国際聖所と国家宗教の関わりという観点からアプローチする。アッティカ・ペロポネソス・中部ギリシア地域の国際聖所と国家宗教の遺跡をできる限り現地調査し、前年度のクレタ島の歴状況と比較研究するためのデータの整理をすすめ、さらに研究の総合へ向けて、分析方法の検討に入る予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、現地調査での遺跡確認とデータ資料収集に重点を置き、研究費の多くをギリシアでの宗教関係の現地調査に利用する。また前年度の未執行の次年度使用額187,244円は前年発注済で未着の書籍3冊、前年度のギリシアの経済危機情勢の中で実施できなかった分の旅費とレンタカー代などであるが、発注済みの未着図書、平成24年度発注の宗教関係図書、海外調査旅費として使用する予定である。 具体的にはギリシア本土ペロポネソス半島を中心に現地調査を行う。ミュケナイ時代およびそれ以降の聖域として宗教上重要なコリント、イストミア、ミュケナイ、ネメア、エピダウロス、スパルタ等の宗教遺跡での調査、ミュケナイ王宮の祭祀センター、ピュロス王宮のメガロン遺構及びホーラ博物館、エウボイア島のレフカンディ英雄廟、古代コリント遺跡のアルテミス聖所およびペラホラ岬のヘラ神域、イストミア遺跡のポセイドン神域、エピダウロス遺跡のアポローン聖所、ネメア遺跡のゼウス神域、さらに古代スパルタのメネラオス半神廟とアミュクライ遺跡などでの現地調査、また前年に引き続きアテネ国立考古学博物館、在アテネ英国研究所、米国古典学研究所等での資料調査を行う。
|
Research Products
(1 results)